第3話 舞踏会

ジュリエット

近いうちににあなたのための舞踏会を行います


どうして、私のためなのでしょうか

あなたの婚約祝いをとりおこなうからです


お母様、嫌です

私はまだ結婚はしたくありません


あなたはもう16歳よ

十分に結婚できる年齢なのです

私に早く孫の姿を見せてください


どちらの方との婚約なのでしょうか

]

ベルタナー家の長男よ

ベルタナー家といえば名家で知られていて

カンティアーノ家との距離も近いの

結婚できればより名誉が与えられるわ


嫌です


どうしてですか


愛おしい方がいらっしゃるからです


それは誰ですか


名前がわかりません


どこの誰かとわからない方と結婚するのはありえません


お母様、お母様

結婚はもう少し待っていただけないでしょうか


もう、日取りは決まっているのです


あなた様

私は翼を失いました

もはや、あなたの元へ飛んでいくことはできないでしょう

せめて、飛び立とうとする気持ちだけでも届かないでしょうか

私は近いうちに鋭い鷹の爪で奪われてしまうでしょう

その前に私の元へ飛んできてください


りんごが、いくつも落ちている

りんごをたどって行こう

ここの大きな屋敷まで続いているではないか

屋敷から舞曲が流れている

やはりそうだ

君の香りがりんごになって飛んできたのか

赤き果実に私は導かれたようだ

導かれたのであれば闇の中の闇にすぎない


神様

赤き果実をあの方の目印になれるように敷き詰めました

どうか

私を迎えに来ていただけるようにしていただけないでしょうか


マリア、お願いがあるの

門の所に男性がいらっしゃるか見てきてもらいないかしら


お嬢様、なぜでしょうか

もう、舞踏会が始まりますよ


いいから、お願い


かしこまりました


マリア、どうでしたか


青い目の情熱的な男性が何かを求めるように屋敷を見ております


やはり、あの方です

マリアだけに話します

私はあの青い目の情熱的な男性に心を奪われているのです

私は舞踏会には出るつもりはありません


お嬢様

今日は結婚相手の方も見えられます

それは許されません


だから、マリアにお願いするのです

あの方に屋敷に入ってもらう方法はないかしら


ジュリエット様は幼い頃から

私がお世話をさせていただきました

まさに、娘そのものです

それなら、今日はその方に仮面をお渡しいたしましょう


マリア、ありがとう


そこの、あなた様


なんでしょう


仮面を被って舞踏会へ参加されてください


これを私に


はい


お嬢様からです

もうすぐ舞踏会が始まります

すぐ屋敷の中にお入り下さい


ありがとう


大勢の人の中で囲まれている

これを被って入らなければ


お嬢様


あの方はもう屋敷の中にいらっしゃるはずです


マリア

わかりました


どこにいるのでしょうか

あなた様

私の心は、もはやどこにいるかすらわかりません

早く私の手を取り抱き寄せていただけないでしょうか


君はどこにいるのだ

ここか

どこだろうか


あなた様はどこにいらっしゃるのでしょうか

あちらに行ってみましょう


ジュリエット様

初めまして

クレオート家のパトラと申します

私と踊っていただけませんでしょうか

何か落ち着かないご様子

どうかなされたのでしょうか


あなた様

私はもうこの場を離れてあなた様の胸に

飛び込みたいのです


あの方はどこにいるのだろう

なんと

中央で踊っているではないか


私が探していた方は

あの仮面を被っていらっしゃる方ではないでしょうか

どうか

その仮面をおとりになられて

青い情熱的な瞳で私を見つめて下さい


君に気づいてもらうのに仮面を外さない理由などあろうか


あなた様、ようやく私を見つめてくれました

青い情熱的な瞳が

ようやく

私のものになりました


僕は君の瞳の中に入ることができた

早く君の白い手に触れることはできないのだろうか


早く、あなた様のもとに行かなければ

ああ、踊っている間に見失ってしまいました

周囲の人にさえぎられています

パトラ様

申しわけありません

ジュリエット様


とにかく探さなくては

どこにいるのでしょうか


どこだ、どこだ


どこでしょうか


目の前に光り輝く君がいるではないか


後ろにあなた様を感じることができます

神様

願うことならあなた様を

振り向いて

あの方を見つめる勇気を与えていただけないでしょうか


なぜ

僕は目の前にいる

君に声をかけられない

困難という言葉があればこれ以上

何があるのだろうか

僕は

なんという意気地なしさなのだろうか

今は君に対する気持ちで僕の心は溢れているんだ

一度でいい

君の心を剣でつらぬく勇気をください

そうすれば

するどい剣で君の心を刺してみましょう


あなた様の近い距離と温かさを感じます

私を見つめていてくださっているのでしょうか

きっとそうです


赤き果実に僕は導かれたようです


導かれただけでは闇の中の闇にすぎません

あなた様


僕はロミオ

君は


私はジュリエット


君を探すのに

いや探すことができなかったとしても

君を想う気持ちに変わりはありませんでした

今、ここで巡り合うことができて

神への憎しみが感謝に変わった瞬間です


ロミオ

これほどの星の数より私の想いは多かったでしょう

星も、あまりの多さに驚いていたにちがいありません

やっと星が二つになりました

星たちも安心して眠れるはずです

私はカンティーノ家の長女


なんとカンティアーノ家


どうかされましたか


ジュリエット

僕はセルリリーテ家の次兄なんだ

なぜだ、運命はなんという悪戯をするのだろう


ロミオ

あなたはセリルリーテ家なのですね

早く逃げてください


あいつは、ロミオではないか

リオンの仇をとりたいがここでは出来ぬ

おい

ロミオ

ただちにこの場を離れろ

今度会う時までに楽しみに待っておれ


お兄様


ジュリエット

また会えることを誓います


私もです

あなたを想いながら眠れない日々が続くでしょう

私を安らかに眠らせてもらえないでしょうか

どうか

早く会いに来て下さい


それでは

ジュリエット


待ってください


ジュリエット

やめろ

追うな、待て



ジュリエット


ロミオ


キス・キス・キス



おい、ロミオ

待っておれ

いいか

ジュリエット

もう

ロミオとは会うな

わかったか


お兄様


やつはどこに消えやがったか

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