ネクラ



ちっちゃいの「あるじぃ、、




あるじぃ、、」




久しぶりに聞いた声は聞き覚えのある声だった。






ちっちゃいの「あるじぃ、」




「?ちっちゃいの、、?」




ちっちゃいの「今ここを壊しますからね、、」




「世話をかけるな、、、」






何日間。どのくらい、




私はここに居たのだろうか、、






自らを見つめ、追い詰め、、






"前の自分の様に息をしていた"






ドカッ、ドカッ、、




ゆっくりと音は近付き、壁からは欠片が落ちる。






ちっちゃいの「主、もう少しです、、」




「あぁ、、」




疲労しきった身体は、声を出すのも難しかった。






これは、もしかしたら、幻覚なのかも知れない。




助けて欲しいばかりに、夢を見ているのか、、






眩しい光が、太陽の光が暖かく当たると、




拘束された器具は外された。




これは、紛れもない現実だった。






「他の奴も、助けてやってくれ、、」






外に出ると犬とおっさんが居た。




犬「御無事で、、」




「わりいな、、」




おっさん「ダンナ、、」




「おっさんも来てくれたのか、、」




ちっちゃいの「この方が情報を集めてくれて、、」






「角は!!?」




我に返り、言葉を放つも、皆は口を動かさない。




おっさん「今。情報を集めてる所で、、」




ちっちゃいの「腑甲斐無いです、、」




犬「今はとりあえず休んだ方が賢明かと、」




「そうだな、、」




冷静な判断が出来る奴が居ると助かる、






安心したのか、私はそのまま気を失った。






私の身体は揺れていた。




ゆらゆらと、汚物を垂らしながら、、






蝿が飛び交い、蛆が湧く。






異臭を放つ身体は、




ゆっくりと朽ち果ててゆく。






誰かが入ってきて私は下ろされた。






「はっ、、」




嫌な汗と共に、嫌な過去を見た。






どうやらあの後は、拘束された者達を解放し、




ヤブの所へと行ったらしい。






ヤブ「あら、ようやく起きたの?」




ヤブは私の顔を見る。




ヤブ「起きれるなら退いてちょうだい、




アンタがぐっすり寝てられる程、




ここは広くないのよ。」




「悪かったな、、」




ヤブ「ふっ、」






そう言うと、部屋から出て行った。




代わる様にちっちゃいのが入ってくる。




ちっちゃいの「あるじぃ、、」




ちっちゃいのは私に抱き付く。




女は奥から私を見る。






「おっさんと犬は?」




ちっちゃいの「角さんの情報を集めに、」




ヤブ「あまり、ワンちゃんを虐めないでね?」




女「あのおっさん改心したみたいで、




ずっと犬みたいに駆け回ってるわよ。」




こいつらには迷惑をかける。






「そっか。




ごめんな、、」






自分に力が無い事を改めて自覚する。




異世界に来て、変わろうとして、




肉体が変わって、環境も変わった。






更には待遇すらも変わったのに、




結局私は前と同じだった。






『何も変わってない』






私は誰も守れなかった。






道路に転がった、




車に轢かれた子猫の死体を見て、




私はただ、通り過ぎるだけ、、






『可哀想』






そう思い、自らを照らし合わせる。






私があの猫なら良かったのに、、






まだ、子猫。




未来があり、希望がある。




夢があり、沢山の幸せがあった。






その未来を守れたかも知れない。




その未来を作れたかも知れない。






でも、私には"それ"が出来なかった。






いや、、






"しなかったんだ"






全部そうだ。




ただ言い訳を繰り返した。






全部、自分の都合の良い様に、、






"アイツラ"と一緒だ。






ヤブ「なに、浸ってんのよっ!」




ビシッ




私は視線を上げる。




心配そうに見つめるちっちゃいの。




感情を見透かされ、女は俯く。






ヤブ「あのね?




人間。いや、意識がある者。




としましょう。






皆身体があるでしょ?




物体が。"器"がね。






液体は蒸発したり、沸騰したり、気化したり、




いろいろと状態が変化するでしょう?






でも物体はそれがなかなか出来ないのよ。




まあ、性質にもよるわよ?




こう、強制的に力で曲げれば別だけど、、






じゃあ、心は?魂ってヤツは?






もしもスライムみたいなジェル状だったら?




簡単に変わるわよね。






何が言いたいかと言うと、






『勝手に変わる事なんて何も無いのよ』






自ら動き、変わりたいと、変化しようと、




自分で試行錯誤を繰り返した先に。






『変化』って"ヤツ"は訪れるのよ。






例え、現状が昔と比べて変わって無くても、




現実がなかなか変化しなくても、






変わろうと動かしている時点で、




世界は少しずつ変わってゆくのよ。






だから何が言いたいかと言うと、、






『考える前に体で感じろ!』






って話。




思考なんて後からいくらでも追い付いてくるわ。




失敗や経験が作用や、効果になって、






初めてそこに"変化"が生まれるのよ。






私はあまりこうゆうの得意じゃないのよね、、




らしくないわね、、






これ飲んだら、早くワンちゃんを




こっちに寄越して頂戴。






大丈夫よ。




皆アンタを信じてるんだから、、」






内側から固く閉ざされた埃まみれの扉を




外側から否応無しに、打ち明けられた。






何だかそれは、爽快感に似た。




風が通った様な感覚がした。












































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