第5話 異端審問官

アルミスと庭の草刈りを暑いというのに昼間からしている訳だが、昨日の祭りも大変だった。


アルミスがかなり酔っ払ったせいで家まで運んだ。


朝起きたら筋肉痛で痛かった。


「そういえば魔王様は?」


「アステリア様なら魔族領の方での転移届があるみたいでその手続へ出かけていきました」


「魔族領にも転移届なんてあるのかぁ」


「そうみたいですね。私も知らなかったです」


「うー、めんどくさい。全部燃やしていい?」


「ダメに決まってるじゃないですか!何を言ってるんですか!!」


魔法を使おうとしたらアルミスに手を思い切り叩かれた。


「こういう細かい作業嫌い」


刈っても刈っても雑草が減らない。


けど体力は減る。


「あっ、そういえば。リシアさん、私のケーキ食べました?いえ食べましたよね!?」


アルミスが両頬を掴み、思い切り引っ張ってくる。


なんひょなんのこひょでひょうことでしょうひょんなこひょそんなことひゅるわへするわけひゃいれふよないですよ


「あの家にはいま私とリシアさんしかいませんよ」


「うぐ、、確かに。けど本当に違うの!私じゃないって!」


「わ、私がこつこつ貯めて買った高級ケーキなんですよ!」


アルミスが大泣きし始めた。


「ちょ、落ち着いて。代わりのもの買ってあげるから!」


「やです!私はあのケーキがいいんですぅ!」


「どちらがリシア・ウィリーリアスですか?」


礼装を着た女性がいつの間にか後ろに立っていた。


「私ですけど不法侵入って知ってます?それにその口の周り、、、、あなたがアルミスのケーキを食べた真犯人?」


「クーラーに入っていたケーキなら食べましたよ」


「よくも、よくも、私のケーキをぉぉぉ!!」


バーサーカーと化したアルミスが女性を襲いかかるが必死に止める。


「落ち着いて、アルミス」


「だ、だってぇ!!」


「はいはい、あとで一緒に買いに行きますよ。さてと、あなたが私に何の用ですか?」


「アポロニア教異端審問官、エリシア・ノットレイと申します。貴方を教皇猊下の名のもとに拘束させていただきます」


エリシアさんは私の手を掴み拘束魔法で縛る。


「異端審問官、、、、ああ、アステリア様の言っていた人」


【略奪】で拘束魔法を吸収しエリシアさんを睨む。


「なっ、、どうやって!?」


「企業秘密です。ケーキと私の恨み果たさせてもらうよ」


魔法を使おうとしたら上からアステリア様が飛んできた。


「何事じゃ?リシア」


「異端審問官に拘束されそうになったのとこの人がアルミスのケーキを勝手に食べたんです。とりあえずその恨みをここで果たそうかと」


「そういうことか、、少し待て、アルミス」


「えー、、、、まぁアステリア様が言うのなら仕方ありませんか」


魔法を使おうとした手を降ろした。


「うむ、異端審問官よ。このまま貴様は帰るべきじゃ。もしこのまま我が友リシアを捕まえるというのなら我々魔族の全戦力を以って貴様らを討つが良いのか?妾は貴様らなど敵ではない」


「ーッ!?まさか貴方は魔王、アステリア!?なぜ貴方のようお方がここに!」


「妾がどこにいようが勝手であろう」


「く、、、しかしありあまる力はいずれ世界の均衡を崩壊させる!ならば今のうちに消しておくことが1番に決まっているでしょう!」


パシンと音が鳴り響いた。


「私たちは同じように生きている人間じゃないですか。なのになんであなたたちはそんなことを簡単に出来てしまうんですか!そこに必死に生きている人達を!その人たちの思いをそうやって何度も踏みにじってるだけじゃないですか!!私には宗教の考えなんて分かりません!けどその前に私たちは一人の人間です!!」


止まらない涙を拭いながら怒りをぶつける。


「、、、、」


「あなたが悪いとは言いません。けど!力の均衡が崩れるからとか平和が脅かされているからとかそういうことでそこに生きる人達を裁いていい理由になんてなりません!!もしあなたたちがこの街に生きる人たち、、いえそれだけじゃない。この世界に生きる人達をそんな理由で裁くというのなら私は私にもてる全てであなたを地獄の果まで追いかけます」


「う、、うぁぁぁぁぁん、おかぁぁさぁぁん!!」


エリシアさんから出たのは子供のような叫びだった。


「えっ!?ちょ、エリシアさん!よしよし、大丈夫だよ。お、お姉ちゃんは怒ってないからね!」


泣きじゃくるエリシアさんの頭を撫でる。


「ううう、ごめんなさい。私、アポロニア教なんて辞めます!!」


「ええー!?」


「だって、あの教皇は自分勝手でむちゃくちゃな任務ばかりさせてくるんです!私だって人を裁くのは嫌です!」


アポロニア教の教典を燃やし始めた。


「くくくく」


隣でアステリア様が腹を抱えて爆笑している。


「これからは真っ当な人間になります。リシアお姉様、アルミスお姉様、アステリア様、今後ともよろしくお願いしますね!」


「はい、、でしたら部屋案内しますね」


「ちょ、アルミス!?何言ってんの!?まさか、エリシアさんをこの家に住まわせる気!?」


「ダメですか?リシアお姉様」


エリシアが上目遣いでこっちを見てくる。


「はぁ、、アルミスが家主だからいいと思うよ」


拝啓、お母様お父様、如何お過ごしでしょうか。


私は美少女に転生ししかもルームメイトが毎日のように増え


危機感を感じています。


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