第7話 初めての引越し

この世界に来て四日が経ち同居人が増え、今や大所帯。


これからも増えそうな気がしている。


「私がなぜ怒ってるのか分かりますか?リシアさん」


「い、いえ、分かりかねます」


それをフィーアさんに相談してみると街の東側に新しく出来た豪邸があるらしく元々、貴族の人が買うつもりだったみたいだが急遽白紙になったとのこと。


この街に住む伯爵公が困っているみたいで良かったら買ってはくれないかと頼まれた。


お金自体はかなりある上、今の家では部屋が足りていないため購入を即決し今に至る。


「勝手に家を購入したことです!しかもめちゃくちゃ高いじゃないですか!!白金貨三百枚って金銭感覚どうなってるんですかぁ!」


「い、いやぁ、そのフィーアさんに頼まれたしいつもお世話になってるから、、、」


「このお金はリシアさんの物ですから構いませんけど、一言くらい言ってくれてもいいじゃないですか」


「ごめんなさい。次から気をつけます」


「済んだことですし、今更グチグチ言っても仕方ありませんし。でも、さすがにこの荷物だと」


「それなら私に任せて」


スクロールを買って覚えた収納魔法で荷物を全て魔法陣へ吸収した。


「相変わらず桁外れの魔法じゃのう」


「そうですか?」


「うむ、収納魔法でここまで収納できる程の者はそう多くはない」


「「ママすごーい」」


昨日奴隷商から助けた双子の幼い姉妹のユウとユイが目を輝かせながら興味津々でこっちを見る。


「では行きましょうか、リシアお姉様に皆様」


「ん?エリシア、どこ行くの?」


扉を開けようとしたエリシア達を止める。


「えっそんなの外に決まってるではありませんか」


何言ってんだこいつみたいな冷たい表情でこっちを見るエリシア達。


「転移魔法で行った方が早いよ?」


「「「て、転移魔法!?」」」


エリシアたち三人が驚く中ユウとユイはキョトンとした表情でこっちを見つめる。


「なんでそんな驚くの?」


「リシア、転移魔法は禁忌の魔法で数百年前に途絶えた魔法じゃ。どうやって習得したんじゃ?」


「えっとね、スクロールであったの。試してみたんだけど本当に転移できたよ?」


「な、なぜスクロールを使ってしまったのですか!!リシアさん!そのスクロールだけで白金貨三千枚はくだらないんですよ!!」


「さすが、リシアお姉様です」


「なんかごめん、、、、」


「うむ、まぁいちいち歩くのもめんどくさいし、転移魔法で移動しようではないか」


「ええ、アステリア様まで!?」


転移魔法を起動し全員が魔法陣に入ると光に包まれた。


眩しい中目を開けると新居に無事転移できた。


「これさえあればどこへでも行けるのう」


「ううん、それは出来ないよ。この魔法はどうやら1度いった場所でないと行けないみたい」


「それは残念じゃ」


収納魔法から荷物を取り出し配置していく。


「それに私は魔法に対する攻撃は強いし魔法にも自信はあるよ。けど物理攻撃に対する防御はかなり弱いんだよね」


あははと苦笑いしていると何故かエリシアとアルミスが笑顔になった。


「それなら良かったです。その時はリシアさんのこと私がお守りします!」


「安心してください、その時は私がリシアお姉様をお守りします!」


二人のセリフが被り睨み合う。


「二人ともありがとう。その時はお願いね」


「「はい!!」」


なんて幸せなんだろうと思い、ふと昔を思い出した。


転生する前の世界では両親と暮らしていた。


と考えていると涙が溢れ出した。


「ママ、大丈夫?」


「ママ、どこか痛いの?」


ユウとユイが心配し、駆け寄る。


「どうしたんじゃ、リシア」


「あ、あれなんでだろう。ゴミが目に入ったのかなぁ。な、涙が止まんないや。おかしいな」


拭っても拭っても涙が溢れだしてくる。


「リシアさん、、、」


「ぜ、全然大丈夫だから、、気にしないで、、大丈夫。う、うう」


ようやく分かった。


優しかった両親よりも先に死んでしまったことで両親に対する申し訳なさと会いたい寂しさが同時に襲ってきたんだ。


「リシアさん、泣いてもいいんです。泣きたい時は泣いて、笑いたい時は笑えばいいんです。私たちは家族じゃないですか!!」


そう言われて心の奥でせき止めていた感情が雪崩のように溢れ出す。


「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!母さんと父さんに会いたいよ、、、、」


それから数時間泣き続けた。




ユウちゃんとユイちゃんはリシアさんと共に寝ている。


リビングの椅子へ私とエリシアさん、アステリア様が座る。


「忘れていました。リシアさんは目が覚めたら一人だったんです。辛くて寂しくて家族に会いたいはずなのに私それに気づきませんでした」


「妾もじゃ。あやつから自身の事を聞かされてはおった。しかしいつの間にかあやつに頼りすぎておった」


「そう、ですね。あんなリシアお姉様を見るのは初めてでした。リシアお姉様はあんなに頼りになりますけどまだ15歳の子供ですもんね」


私含め三人はは暗い顔でリシアさんの気持ちに気づかなかったことに恥じているとユウちゃんが降りてきた。


「めっだよ。ママがこんなの見たら悲しむ」


ユウちゃんがムッとした顔で見つめる。


「そうじゃな。ユウの言う通りじゃ。情けない顔をしておる場合ではないな」


その後、リシアさんは申し訳なさそうな顔で降りてきてひたすら謝っていたがその表情はどこかスッキリしていた。

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