第40話 合同訓練。 その1



「ほぉ~。」



目の前に広がる木々に太陽の光が差し込む大自然が目の前に広がっています。

なんだかんだと時間は過ぎ去り、合同訓練の当日になっていました。

久々に見た自然豊かな森を目の前にして感嘆の声を上げてしました。

20年ぶりぐらいでしょうか?



「どうしたんですか?」


「いえ。自然は良いなぁ~と思って。」


「えぇ~。虫さんが一杯で私は嫌だな。」


「自然が無いと、人間は生きていけませんよ?」


「えっ、何で?」


「えっ?」



どうも、この世界には自然破壊の概念は無いみたいです。

地球では自然破壊が害をなす事は常識でした。

しかしこの世界では文明の発達が遅い事もありますが、皮肉な事に魔物の存在によって自然が守られています。

魔物のおかげで人間の可動域・生活圏が地球に比べて狭いのです。

なので、自然が守られるという状況は皮肉が効いていますね。

もちろん、大火力魔法によって滅びる可能性もありますが、星全体の自然破壊は生半可なモノでは出来ないでしょうし、故意に破壊したい存在はいないでしょう。

・・・いないハズです。



「ひっはぁー!」

「俺の右腕が疼くぜ!!」

「自然の前に人は無力だ。」



遠くの方で“中二病”的発言が聞えます。

まぁ、15歳ですからね。

目の前のモノを見て魔物を討伐する事を考えれば、そういう症状が出ても仕方ないですね。



「これだから子供は。」


「だっさ。」


「で、ですよね~。」


「「?」」



危ないです。

私もちょっと良いなって思って発言しようとしていました。

カタリーナとジュネスの言葉にドキッとして変な言葉を発してしまいました。

少し遅ければ、私も侮蔑の眼で見られていたかもしれません。



「それにしても、凄いですね。」


「そうですね。やっぱ国軍の兵隊さん達は違いますね。」


「領兵の装備とは差があり過ぎですね。」


「仕方が無いですよ。」



私達学生の両サイドには兵隊さんが列を組んでいます。

今回の訓練には総勢10万の総軍が護衛としてついています。

しかもいつもは前線で防衛を担当している軍隊ですから、出来得る限りの装備を渡されています。

フリーア王国所属・第一防衛軍。

カブス公爵旗下の防衛軍です。

この合同訓練前にカブス公爵は進級され、防衛軍の元帥になられたそうです。


ちなみにフリーア王国には軍部がいくつかあります。


陸軍・海軍・空軍の色違い分けと防衛軍・近衛軍という目的分けの全五種類です。

それぞれに元帥が存在し、別組織として運営されています。


カブス公爵は防衛軍の元帥になられましたので、防衛軍の最高責任者となります。

防衛軍は名前が示す通りに国防を担う機関です。

【陸・海・空】軍は主に守備より攻撃を任務にします。

防衛軍・近衛軍に【陸・海・空】の三軍が居ない訳ではありません。

しかし、攻撃を担う軍部に防衛権限を与えない為の処置であり、分担が進んでいるとも言えます。


近衛軍は防衛軍の様に国全体を守る軍ではありません。

王族を守る為の軍なのです。


それぞれに目的が違う為、それぞれに責任者を置くという体勢をとっているに過ぎません。

それぞれの軍部を纏める軍部機関として軍務省があります。

その責任者は軍務卿と呼ばれます。

防衛省と役割は同じです。

政治的判断や国としての立案などを負う立場となります。

もちろん、軍部においての最高責任者は王様です。

ですが、軍務卿がその肩代わりをしたり政治的な判断をしたりします。

国が大きくなった為に整えられた組織の一つです。


軍とは独立した騎士団があります。

他には傭兵団でしょうか?


騎士団は貴族位の者達だけによって組織されたモノで、基本的には軍務省直下の街の防衛を担う存在です。

騎士団の最高責任者は騎士団長です。

騎士団に入るには騎士爵以上の貴族のみとなる為、平民が認められて騎士団に入る際は

騎士爵を授かる事になります。

貴族なら入れるという点では弱さもあります。


逆に兵士は兵役によって駆り出される平民を主軸とした兵卒か、兵役ではなく兵士を生業にした軍人を主軸とした兵卒がいます。

軍人はより高い質を問われるが、爵位は必要がありません。

フリーア王国は軍人制を採用している為、屈強な軍部と言えます。

領軍では、なかなかそうもいかず、兵役を課している所が多い様です。



「カブス公爵様旗下の第一防衛軍ですから、軍人のみで編成されていますからね。」


「国軍は軍人のみだって聞きますもんね。」



私達学生に合わせたスピードで両サイドを行軍しています。

なのに、乱れが全くありません。

無駄口も叩かない。

まさしく軍人の鏡に見えます。



「これなら安全ですね。」


「そうね。万が一はあり得そうにないわね。」


「油断大敵ですよ。」


「そうですね。気を引き締めて行きましょう。」



ペチャクチャと話をしているのも既に油断になるのかもしれません。

ただ、気配察知をずっとしていますし、目視でも周辺の異変を見逃さない様にしています。



「雨、降りそうですね。」


「野営で雨は嫌ですね。」


「そうですね。私達が向かう方では無いと良いのですが。」



大きな雨雲が山の上の方に大きく広がっています。

外にいる時の雨は本当に面倒ですからね。

もちろん、雨が降っても大丈夫な様な準備はしていますけど、降らない方が良いに決まっています。

大規模行軍になっていますから、この後が心配です。

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