彼という彼女

バブみ道日丿宮組

お題:日本式の冒険 制限時間:15分

彼という彼女

 冒険今すぐしたいと思ったのはきっと僕だけじゃない。

 同じ状態で、同じ行動を、求めなかったものを手にしたら、考えることは一つ。

「なんでかなぁ」

 部屋のカーテンを少しあけると、玄関前に一人の女子生徒らしき人物が立っていた。

「……裏道は」

 ーー知ってるだろうしな。正面突破以外の選択肢は期待できそうにない。

 そもそもだ。そもそも僕は断ったから、堂々としてていいはず。あんなクラスメイトだらけのクラスルームで赤裸々な告白をされたのに関わらず、嫌な表情せず彼女である彼は楽しそうにこちらに視線をーー、

「……っ!?」

 向けてきたので思わず隠れる。

 女子生徒らしき人物である彼は女装してる。違和感ないそのポテンシャルは女子生徒がアドバイスを求めるもの。そんな彼が昨日僕に告白してきた。

『大好き。付き合ってくれる?』

 赤面した僕は「嫌だっ!」と応えてダッシュで学校を後にしたものだ。

 その後SNSツールで『みんながいなかったらいいって言ってくれたよね♪』という自信が落ちもしないものをもらった。当然既読がつくから、彼は自身が思ってる僕の良さを長々と書き込んでく。見るのも恥ずかしい僕はそのままスマホをスタンドに置き充填を開始させ就寝した。

 朝再確認すると、『迎えに行く』というメッセージと時間が書いてあった。

「……どうしよう」

 とりあえず自分も制服に着替えようと彼と同じ女学生の制服を手に取る。

「……ん」

 姿見に写る自分の姿はとても彼に釣り合うようなデザインじゃない。よくて平凡にようやくなれるくらい。

「……ちゃん、きてるわよ。はやく降りてきなさい」

 チャイムを鳴らす時間は、スマホに記載してあったどおりのタイミング。普段であれば、急いで食べて余計な時間を与えたくなかった。

 けれども、今日は違う。

「大丈夫? 遅刻するわよ」

「いつもより40分もはやいからーー」

「じゃぁ、彼家で待ってもらおうかしら?」

 パンがなくなったお皿をテーブルに叩きつけ、

「あっ、いや彼は外で待つって連絡があったから」

 割れてないことに安堵する。

 これ以上自分に負担をかけたくない。

 母親にすら囲ってくればもはや逃げ出す場所はない。


 だから、冒険にでたい。


 山に登るとか、釣れない海で魚釣りをしたりと、自分だけの世界を堪能したかった。

 まっ時間というのは簡単にすぎるもので、私は4分後彼のいる玄関前に足を向けたのだった。

 

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彼という彼女 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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