番外編 魔王の記憶
少女はいつも泣いていた。
いつも薄暗い洞窟の中で一人寂しく泣いていた。
親はいるのかと聞くが首を振る。
ある日外へ出ると少女は後ろから着いてきた。
いつの間にか懐かれ、いつも自分の後ろにいた。
それからは数百年彼女と共にすごした。
たとえ魔族から批判されても彼女だけは守り抜くと決めた。
人間というのは儚く、弱い。
しかし彼女は心が強く、すごく羨ましかった。
エルフ族を迫害していた人たちに一喝し、ある街で迫害についての講義を行いある街では魔族との共存についてを講義していた。
最初は誰一人として彼女へ賛同はしなかった。
一人、また一人と増えていくうちに彼女の意見に賛同するものは国レベルとなっていった。
彼女を称えるものからは聖女と崇められ彼女を崇拝するイーリアス教と呼ばれる宗教までできたみたいだ。
しかしどれだけ彼女が講義をしてもアポロニア教だけは決して賛同しなかった。
そしてついにアポロニア教はイーリアス教を邪教と認定しそれを崇拝するものたちを異端者扱いし始めた。
イーリアス教徒は屈しず、アポロニア教への反抗心をむき出しにした。
その結果数ヶ月に及ぶアポロニア教とイーリアス教の過激派による戦争が起きた。
彼女は危機感を募らせていった。
しまいに彼女との会う回数も減っていった。
心配だ。
彼女は心は強いがそれでも自分一人で抱え込んでしまう癖がある。
ある日、イーリアス教徒の一人がアポロニア教の神父の一人を殺害してしまったことにより事態は急変した。
アポロニア教は異端者十名もしくは聖女一人の身柄を要求してきた。
最初はイーリアス教徒も抵抗していたが家族を人質に取られたものたちが聖女を差し出すことを決めてしまったのだ。
それを止めるためアポロニア教を潰そうと動いたら彼女に眠らされてしまった。
目を覚ますといつもの朝日で目を覚ます。
何も思い出せない。
なにか大切なことを忘れているような気がする。
数百年の時が経ち、ある噂が流れてきた。
それは聖女の再来と呼ばれるものだ。
聖女という言葉に懐かしさを感じた。
思い出したのだ。
彼女はどうなったのだろうかと知り合いの魔族に聞くとどうやら彼女は処刑されたとの事だった。
それでも彼女の意思だけは消えずに残っていると言われ、彼の行いが最後の最後で報われた気がした。
噂の聖女へ会いに行くことにした。
会ってみると彼女とは違いだらしない。
しかし実力は自身よりも上だと理解した。
どことなく彼女に似ている。
聞いてみれば彼女と同じ転生者とのことだ。
二度とあの悲劇を起こさないためにも忠告しておく。
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