第7話 ドワーフの王

「陛下!」



 黄金の鎧を着て、背丈ほどの巨大な戦斧を背中にくくりつけた益荒男とそれとは対照的なモノクルをはめた、いかにも文官然とした両極端の二人が息を切らせながら走ってきた。



「無礼な!止まりなさい!」



 鷲のような男が静止するよう鋭い視線を二人に向けた。



「なんだ、騒がしい。おちつかないか」



 陛下と言われた男は玉座からゆっくりと体をおこす。



 大きなドーム型をした玉座は豪華絢爛、これでもかと言うほどの装飾と金を使い、彼の権力の強大さと偉大さを誇示していた。



 黄金の男は片膝をつく、モノクルをつけた男も王の前までくる直前、一つ息を整えると片膝をついた。



「進言お許しいただけますでしょうか」



「なっ!」



 鷲のような男が何か言おうとした瞬間、王がそれを手を挙げて制す。



「よい許す」



 その言葉を聞いて、表を上げたモノクルの男は先ほどとはうって変わった鋭い目つきをして王に進言した。



「深紅の石が、見つかりました!」



 深紅の石と聞いた瞬間、王の顔色が変わる。



「なに!それは、誠か」



「はい、真紅の石と魔力の波長が一致しております。恐らくは確実かと」



「どこで見つけたのだ。あれは叔父上が魔界大戦の時に王都から持ち出し失われたはずだぞ」



 次の言葉はモノクルの男の隣にいた黄金の男が言葉をつないだ。



「それが奇術師たちによると、アルディア皇国のヴェツィという街にあるそうです」



「アルディアとな。ふむ確か人と龍の国だったか」



「人と龍が混じり合った、珍しい国です。我が国とは協商同盟中でもあります」



「何故そのような国に……」



「わかりません。石には封印が施されていましたが、何者かが封印を解いたようです」



「分からぬ事は論じていて仕方あるまい。第一優先順位はそれが今どこの誰がもっているのか、それをどうやって奪うかだ。何か考えはあるか?」



 モノクルの男は手を顎にあてると思案する。深く考える時のこの男の癖だった。



 黄金の男が声を上げる。



「所詮トカゲとのっぽの国、我が精鋭部隊で蹂躙して、石を奪えばいいだろう」



「アルディア皇国と戦端を開けば、都市を攻略し、石を奪う事は恐らく可能でしょう。しかし、皇国は強国。その場合こちらの被害も甚大なものになるのは確実です」



「それでは遠征という名目で行くのはどうだ、その為の協商同盟だろ」



「協商とはいえ口約束のようなもの、条約にそれほどの効力があるとは思えません。それに、我が国は今エルフと戦争中。下手に兵を動して隣国を刺激したくありません」



 次から次へと丸め込まれて、黄金の男はモノクルの男を強く睨む。



 それを見た王は仲裁に入る。



「確かに兵を送ることは得策ではないが、裏で潜入させるというのはどうだ?」



「そうですね。……協商同盟の関連性で技術協定を結ぶということで潜入するというのはどうでしょうか。あちらもこちらの鉄の製法や加工技術について知りたがっていたようです。皇国との研究協定結べば、こちらの兵士も潜入しやすくなります」



「どうだノーディル」



 ノーディルと言われた鷲のような男は、深く息をする。



「その方向性でよろしいかと。ただ派遣する人員はこちらで決めても構わないかな?」



 モノクルの男はチラッと黄金の男を見て答えた。



「はい、それでよろしいかと」



「……決まったな。何としても深紅の石を持ち帰るのだ!」

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