第三話 秘境のリゾートで山菜採取
「――というわけで、説明は終わりだ。これから
彼を見た老人は、恐ろしいモノと出くわしたように顔を引き
いまの
管理人さんの
仕事の内容は、主に
雑務といっても、接客から
やるべきことを頭にたたき込んでいると、あっという間に業務開始の時間となってしまった。
現在は、ちょうど
宿泊客たちが、
「どう思いますか、ニッカポッカ」
忙しくオーダーを取るかたわら、藍奈が耳打ちをしてくる。
どうもこうもない。
「普通すぎるね」
そう、普通だ。
店内は
客たちは中年から
山奥の
そう考えれば、なにもおかしなところはない光景だが……
しかし、これは心霊バイト。
異常が無いのは、異常である。
神経をとがらせれば、違和感は
たとえば、食堂のあちこちに飾られている写真。
その多くが、管理人さんと小さな子どもが写ったものばかりということ、ぐらいだろう。
どれも同じ子どもである。
「なんか
「……どちらにせよ、しっかり働くことです」
昼食時が忙しさのピークかとも考えていたが、どうやらそういうわけでもない。
食器や食べかすを片付け――
「昼からは、料理の材料を調達してきてほしいんだよねぇ」
材料? と、
彼は外を指さし、こう告げた。
「雄大な自然は、なによりの
§§
「なにが『雄大な自然は、なによりの食料庫だろう?』ですか! いくら簡単な食料採取とはいえ、初回ぐらいは地理に明るいものをつけるべきでしょう!」
表情は変えないまま、藍奈がキレ散らかしている。
しかたがないことだと思う。
ただでさえ肉体労働が得意ではないらしい彼女はいま、過酷な山中でフィールドワークを強制されていた。
簡単に言えば、案内もなく
「第一、冬に山菜とかあるのですか。いや、ありませんね!」
「あるよ? 結構、食べられるもの、ある」
「はぁ?」
心底嫌そうな声を出し、こちらを見てくる藍奈には申し訳ないが、そこかしこに
「〝青い〟のは食べられる」
「食べ物を色で判別……姉上もよくやっていましたね……」
お姉さんが?
深く話聞こうとすると、藍奈は面倒くさそうに手を振って。
「いいから、
と、話題を切り上げるように言った。
あたしは頷く。
「例えば……これはヤマユリ」
「ユリが食べられるのですか。ああ、正月の」
「そうそう、ユリの根っこは大体ユリネだから、食べられる」
それで、こっちはノビル。
ネギとかニラとか、あの辺の感じだ。根も
「あとは……」
「ニッカポッカ。すこし、黙って」
口の前で指を立てる藍奈。
喋れと言ったり黙れと言ったり、この巫女は忙しい。
「聞こえませんか?」
「なにが」
「川のせせらぎ」
言われるがままに、耳を
蝉たちの声、
「……!」
「行ってみましょう」
しばらく行くと、急に視界が開けた。
そこには――
「これは、驚きましたね」
藍奈が、戸惑いを隠せないといった様子で、
「〝
両手を広げたぐらいの
山奥へと向かって、ひっそりと伸びていた――
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