第6話 哀歌

鈴、準備はいいか

辛いが仕方がないぞ

国に詳しい者も待っている

今は夜も遅い

信長様もすでに寝ていらっしゃる

出発するのだ


わかりました

お願いがあります


なんだ


信長様の寝顔を見させてもらえませんか


わかった


少しだけだぞ


それから

少しだけ心の準備をさせて下さい


まあ、信長様も寝ているしな

いいだろう


鈴様


ゆきな様


私も手伝いましょう

実は障子の隙間から話が聞こえてきました

突然、鈴様が城からいなくなってしまったら

国のためとはいえ

信長様もたいそう苦しまれるかと思います


どうすればよろしいのでしょう


お手紙を書いたらどうでしょうか

私がそっと信長様にお渡しします


そうですね




お殿様


私は深い海に沈もうとしています

そうすれば

お殿様も私の事を探すことはできないでしょう

もう、安心して国を思う事ができます

優しい寝息が聞くことができました

これで

申し訳ありません





ゆきな

待て


はい、信長様


これはどういう意味か


実は


なんと、そうだったのか

おい

辰之進を呼べ



この手紙を見ろ


なんと、これは

殿

すぐにも探すべきです

今なら、そう遠く行ってはいないと思います


全力で探すのじゃ



殿

どこを探しても見つかりません


裏道はどうだ


詳しい者に探させております

私も同行します


辰之進様

この道の可能性が高いです


よし

探そう


はい


鈴様

お殿様は全力で探していると思います

この国をでることができれば良いのですが

そうです

変装しましょう

鈴様は男の着物を着て下さい

幸い、私は顔立ちが女性に見られることがあります

私が着物を着ます

お互い傘で顔をできるだけ隠しましょう

そして、あそこの宿屋に泊まります

おそらく、人相書きで宿屋の主人に聞くと思いますから


わかりました


辰之進様

あの宿屋にもしかして泊まっているかもしれません


そうだな

すまない、この宿にこのような人相の女はいなかったか


いえ、さきほど

男女の者が泊まりに来ましたが

顔が全く違います


そうか、わかった


鈴様、この宿にしばらく身を隠しましょう

鈴様は部屋から決して出ないで下さい


わかりました


そのうち諦めて帰るでしょう



殿

残念ながら

全力で探しましたが

どこにも見当たりませんでした

申しわけありません


そうか

鈴よ

何処に行ったのだ




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