第9話 世界会議《前編》

リビングで寛いでいると礼服を着たアステリア様が現れた。


「どうしたの?アステリア様」


「これから王都に行くのじゃ」


「そうなんだ、行ってらっしゃい」


「何を言っておる。貴様も行くのじゃ、リシア」


アルミス達も礼服のドレスを着込み現れた。


「リシアさん、私昨日言いましたよ?明日世界会議に行くので準備しておいて下さいと」


「あっ」


風呂から上がったあと言われたがその時は寝ぼけていて、完全に受け流していた。


「あっ、じゃないですよ。ほら早く着替えますよ。時間が無いんですから」


礼服に着替えているとふと疑問に思った。


(あれ、なんで俺世界会議に出席するんだ?)


「さすが、リシア、よく似合っておる」


「アステリア様、なんで私世界会議に出席するの?」


「そっから話さねばならんのか、世界会議は各国の王と魔王が出席するもので今起きている世界の現状についての話し合いをする場じゃ」


「え、私魔王でも国王でもないけど」


親の顔より見たこの呆れ顔。


「自分の称号も忘れたのか?リシアよ」


「自分の称号?称号、、、あー、確か《天魔王》ってなってたような」


「そして最近の貴様の功績が認められ、世界会議への参加が認められたんじゃ」


「私そういう話し合いとか苦手なんだけど」


「安心せい。別に話し合いに参加する必要は無い。話を聞いてさえいればよい」


昔から授業中は眠たくて寝ててよく先生に怒られたのを思い出す。


その度に母から叱られてた気がする。


「迎えが来たみたいですよ」


外を見ると馬車が六台止まっていた。


「お待ちしておりました。《天魔王》リシア・ウィリーリアス御一行様」


麗人のような女性が馬車の扉を開けてくれた。


「ど、どうも」


「魔王ともあろうものがオドオドするでないわ!シャキッとせんかい!」


アステリア様に勢いよく背中を叩かれた。


「いたっ、私魔王じゃないです!普通のごく平凡な人間ですよ!!」


「何が平凡か!桁違いな魔力に頭のおかしい才能を持っている奴が何を言うか!この世界では貴様のようなことを魔王と呼ぶのじゃ!」


「申し訳ありませんがほかの方達も待っておりますのでお急ぎください」


「「あ、はい」」


馬車に乗ると王都へ動き出した。


「アステリア様のせいで怒られたじゃないですか」


「元はと言えば貴様がっ」


言い合っていると急に馬車が止まった。


「どうした?」


「それがワイバーンの群れが現れ、荷車が襲撃を受けまして」


「ワイバーンの群れとな。ならばこのアステリアがその群れを全滅させてやろうぞ」


「その必要は無いですよ。アステリア様」


「なぜじゃ」


「今、リシアさんが外へ出ました」


「私の日頃のストレスをその身で味わいなさい!!」


黒い炎で敵を一掃する魔法【黒天】を放つ。


「貴様ぁッ!それは妾への腹いせか!」


「冗談ですって。落ち着いてください、アステリア様」


「リシア様、客人だと言うのに貴方の手を煩わせてしまい、申し訳ありません」


「お気になさらないでください。私のストレス発散ですから」


再び馬車へ乗ると王都へ動き出した。


「ママ、おうとにはいつつくの?」


「安心せい、あと数十分で着く」


「そんなに早くつくものなの?」


「元々リンガから王都まではそこまで離れてはおらんからのう。それに数百年前より道も良くなっておる」


まるでおじいちゃんの話を聞いているみたいで眠くなる。


というか本当に眠くなってきた。




「、、、さん、、リシアさん!!」


アルミスに叩き起され目を覚ます。


「あれ、私寝てた?」


「うむ、それもかなりのう。最初は起こそうかと思ったのじゃがあまりに幸せそうに眠るのでな」


「ママずっと、寝ながらおとー」


「い、言わなくていいから!!」


黒歴史が生まれる前にユウの口を塞ぐ。


「お待ちしておりました。私はアスタロト王国第二王女、アイリス・アスタロトと申します。では、客室へご案内致しますので着いてきてください」


「客室?世界会議は今日じゃないんですか?」


「世界会議は明日ですよ?」


「え、、、アステリア様?」


アステリア様を見ると我関さずという感じで空を飛んでいた。


「まぁいいじゃないですか、リシアさん」


「確かにいいんだけどさ」


「あのー第二王女様。なぜ、第二王女様が自ら私たちの案内を?」


「それはですね。私が父にお願いしたんです。私リシア様の噂を聞いてからリシア様を尊敬しているのです!だから是非ともリシア様とお話してみたかったんです」


第二王女様が口が当たるのではないかというくらい近づいてきた。


「え、えっと私そんなに噂になってるの?」


「はい!高貴な存在とされるエルフの姫君を篭絡させた魔王、魔王を屈服させた魔王、アポロニア教の筆頭騎士を従えた魔王、奴隷商を潰した魔王とか色々流れております」


所々ツッコミどころ満載だがその気持ちを抑える。


「そのどこに憧れる要素があるの?」


「全てです!私はリシア様の全てに一目惚れしたのです!ちなみにリシア様のスリーサイズ、誕生日、ステータス全て覚えております!バス、、、」


「いいから!言わなくていいから!」


個人情報が何故こんなにも拡散されているのだろうか。


「この二部屋がリシア様御一行の部屋になります。これからの予定は夜に歓迎パーティーがありますので客室の置時計が6を指しましたら降りてきてください。それまでは自由に過ごしていただいて構いません。分からないことがあればその都度、隣の部屋に侍女がいますのでそちらに聞いてください」


王女様が去っていき、部屋を覗くと物珍しそうな目でユウとユイが時計を眺めていた。


「どうしたの?二人とも」


「ママ、時計あるのすごいね」


「時計初めて見た」


「え?そうなの?」


そういえば家にもギルドにも時計がないことを思い出した。


「はい、時計は高価なものでして貴族以外で持つ事は出来ないんです。値段が一つ当たり白金貨百枚以上しますから」


「へぇー、そうなんだ」


(前世の時は時計は普通にあったから不思議に思わなかったけど、口が滑らなくてよかった)


「アステリアお姉ちゃんも持ってたぁ〜」


「アステリア様が持っているのは懐中時計ですね。あの人は魔王ですし領地も持ってますから当然といえば当然ですね」


懐中時計と聞くと厨二病心をくすぐられる。


「「ママー、おそとにあるお花見に行きたい」」


二人が手を引っ張る。


「分かった、分かったから」


時間になるまで外で過ごすことにした。

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