第10話 髪飾りの音

鈴、さぞかし辛かっただろうな

辰之進を呼べ



殿、どうされましたでしょうか


城下の町の男を呼ぶのだ


男とは


住んでいるものは皆だ


殿、それは


構わぬ

いいから呼べ


しかし、皆の男ですとかなり多いです

はたして集めることが出来ますでしょうか


城にいる全ての兵に命じろ

集めるようにとな



殿、全て集めましたが

城内には入りきれません


いくつかに分けるのだ



鈴、大丈夫か

気にするな


いえ、私の体はもう汚れています

殿のそばにすら行くことはできません



はい


目を閉じなさい


はい


そのままじっとしていなさい


はい


信長様

いけません


私はもう


それ以上言うな


はい


鈴の優しい肌が私に伝わってくる

悲しい鈴の気持ちは私が打ち払ってくるから

鈴はいつまでも私のそばにいてくれ


もったいないお言葉です


鈴、お前を手籠めにした男の顔は覚えているか


はい


それでは私についてきなさい


はい


城下にいる男を全て集めた

手籠めにした男を教えなさい


はい


殿

まずはこの男達です


この男達にいるか


いえ


次を呼べ



思ったほど男は多いな

次を呼べ



この男達はどうだ


どうした


いえ


様子がおかしいぞ


駄目です


なぜだ


怖いです


何が怖いのか


いえ


大丈夫だ

心配するな


怖いです


そうかわかった

鈴の気持ちが


おい、何かしでかしたものはいないか


いえ

いえ


なんだ、お前たちは様子がおかしいな


とんでもないです

私達は何もしておりません


この男達か


違いますよね


はい


そうか


じゃあ、次の男を呼べ



私ではありません


カリン


それは


殿、どうしました


私が鈴にあげた髪飾りじゃないか


いえ、たまたま道で拾っただけです


鈴、大丈夫だ

こいつ達だろ


怖いです 怖いです

あの人達は怖いです


わかった

鈴、部屋に戻っていなさい


辰之進



この者達を縄でくくれ



そこに座らせろ



おい、これは私の刀だ

だが、最近錆びてしまってな

なかなか切れないのだ

私は自らな首を切ったことが無いからな

うまく切れるかわからんが

私の大事な人を怪我した刑には丁度いいかもしれないな

首の半分までしか切れにかもしれないが

痛くはないようにしてあげよう


お許しください


鈴、もう大丈夫だ

もう、鈴を汚すものはいない

安心して今日から眠るといい


はい

今日は、一人で眠ってもよろしいでしょうか


そうか

わかった


ゆっくり休むといい



鈴、これでよかったのだろうか

私の心は闇で覆われている

首を斬るの容易い

しかし鈴の悲しみを切るの容易くない

近く戦がある

しかし、私は上手く兵達を指揮できるだろうか

鈴への想いは、いかなる国の強者たち斬ることより叶わぬ

しかし、悲しみは私の心に残るのだよ

暗い夜空に鈴の明るい笑顔が映し出せるのか

いっそのこと平民となって鈴と幸せにに暮らしたい

夢でしかすぎないな

月よ星のない暗闇の中で笑ってくれ


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