【クリーチャーズ・ハウス】Day4「neon,lady,head」
薄暗い部屋を照らす真っ赤なネオンサイン。「Lonely」と光るそのネオンサインの光源はどこにもなく、グラマラスなプロポーションの女性の
その瞬間「Johnny!」とネオンサインの文字が変わり、女性は立ち上がるとその大男の方へと向かって歩いていく。
「やあ、おはよう…キャサリン。」
歩いてくる彼女に偽りのにこやかな笑顔を向け、手をひらりと振った大男は今しがた彼女に振った手を躊躇いなく凶器へと変え、彼女を床に叩きつけるとその細い首に両手をかける。いきなり馬乗りになられて首を絞められた彼女は「Why…?」とちかちか点滅する弱々しいネオンで目の前の大男に問う。
「…笑顔…笑顔でいるから…見捨てないで…母さん…。」
大男は彼女の首を絞めながら泣いていた。仮面の隙間を伝うようにして涙の粒が彼女のネオンに何度も零れる。彼女のネオンサインが完全に光を失うのは然程時間もかからず、床に転がっている彼女の死体を見下ろした大男は少しだけしゃくり上げながらその光を失ったガラス管を足で踏みつけ、何気ない様子で割ってしまった。
「…ああ、そうだ…忘れてた。マリーナを「ドクター」に見せないと。」
大男はふと思い出したように部屋を飛び出し、マリーナの部屋へと歩いていく。途中でぬいぐるみを抱えたアレックスとすれ違ったが、アレックスも大男も気にすることなくそのまますれ違う。
「…ねえ、マリーナ?「ドクター」のところに連れていくから出ておいでよ。」
大男が穏やかな声で呼び掛けると、部屋の扉が少しだけ開いてマリーナが顔を見せる。
「………ジョニー。うん、わかった。」
マリーナはこくりと頷き、差し出された大男の手を疑うこともなく握る。大男も今回ばかりは手を凶器に変えることなく華奢で小さな、彼が本気で握れば軽く折れてしまいそうな手を握り返して二人は廊下を歩いていく。しばらく歩いた先、「診療所」と表札部分に整った字のマジックペンでそう書かれている部屋の前で二人は足を止める。大男が扉をノックし、「…やあ、「ドクター」。マリーナの関節が錆びてきちゃって…ちょっと診てほしいんだ。」と呼び掛けると部屋の中からは「……「ドクター」なら今いないわよ。私でよければマリーナちゃん診てあげるけど。」無愛想な女性の声が返事を返す。
「………私、クランケさんでもいいよ。油さえ差してくれれば元に戻ると思うから。」
「そっか。じゃあお願いするよクランケ。」
大男の声に答えるようにして診療所の扉が開き、目の下にクマを浮かべた不健康そうな女が顔を出す。彼女の体は一目見ただけでもぎょっとするほどに包帯まみれで、中にはまだ生々しく血の滲んでいる包帯もある。腕にも足にも所狭しと絆創膏やガーゼが貼りつけられており、おまけに松葉杖まで突いている。
「…分かったわ。マリーナちゃん、いらっしゃい。終わったら呼ぶから来て。」
彼女はマリーナを招き入れると扉を閉める。
一人残された大男はそのまま踵を返し、
「…お大事に、クランケ。」と呟くと立ち去っていく。
ーー
「病気女」あるいは「ミス・ファイン」
【クランケ】
自分がこれ以上ないほどに健康だと思い込んでいる女。身体はぼろぼろで、常に全治三ヶ月程度の怪我を居っている。元ナースでレズビアン、「ドクター」の手助けをしており、マリーナが恋愛感情で好き。
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