第10話 世界会議《中編》

時間になりユウとユイを連れ、エントランスへ入ると待機していた侍女に会場へと案内された。


「リシアさん、こっちです」


アルミスたちのいる方に向かう。


「みんな早いね」


「特にやることもなかったので」


「この度はお集まりいただきありがとうございます。王国を代表して私が乾杯の音頭をさせていただきます。ではこれからの親交を祝しまして、乾杯!!」


この世界では十五歳以上は大人として扱われ、お酒が飲めるようにもなる。


しかし、怖いのでお酒ではなくお茶を飲む。


「「ママ」」


「エリシア、ユウとユイのことお願いしていい?」


「お任せ下さい、リシアお姉様」


エリシアがユウとユイを連れ、食べ物をよそいにいった。


「まるで母親じゃのう、リシアよ」


「誰が母親ですかっ。まだそんな歳じゃありません」


「話変わるがリシアよ。貴様は好きな男はいるのか?」


「ブフゥ!!」


飲んでいたお茶を吹き出しむせる。


「汚いのう」


「アステリア様が変なことを言うからじゃないですか!!いませんけど何か?」


「そうか。ならば気をつけておけ」


「それはどういう意味ですか?」


「すぐに分かる。アルミスを見ておけ」


とアステリア様がほかの貴族と会話しているアルミスを指さした。


「君がエルフの姫君、アルミス殿かな?」


アルミスへ割って入るようにイケメン顔の青年が話しかけた。


「そうですけどどなたですか?」


「私はアスタロト王国第一王子、ウォーレン・アスタロトと申す。単刀直入に言う私と結婚して欲しい」


「お気持ちはありがたいのですがお断りさせていただきます。私には既に決めている方がいますので」


「お兄様、何をしているのですか。これは親交の宴です。お兄様の婚約者を探す場所ではありませんよ。皆様ご迷惑おかけしました」


王女様が王子様のシャツの襟首を掴み、会場から去っていく。


「突然で少しビックリしました」


「アルミスの言ってた決めた人って?」


「決まってるではありませんか。リシアさんただ一人です」


アルミスが抱きつくとそれに釣られるようにユウとユイ、エリシアが抱きついてきた。


「ちょ、嬉しいけどここでは迷惑になるから離れなさい」


「リシアはすぐに嫉妬するからのう。さっきもアルミスが第一王子から絡まれてる時とか決めた人がいるって言った時とか嫉妬した顔じゃった」


「し、嫉妬してません!」


「リシアさんに嫉妬されるなんて私幸せ者ですね」


えへへとアルミスが喜ぶがアステリア様はそれを見て、笑っている。


「リシア様、私と踊ってはいただけませんか?」


王女様は戻ってくるなりこっちに来て手を掴む。


「え?私踊ったことないけど」


「構いません。私が手取り足取りお教えいたしますから」


「何を言ってるんですか、王女様。リシアお姉様に教えるのは私の役目です」


「王女様、エリシアさん、ここは誰よりもリシアさんと過ごしている私がするべきことです」


三人が睨み合っていとアステリア様が声をかけてきた。


「私が貴様へダンスを教えてやるからこい」


「はぁ、また悪ノリを」


アステリア様に教わりながらダンスを終えると盛大な拍手が鳴り響いた。


「ありがとう、アステリア様」


「ふ、ふん、礼などいらん」


少し顔を赤くしながら別の方向を見ている。


「あれれ、まさか、アステリア様。照れてるんですか」


「う、うるさい!人間の貴様に照れるわけなかろう!!」


「もうアステリア様ったらー。ーっ!?」


着慣れないドレスの裾に足をひっかけ思い切り転んでしまった。


「リシア!大丈夫か!」


「は、はい。大丈夫です」


床にポタポタと血が落ちる。


(鼻血かな?)


「額を切ってるではないか!おい、救護室はあるか!」


「この会場を出て左側にございます!!」


アステリア様に連れられ、救護室へとはいる。


「ごめんなさい、アステリア様。つい、はしゃいじゃって」


「気にするでない。しかし、もう少し足元にも目を配るべきじゃ。折角の可愛い顔が傷だらけになる」


ペタっと消毒した後にガーゼを貼る。


「か、可愛くなんてないです!」


顔が熱くなる。


「妾は十分可愛いと思うがな。妾が男ならとっくに襲っておる。貴様はもっと化粧や衣装に気を配ってはどうだ」


「私あまりそういうのに興味無いんですよね」


「勿体ないのう。折角可愛い顔だというのに。まぁ我が友も貴様とよく似ておった。あやつも全くそういうのには興味無いとかいうておったわ」


「それに最近は怖いんです」


「怖い?」


「はい、自分が自分じゃないような感覚に陥って前世の両親の顔も思い出せなくて、、、私って誰なんですか?、、私みたいな人がここにいていいんですか?」


震える手を必死に抑える。


「妾には分からぬ。貴様の気持ちは。しかしのう、ここにいる貴様だけがリシア・ウィリーリアスで妾の友だ。以前にも言ったであろう?辛い時は泣けば良い。相談に乗って欲しいのならいつでも聞いてやる。それは妾だけではない。アルミスやエリシアだってきっと同じことを言う」


「はい、ありがとうございます。アステリア様」


「な、なにをする!」


「しばらくこうさせてください」


「仕方ないのう。少しだけじゃからな」


アステリア様に抱きつきしばらくその状態でいると救護室へ心配したユウとユイ、アルミス、エリシアが泣きそうな顔で入ってきた。


「リシアさん!!」


「「ママ!!」」


「リシアお姉様!」


「なっ、、アステリア様、抜け駆けはいけませんよ!」


「ち、違うの!わ、私からアステリア様に頼んだの」


咄嗟にアステリア様から離れ、立ち上がる。


「そ、そうじゃ。貴様の考えているようなことは一切しておらぬ」


「なら良かったです。それよりお怪我は大丈夫ですか?リシアお姉様」


「うん、みんな、ごめんね心配かけて」


その後一応会場へ戻ったが王女様に念の為、安静にと言われ終わるまで椅子に座らせてもらった。

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