第4話 魔王降臨!

まだ眠たくて布団から出たくないというのにアルミスに叩き起されてしまった。


「なに?アルミス。まだ眠たいんだけど、ふぁーあ」


「そ、それが!街に魔王と名乗る者が現れて街を荒らしているのです!」


アルミスが珍しく慌てていてついつい眺めていたら街の方から轟音が鳴り響いた。


「確かに音的になんかやばそうだね」


街へと急ぐとかなり露出の高い服装をした少女(?)が食事をしていた。


しかもかなりの量で大食いというには次元が違う。


「えっと、、アルミスに街を荒らしていると言われて来たんですけどどういう状況ですか?」


「|ひょう(ほう)、きひゃまが貴様がひょのまひずひひつこの街随一のひょうけんひゃかの冒険者か


「えっと口のなかのものを無くしてから喋ってくれませんか?お行儀が悪いですよ」


ゴクリと飲み込むとこっちを向いた。


「こほん、妾は魔王のアステリア。風の噂で聞いたが貴様がこの街随一の冒険者というのは本当か?」


「そうなんですか?」


自分がこの街随一の冒険者というのは初耳だ。


自分で名乗ったことは無い。


「はい、リシアさんはこの街で一番強い人です」


アルミスが自分の事のように胸を張りながら言った。


恐らくその噂を流したのはアルミスだろう。


(余計なことを。人がせっかくこの街で平凡なスローライフを送ろうと思ったのに)


「ならば妾と勝負しろ」


「え、嫌です。というか寝ます」


「は?何を言っておるんじゃ!この魔王が遠路はるばるここまで来てやったというのに!!」


「そうですか。アルミス、その人にお茶用意してあげて」


「はい、リシアさん」


アルミスは手馴れた手つきでお茶を入れ、魔王と名乗るアステリアへ渡す。


「うむ、これは美味い、、、、って違うわ!!いや確かに美味しいけども!妾は貴様と勝負しに来たんじゃあ!!楽しくお茶飲みに来たのではないわ!!」


ゼェゼェとツッコミで疲れたのかアステリアが座る。


「はぁ、勝負しても構いませんが私はすごく寝たいので一度の魔法で勝負を決めましょう」


「良かろう」


街から出て建造物のない草原で勝負をすることになった。


審判はアルミスがすることになった。


「その前にアルミス。もし不正したりしたら一ヶ月口を聞かないからね」


本当に不正するつもりだったのかアルミスは呻きながらも分かりましたと答えた。


「えー、では試合開始!!」


意識を研ぎ澄まし、魔力の流れを感じる。


「仕掛けてこぬというのなら妾から参るぞ、【進むものを阻め、すべては土へと還る砂塵大嵐プルウィステンペスト】」


砂塵による嵐が現れ、こちらへと押し寄せる。


「【略奪ディプリヴェイション】手を翳すと魔法陣が浮かび上がり、砂塵を全て吸収し消えていった。


「なっ、、妾の最上級魔法が、、、妾のま、、」


「魔法が消失し、戦闘不能者なしの為両者引き分けとします!!」


「ふぅ、良かったぁ」



何事もなく自体は終わり、しゃがみこむ。


「な、なぜだ!妾は負けていたはずじゃ!なのに何故引き分けなのじゃっ!」


「言ったじゃないですか、一度の魔法で勝負を決めましょうって結局勝負はつかなかったじゃないですか。私の魔法はあなたの魔法を吸収しただけ」


「変わったヤツじゃ。ふん、この勝負はお預けじゃ!!」


「ってことで私寝てきていいですか?アルミスに起こされてすごく眠たいんです」


あくびをしながら尋ねる。


「何を言ってますか。リシアさん、これからみんなでパーティーです!!リシアさんとアステリア様の歓迎会です」


フィーアが戻ろうとする俺の肩を掴んで離さない。


「魔王様まで、なんでですか?」


「何を言っておる。既にアルミスには話しておるぞ?」


何を言ってんだこいつと言わんばかりの顔でこちらを見てくる魔王様。


「アルミス?私聞いてないんだけど。確かにあの家は君のだと思うけどルームメイトの私に一言くらいあってもいいんじゃないかな?」


「あ、用事思い出しました!」


アルミスが逃げるように去っていった。


「ちょ、アルミスー!」


「リシアよ、聞きたいことがあるのだがよいか?」


「構いませんけど何でしょうか?」


「何故男であることを隠しておる?」


「え?」


「え?」


え?と聞き返すと同じように返ってきた。


「な、何を言ってるんですか、魔王様ぁ。どっからどう見ても銀髪碧眼の美少女じゃないですかぁ」


髪をサラサラ〜となびかせる。


「妾は五百年生きておるからそれくらい分かる。貴様の魂と肉体が明らかに違う。恐らくあれであろう?あの何だったか。思い出せぬ、昔一度会ったことあるんじゃがぁ、、ええっと、思い出した!転生者じゃ転生者」


ここまでずばずば当てられるとは思わなかった。


「な、なんだわかるんですかぁっ!」


「五百年生きてると言ったはずじゃ。妾の昔の友人にも転生者はいた」


「いた?どうなったんですか?その人」


「アポロニア教の異端者狩りによって殺された。だから忠告しておくぞ、あまり自身の強さを過信したり無闇やたりに使うな。いつか身を滅ぼすことになる。それだけでは無い。この街も全て消える。それが嫌ならあまり力を行使するでないぞ」


魔王様はどこか悲しそうに空を見上げていた。

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