第19話 魔法学園

「おほん、ワシがこの魔法学園の学長をしておるアーロンだ」



 アーロンは立派な髭を手でなでた。



「あ!銅像の人だ!」



「これレイ静かにせんか」



「だって……」



 しょぼくれるレイ。



「ほっほほ、いかにもワシがその銅像と同じ人物だよ」



 わーとキラキラした目を送るレイ。



「申し遅れましたアレスと申します。このたびは学園に入らさせていただきありがとうございます」



 アレスは紹介状をアーロンに渡す。



「ふむ、なるほど。原初の石か面白い。あ、いやすまんアレス殿は気の毒だと思うが」



「いえ」



「確かに、ここ魔法学園では原初の石を研究しておる。アレス殿は原初の石は何なのかしっておるか?」



「ガロン様から、伺っております」



「そうか。原初の石は未知の力。今だに謎が多い物質だ。神の遺物だというものもいる。これがどうやってできて、どこから現れたのかもわからない。ただ分かっているのは、古くから存在していたこと。それだけだ。見してもらうことはできるかな?」



 アレスは懐から赤い石取り出し、アーロンの近くに置いた。



「ほう。凄い。この石からは莫大な魔力の渦を感じる。力の渦だ。古来この力巡って、争った理由も今ならわかる」



 アーロンは血走った目で赤い石を見つめた。アーロンは目をそらす。



「出してくれと言った手前すまんが、その石をしまってくれぬか。老体には少々はしんどいのでな」



「わかりました」



 アレスは赤い石をしまった。



「ガロンの紹介状を読むと、この学園に来たのは、契約解除をするためと書いてあるが?」



「はい、私にはこの力は必要ありません」



「そうか、もったないが、本人がのぞむなら仕方あるまい。ルカ先生、ロイくんを呼んできてくれ」



「わかりましたー」



「ロイとは?」



「原初の石を研究している研究者だ。この国で原初の石について詳しいものは彼しかいないだろう」



 しばらくするとドゴドゴという足音ともに学長室の扉がバギッと嫌な音をたてながら開く。



「原初の石!!!!!!!」



 髪の毛が寝癖で盛大にはねている。袖の長い白い白衣をずるずると引きずり、分厚い黒いクマが目の下にできていた。



「キミが!キミが!石の契約者!!!!」



「は、はいそうです」



「なんじゃ、凄い人物が現れたのう」



「わわわんだふる!!!!!最高だ!!!石を石をおおお!見せてくれて!!!」



 アレスは先程しまった石を取り出した。



「おおおおっっぉおおおあああ本物だああああああ。ささ触っていいかな?舐めても?」



「さ、触ってもいいですが、舐めるのはやめてください!!」



「さっさささささ触るよ」



 ロイと言われた人物は、まるで壊れものを触るかのように、ゆっくりと丁寧に赤い石に触れた。



「ふおおおおおおおおおおおおきたあああああああああああああああああああああああ」



 ロイは叫び声をあげると白目をむきながらビクンビクンと痙攣させ床にぶっ倒れた。



「ロイくん!ろおおおおおいいいいいいいい!」



 学長が声を思わず声をあげる。



「いい、いたいなんじゃ!」



「アレスあの人怖い」



 シャルは急に卒倒したロイにたじろく。レイは謎の未開生物にすっかり怖がってアレスの後ろに隠れてしまった。



「本当に大丈夫なのかな……」



 アレスはこのカオスな空間とこの人物に本当に石を託して良いのか不安になった。





「すまん。ちょっと興奮してしまった」



「ちょっとどころじゃなかったような……」



 ロイはおほんと咳払いする。



「私が原初の石を研究しているロイである。よろしくアレスくん」



 アレスはロイと手を握った。



「契約解除がしたいという事なんだが……恐らく可能であろう」



「本当ですか!」



「過去に解除にいたった例はある。解除方法は二つある。一つは所有者が死ぬ事、むろんそれはできない。もう一つは契約者が仮死状態になり、契約者が再起不能と原初の石が判断すると解除される」



「この石が判断するんですか?」



「原初の石には意思がある。僕には感情すらもあると思っているがね。今回はアレスくんと原初の石の仮契約という弱いつながりを利用し、解除する。やる事は簡単だ。特殊な擬似空間を作り出して、この石と同じ魔力の波動をぶつける。波動が相殺しあうことで石から発する信号は遮断され、石が契約者を認識できなくなり原初の石が契約者を死んだと誤認させ解除されるのだ」



「?」



「簡単に言うと石と契約者のつながりを一時的にたって、石に契約者は死んだと誤認させる」



「なるほど……」



「なるほどのう」



 アレスは活路を見出し顔を輝かせる。



 そこで今まで黙っていた学長が話し出した。



「その契約解除の装置というのはどれっくらいかかるんだい?」



「そうですね。まず石から発する魔力波を調べます。それからその装置作りと言うわけですが、幸いにして波動を発生させる装置自体は学園にあります。ので一、ニヶ月もすれば可能でしょう」



「そんな早く」



「ふむ、意外に、はやくできるんだな」



 学長はアレスに向き直る。



「と言う事でロイくんに言っておったように解除は可能。しかし。数ヶ月はかかるみたいだね。しばらくはこの施設に出入りすることになるだろう客員証を後日発行しておこう」



「何か何まで、ありがとうございます!」



 アレスは礼をした。



「よいよい。ふむ。そういえばガロンの紹介状に書いてあったのだが確かアレスくん魔道具に対して詳しいらしいじゃないか」



「そうじゃ、アレスは魔道具のことなんでも知ってるんじゃぞ!」



 何故かシャルが自分のことのように偉そうに胸をはる。



「まあ人並みですが」



「ちょうど魔道具の講師がいなくての。学園の生徒たちは魔法ばかり重要視して魔道具のことを軽視しておるのだ。解除をする期間だけでいい教えてくれぬか?むろん給料もだすぞ」



 アレスは悩む。確かに魅力的な相談だったが、学園の優秀な生徒たちを自分が教えられるとは思えなかった。



「いえ「無論じゃ!アレスは優秀だからな!妾にもいっぱい教えてもらったのじゃ!」…おい」



「そうか!それでは手続きしておくぞい」



「ずるい!レイも学校行きたい!」



「では、こうしようレイくんたちも解除期間中は留学生として入るのはどうだい?」



「妾もできるのか?」



「無論二人とも手続きしよう」



 アレスを置いてきぼりにしてどんどん話が進んでいく。やったーと二人手を合わせるのを見て。まあ仕方ないかと諦めるアレスだった。

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