すべてのはじまり ~Lost prologue~


 ……かつて、敗戦国があった。

 周りの言いなりになるしかない、奴隷だけの国と呼ばれている地があった。


 ヨーロッパ・エンデルヴェスタ。

 国境もクソもない申し訳程度の区切り線。かつて世界大戦に惨敗した小さな国は、周りの国にすべての資材を奪われ、金も食料ももぎ取られる。


 国全体がダウンタウン。荒廃している。

 国旗どころか国の存在そのものすらも本に載らなかった。


 『この国に生まれた者は、この国に生まれたことを後悔せよ。』

 エンデルヴェスタ人は数十年近く地獄を味わい続けたとされている。





 ___しかし、突如、この国に変革が訪れたのです。


「全ての民に秩序を」

「全ての民に夢を」


 エンデルヴェスタの民の前に……神を名乗る二人の“少年少女”が現れた。


「今こそ新世界誕生の時」

「醜い時代は終わり、幸せの時が訪れる」


 その名は【エリーベルダ】と【サルガッソ】。


「「さぁ、我々の手を取るのだ」」


 二人は突然現れたかと思うと、エンデルヴェスタを囲う全ての国家に宣戦布告を宣言したのです。これは前代未聞の大事件であった。


 最初こそトチ狂った若者たちの暴走。悪ふざけと考えていた。








 ___しかし、その少年少女は“一夜にして国家を滅ぼし、我が物とした”。

 

 その姿は救世の賢者と言うべきか、或いは侵略の悪魔と言うべきか。

 この世のものとは思えない力。異に属する力が、見下ろす者たち全てを地獄へ引きずり落としたのである。




 この世界。時間という絶対の存在を“支配する力”。


 国が消滅する。国が降伏する。国が涙を流す。




 ___二人は宣告した。『すべての人間に、平等な幸せを。』と。



 瞬く間に二人は国を滅ぼしては支配し、次第にエンデルヴェスタを“一つの大きな国家”へと変えていった。


 そこからは……数年もたたぬうちに幕を閉じた。

 ヨーロッパ全域は“エンデルヴェスタ”の一部と成り果てたのである。


「我々こそが新世界の神」

「我々と共に明日を生きよう」


 エリーベルダとサルガッソは国王と女王として、国を管理した。

 新たなる時代の幕開け。全人類の幸福を約束した者たちの、新たなる秩序が始まろうとしていたのです。






 ___しかし、



『全ては我が野望の為に』



 ___新たなる秩序は平然と崩れ去る。



『この世界は私の手中こそ相応しいのだ……!!』







 西暦190X年。

 新たな時代の始まり。新たなるゼロの時代。


 ヨーロッパ・エンデルヴェスタは___


 エリーベルダ率いる【純潔領域】。サルガッソ率いる【サルガッソ・フロント】。


 新時代のアダムとイヴと呼ばれた二人の神の争い。

 男と女は完全なる種。完全なる二つの種として戦い始める。




 新時代の始まりから数十年後。

人類の歴史は……混沌と醜悪に染まろうとしていた……!!







 【フライ=ハイトの叶界 序章 完】

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