顔料の猫はすべてにピースする
家中の箸などをすべて隠され仕方なくボールペンを使ってカップ麺を食べたという小説があったことを急に思い出して同じことをしてみたら普通にまずかったし中の青いインクが溶け出て体に良くないんじゃないかと完食してから青ざめもしたがそもそもこんなことをした意味もなにもかもすべてがわからなかった。仕事をやめて部屋から出なくなってもうかなり経つ。家族とも、もうずいぶん顔を合わせていない。ドア前に食事が置かれるので、生きてはいるはずだ。
「何様だよ」
生かしてもらっているのは僕のほうなのに。いなくなりたい。さっきのペンのインクが毒だったらよかったのに。視界がかすんでいく。
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。はっと顔をあげると、突っ伏していた机の上にペンと同じ青色をした猫の落書きがいた。縦棒二本とωで表現された顔で「まだいける」と言ってピースをしている。
テレビをつけると時代劇がやっていた。本来なら寝る時間だが、猫に笑いかけ、たっぷり迷って僕は部屋を出た。階下から、朝食の準備をする誰かの気配がする。
(お題……文房具)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます