【クリーチャーズ・ハウス】Day3「lonely,baby,teddybear」

マリーが急に、足にしがみついてくる。

「どうしたんだい、マリー。」

「パパ、ジェシーを助けてあげて!エリックがジェシーをいじめてるの!」

「そうか、分かったよ。こら、エリック!

ジェシーをいじめちゃダメだろう?」

私が叱ると泣きじゃくるジェシーの頭を叩いていたエリックは不満そうな表情のままジェシーから手を離し、こちらに歩み寄ってくる。私の目の前にたどり着いたエリックは渋々といった様子で謝りながらばつが悪そうに呟く。

「ごめんなさい、パパ。でも、ジェシーが僕のクマさんを取ったから…」

「ふむ…そうなのかい、ジェシー?」

彼から見れば、子供たちとの何気ない時間。端から見れば、それは異常者の会話。

彼が会話しているのは人間の子供ではなく、3体のぬいぐるみでしかなかった。そのぬいぐるみと至って真面目な様子で会話しているのだ、他人から見れば異常な空間だろう。彼の名はアレックス・シルヴェスター。彼の目には3体のぬいぐるみが全て自分の息子や娘に見えているようだ。クマのぬいぐるみはエリック、ウサギのぬいぐるみはマリー、ネコのぬいぐるみはジェシー。

「さ、マリー。メアを殺した犯人を探しに行こうか。…ん、どうした?エリックも来るのか。ジェシーはお留守番を頼むよ。」

彼は「マリー」と「エリック」を両腕に抱え、「ジェシー」にそう言い残して自室を後にし、どことなく薄暗い廊下へと歩を進める。歩いている際、人形少女のマリーナと

すれ違ったが、マリーナは特に彼を気に留める様子もなく自室へと歩き去ってしまう。

「おや、アレックス!君が部屋から出るなんて珍しいね!」

歩く彼の背に明るく快活な声が掛けられ、振り向くとそこには手を振るパジャマ姿のメア…を映し出した、古臭いブラウン管のテレビが立っていた。

「ああ、レイモンドじゃないか。君もメアを殺した犯人を探しているのかい?」

ブラウン管のテレビは静かに首を横に振る。

「………違う。………メアが殺されたのは、知っている。が、犯人を探す気は、ない。

それ、よりも…」

テレビは首…いや、画面を書斎の方に向けると「………あっちで、アハトが殺されて、

いたが……行かなくて、いいのか。」そう言い残して歩き去っていってしまった。彼は二人の子供と顔を見合わせ、一旦書斎の方へと歩いていった。本に埋もれて転がっているアハトの死体は頭のランタン部分が死体の側に転がっている、所謂首無し死体になっており人間であればグロテスクなのだろうが頭部がランタンなせいか、あまり現実感がない。「アハトも殺されたのか。犯人は一体誰なんだろうね、マリー。」

彼は娘に話しかけながら首を傾げる。彼の後ろで、書斎から一人、大男が出ていくのが

見えた。

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