第5話 教会の灯り

行くべきところはカンティアーノ家のみなのか

どこにも明かりがないではないか

やはり神は許してくれなかったのか

ここで望みを絶つならば

この身を捨てましょう

この足が向かうところへ行かなければならない

それが、今なすべきことだ

あそこに、かすかな灯りが

あれは教会ではないか

なぜだろう

足がそこへ向かうことを止めることはできない

かすかな灯りが次第に輝き始めた

あの輝きは灯りだけではない

僕の愛しい人の輝きではないか


あなたは罪な方です

私の心を支配して

ほったらかしではないですか

罪な方ではなく

意地悪な方なのでしょうか

支配される心は

私の今の喜びそのものです

ロミオ ロミオ

なぜ、あなたはセリルリーテ家の生まれなのでしょうか

そうでなければ

いつでもお会いできるはずです


今、僕は君の吐く息が聞こえる



外は寒いです

教会の扉を開けて少し休憩しましょう



後ろから誰かが目をふさいでいます

もしや

ロミオ


ジュリエット


やめてください

私の話を盗み聞きしていたのでしょうか


いえ

盗み聞きしたのではありません

あなたの声が届いたのです

僕は今はあなたの声しか聞こえることができないのです

そうさせたのは

ジュリエットではないでしょうか


私の声はロミオを求める声です

あなたがいなければ

このような話はしていないでしょう

あなた様は意地悪な方です


あなたの声が私を求める声だったのでしたら

お詫びいたしましょう

しかし、ここまでの道のりを作ったのは

あなたです

あなたが作った赤い果実でできた道のりです

意地悪なのはあなたの方ではないでしょうか


あまた様はセルリリーテ家のロミオ

私はカンティアーノ家のジュリエット

どうして

私達が結ばれますでしょうか


いえ、それは違います

なぜなら

二人はここにいるからです

神も運命を取り払ってくれました

僕はロミオ

あなたはジュリエット

それ以外に何がありますでしょうか

僕はロミオであり続けます

あなたはジュリエットのままでいいのです

あなたの美しい瞳

白い肌

すべてが僕を狂わせてしまいました

どう、責任をとっていただけるのでしょうか

あなたの唇にひきよせられます


キス・キス・キス


ロミオ

それ以上、私の心を乱さないでください

私は神から罰を与えられてしまうではないですか


それでは

もっと罰を与えてあげましょう

キス・キス・キス

罰はいかがだったでしょうか


もう、あなた様の目を見ることができなくなりました

もう帰る時間が過ぎています

どうすればよろしいのでしょうか


僕の膝で休んでください


そうなると、あなた様の目を見てしまうではないですか


それでは、私に背中を向けてください


いえ、それは出来ません

私の心が邪魔をするからです

あなた様の瞳の中に私は存在しているからです


でも、それではあなた様はゆっくり休むことができないです


それは僕と君を会わせてくれた教会が

いえ、それ以上にジュリエットの香りが私を安らかにさせてくれます

私を休ませてくれるにちがいありません


それではお言葉に甘えさせてください


ジュリエット

どうして教会へ来たのですか


私は愚かさを求めてやってきたのです

しかし、そうではありませんでした

愚かさではなく安らぎだったのです

あなた様のぬくもり

優しい寝息

そして、あなた様とひとつになることが出来たのです

これは、夢だったのでしょうか


いえ、違います

同時に夢を現実に変える必要があります


しかし

現実が待っているのです

明日、いえもう今日ですね

ミサがあります

それに行かないといけません


ジュリエット

ロミオ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る