三杯酢でバタフライ
大滝のぐれ
あんしんロボと肉骨茶を
帰りに中華食材店で冷凍の中華揚げパンを買った。本当は上野で売っているできたてのものが欲しかったが、感染症のせいで避けざるをえなかった。見えないナイフの連撃を、私たちはたったひとりでかわし続けている。家で待っているロボに「肉骨茶が食べたい」とメールをし、歩を進める。
「おかえりなさい」
家に着いて玄関のドアを閉めた瞬間、荷物やコートがロボ本体から伸びるアームによって取り払われた。合成音声で不在中のできごとを報告されながら、私はリビングへと運ばれる。
「もうあんしんですよ」
油で揚げ直した揚げパンと、湯気の立つ肉骨茶が目の前に置かれる。八角と牛肉の香りが立ちこめる中、ロボのアームが私の頭をなでた。ごつごつとしてなめらかさのかけらもなかったが、それは私にあんしんを与えてくれる。ちぎったパンを肉骨茶に浸し、口に運ぶ。じょわっとした歯触りと共に、油っぽい旨味とすっとした清涼感が広がった。
「また、みんなと会いたいですね」
内から外から、私はまもられていた。揚げパンをちぎる。とてもかさかさしている。
(お題……スープ)
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