46個

バブみ道日丿宮組

お題:安い平和 制限時間:15分

46個

「結婚しよ」

 ほぼ棒読みで私はそうぼやく。

「なんだよ結婚って、生きるのやめるのか?」

 ベッドルームの端にある椅子に座った彼が眉根を寄せる。

「そうじゃないよ。あなたと結婚すれば少なくとも王族の血は残せる。もちろん大臣たちが拒否することはわかってる」

 けれど、

「私は私以外が選んだ人じゃないとこの命を使いたくない。ましてや肌を晒したくもない」

「そうか。けどな……俺が殺すことになるんだぞ。そこまで考えたか?」

「うん、そうだよ」

 王族の血を増やす方法。それはいわゆる性行為を行い子どもを作ること。そこに他の人との違いはない。あるのは母の遺伝子のほとんどを産まれるときに吸収してしまうため、母の肉体は弱体し間もなく死を必ず迎えるということだ。

「あなたが私を殺すというのは間違ってる。新しい命のために私は旅立つの」

 私が母から知識や経験、遺伝子情報を受け継いだように。

「大丈夫。赤ん坊もあなたを親として愛してくれる」

「はぁ……もう決めたって顔だな」

 やれやれと彼は立ち上がり私の座ってるベッドへと移動する。

「混沌とした街の空気には新しい力が必要だと思うの」

「だからって、まだ二十歳過ぎだぞ……もう少し生きたいって思わないのかよ」

 できればそうしたい。それは願いにも近い。

「平和になるなら早いほうがいい。手遅れになる前に空気を変えなきゃいけない」

 だから、

「私をたくさん愛して」

 私は彼に向けて両手を広げる。

「ただ忘れてるかもしれないけど、赤ちゃんは必ず一回で産まれるってわけじゃないんだよ」

「そりゃそうだろうな。そうだったらかなりの人工がこの街にもあるはずだ」

 彼は私の身体を抱きしめるとそのままゆっくりとベッドへと押し倒した。

「鍵は……いつも閉めてるから大丈夫だとして、カメラとかは……ないか」

 私の衣服の上から触りながら、彼は周囲を警戒する。

「さすがにそれだったら、大臣であろうと首にするよ」

 確かにと笑う彼はより一層私を愛し始めた。

 これが私と彼の最後になるかもしれないーー愛の行進曲が部屋にこだました。

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46個 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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