第20話 ネネ
「ライラ知ってる?今日から新しい先生がくるんだって!」
「あらネネ、そうなの」
「あー、ライラあまり興味なさそう〜。魔道具を教える先生なんだって。みんな魔道具なんてって馬鹿にしてるけど、私は楽しみだなー」
「魔道具……」
魔道具という言葉に、ライラが反応した事を少女ネネは目ざとく反応する。
「私は、あまり魔道具の事知らないけど凄く便利なんだよ!お母さんが前料理で使ってた時に教えてもらったの」
「それでねそれでね」
「ネネ」
ライラはネネの唇に指を当てると
「なに?ライラ」
「鐘が鳴っているわ。その話はまた後で聞くわね」
ライラがそう指摘すると、ネネは皆席についてることに気づく。
「あわわわ、ごめんね。ありがとう!」
あー、もう私のバカ。ライラに言われるまできづかないなんて!
慌ててネネは席に座るとちょうど同じタイミングで扉が開いた。
あれは担任のサイモン先生と、もう一人、誰だろう?
「あー、席についたか。今日は新しい臨時講師をしていただく先生に来ていただいた。アレス先生だ」
「魔道具の授業を担当になったアレスです。よろしく」
新任の先生は緊張しているのか右手右足が両方同時に動いてる。ふふふ、面白い。
「ライラあの先生凄い緊張してるね」
ネネはにっししと笑いながらライラに話しかけた。
「そうね。大丈夫かしら」
「アレス先生は魔道具を専門にしている。我々のような魔法使いには必要のないものだが、知らない知識を得るのもいい経験になると思う。ちゃんと眠らず聞くように」
サイモンの眠るという言葉にクラスの皆んなはクスクスと笑った。
「それじゃあ、連絡は終わりだ。次、別の教室で早速アレス先生の魔道具の授業を始めるからな。遅れないように」
そう言うとドアをガラッと開け、サイモン先生とアレス先生は出ていった。
「ライラどうだった?なんか変わった先生だったね」
「うん、そうね。ふふふ面白そうな先生だったわ」
「え!ライラああいう人がタイプなの?」
「そういう訳ではないわ。ただ気になっただけ」
「そっかー」
むむ、私のライラアンテナがびびっと言っている。ライラはあの新任の先生に興味があるのかも。
しばらくネネはライラと談笑した後、魔道具の授業がおこなわれる教室に移動した。
教室についてみると生徒はまばらだ。多分サボりだろう。この授業は単位のない講演みたいなもの。こない生徒も多い。
「どんな授業になるんだろうね」
「ふふふ、そうね」
ネネはライラが笑う顔を見る。彼女の感情を動かす先程、あったばかりの先生にネネは少しばかりの嫉妬と興味を覚えた。
しばらくすると、例の先生が入ってきた。
ネネはアレス先生を観察する。見るからに普通の教師だ。ライラが興味を持つとは思えない。
がるると親の仇のようにネネはアレスを睨んでいるとそれに気づいたのかアレス先生は少し苦笑いをして顔をそらし教壇にたった。
勝った。
ネネはそれを見て勝ち誇った。
「あー、先程挨拶したように今日から数回、魔道具の講師を任されたアレスだ。よろしく頼む」
よく見ると、まあまあな顔ね。
「皆さん魔道具というものは知っていますか?」
「魔法が使えない人の為に使えるようにするための道具でしょー」
「そう半分正解、半分はずれ。基本的には魔道具を使うには魔力が必要で魔法を使える者の補助道具として使うことが多い。けど本来の魔道具は魔法を使えないものでも使うことはできるんだ」
そういうとアレス先生は四角い箱を二つ取り出した。
「この左の箱には陽のスペルが右の箱に隠のスペルが。この陽と隠を近づけると」
バジっと鋭い音が鳴った。
「電力を発生させる。こういった作用を応用すれば魔法を使えないものでも魔法を使うことができるというわけだ」
へー
「でも先生それが私たちのなんの役にたつんですか?私たちは魔法を使えるので必要ないよね?」
「そうだね。確かに魔法が使える君達にはあまり、必要ではないのかもしれない」
ガッカリしたような声がする。
「でも魔法が使えない人たちが、君達と同じように修行もいらず、努力をせずに簡単に魔法が使えるようになったら?」
質問した生徒は黙ってしまった。
「魔道具は凄く可能性がある分野なんだ。それをこの講義を通して伝えることができたら嬉しいかな。では次は実戦へ……」
ネネは横を見る。ライラは熱心にアレス先生の授業を聞いていた。
私にはそこまで面白い授業だとは思えないけど……。でもまあライラが興味あるなら私も聞いてみようかな。
ネネは目を擦りながら必死に授業が終わるのを耐えていたが、結局途中で寝てしまった。
「これで授業を終わります」
最初の授業が終わった。まあ初めての割には上手くいったのではないだろうか。
シャルやレイたちは別の場所で授業を受けてるみたいだからしばらく暇だ。今日の授業はこれで終わりだし、どうしようか。
アレスはどう時間をつぶそうか考えていると後ろから気配を感じた。
さっと振り返る。
誰かが物陰に隠れた。
アレスは早歩きで歩き出すと後ろから同じ速度でついて来る気配を感じた。アレスはとっさに曲がり角を曲がって待ち伏せすると、後ろからついて来ていた人物が現れた。
「わわわ!!」
女子学生だ。先程教室で授業をしていた際、自分の事を睨んできた女子生徒だとわかった。
「何か、ようかな?」
「なななんで!?」
アレスは窓を指差す。
「うつってた」
「あぅ……私のポンコツ」
「で、どうして俺を備考していたんだい?」
「……ライラが」
「ライラ?」
アレスは今日授業をした生徒にそんな名前があったなと思い出す。
「ライラが先生を興味もってたから、気になって」
むむむとネネが唸り出した。
「でも、わかんない。なんでだろう。特に特徴もないのに」
「特徴なくて悪かったね!」
「まあいいや!先生のこと監視してるから!」
そう言うとネネは走り出した。
「一体なんなんだ……」
女子学生謎の行動に始終困惑するアレスだった。
ネネはアレス先生に宣戦布告してから教室に戻ってきた。
ライラに声をかけようと思っていたが、ライラが席にいないことに気づく。
あれライラいない。
ネネはライラを探しに教室を出ると、別の教室でライラとサイモン先生が話しているのに気づいた。
……あれはサイモン先生?とライラ!なに話してるんだろう。
こっそり忍び歩きで近寄るとネネは柱の隙間からライラたちを覗き込んだ。
柱から見るとサイモン先生がライラに詰め寄っているように見える。
「……」
「……」
「わ……た」
「……はい」
サイモン先生がライラに肩を置く。腕には花の入れ墨が見えた。
普通とは違うそのサイモンの様子にネネは慌てて柱から飛び出すとライラに駆け寄った。
「ライラ!何してるの?」
サイモンはネネに気づくと驚いたように体を震わせこちらを向く。
「……ネネくんか。……ライラくと少し授業について話してただけだ」
「……」
「……じゃあ私はこれで」
そう言うとサイモン先生は離れていった。
「何あれ……?大丈夫ライラ?何かサイモン先生にされなかった?」
「大丈夫だよ。次の授業行きましょうかネネ」
「うん……」
ネネは何かもやっとする気持ちがあったがライラに手を握られると次の授業を受ける為に歩き出した。
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