第37話 会議と公爵家。


「ねぇ。今日の朝のあれ見た?」


「みたみた。鉄仮面とまで言われているシーラ王女様の顔の事でしょ?」


「そう。シーラ王女様っていつもピリッとしていてカッコいいなって思っていたけど、あんなカワイイ感じの顔になるんだね~。益々ファンになっちゃった。」


「いつも、ピリッとしている様子しか見た事ないもんねぇ。」


「私もファンクラブに入ろうかな?」



ワイワイと話している中から、シーラ姉上の話が聞えてきました。

一体何があったのでしょうか?

というか、ファンクラブがあるのですか?

驚きです!


あっでも、あの美しさなら普通でしょうか?

整った顔立ちに金髪蒼目でお腹回りはぐっと引っ込み、すらりとした長い脚に豊満な胸なのでファンクラブがあってもおかしくは無いですね。


しかし、鉄仮面というのは誉め言葉では無い気がするのですが、この世界では違うのでしょうか?

ですが、嬉しいものですね。

身内が人気者というのは。



私がそんな事を考えながら自分の席につきほどなくして担任であるクラウディア先生が入ってきました。

先生はいつも通りの感じで淡々とホームルームを終えた後、私を呼びました。



「ルシファリオ。今日は一回目の打ち合わせの日だ。ついて来い。」



打合せとは合同訓練の事で学年毎の合同訓練なので、およそ100クラスが一緒になります。

一クラスが40人ですから一学年で4000人です。

小国の軍隊レベルの規模ですね。

ですから、大事なのです。

少なくとも100人の生徒に100人の教師がいる訳ですし、そこから更に軍部からの参加者や生徒会や教師からの参加者が含まれます。



「凄い数ですね。」


「ああ。これだけ集まると流石にな。」



およそ300名の会議となっています。

面前にはベルタ学園長や副学園長に生徒役員などが並んでいます。

生徒会長の第11王子アウグスト兄上の姿も見えます。

生徒会は最高学年時にのみ在籍出来ると聞いていますので他の役員も五年生でしょう。

アウグスト兄上と目が合いましたので頭を下げます。

アウグスト兄上もうむと頷いてくれました。

その後、私は私達に振り分けられた席につきました。


ちなみにクラスは1―13です。

1-1から1-100まであるクラスは特に成績で振り分けられているという事はなくランダムらしいです。

問題児は集める傾向にあるそうなのですが、もしかしたら魔道具でクラス分けしているのかもしれませんね。



「良く集まってくれた。全て揃っているかな?・・・うむ。では始めよう。」



司会役の人でしょうか?

軍服を着ており胸には勲章が幾つもぶら下がっている50過ぎに見える年配の方が拡声器で開始の合図を出しました。



「お手元の資料を確認して頂きたい。」



ザッという音と共に紙を持つ音が聞こえます。

紙と言っても和紙の様な感じであるが、和紙ほど高級感があるモノではなく、ざらつきと色合いが綺麗では無いです。

文字は一枚一枚書いているのではなく、印が押された様な感じなので活字印刷の技術があるのかもしれないです。

この世界では新聞があるのですが、その技術を使っていると思われます。


そこには合同訓練の日程から目的などが書かれています。

その文章を司会の方が読み上げながら注釈を付けくわえて説明されます。

途中での質問を受ける事はなく、最後に質問などを受け付けるという事でしたから、中断される様な事も無く最後まで滞ることなく進みました。

説明内容も分かり易く、ほぼ理解できたと思います。


目的は集団行動の重要性を理解する事とコミュニケーションを深める事。

日程は5日間であり、初日と最終日は移動のみで間の三日間で合同訓練の実技を行なう事。

食事は自炊である事(但し初日と昼と夜。最終日の朝と昼は食事が用意される)。

魔物狩りには点数がつけられ、冒険者ギルドから派遣される魔物買い取り職員による査定がある事。

クラス単位での順位が出る事。


軍部から5師団からなる総勢50000人程の軍が派兵され陸軍大将が指揮を執る軍事演習も兼ねているのです。

学園と軍部との連携行事の一つとして毎年行われています。



「私はフリーア王国陸軍大将カブス・フォン・ベルリアン公爵である。私が率いる軍が補佐するからと言って、絶対に安全であるという保証は無い。各自クラスの引き締めをお願いする。」



スラッとしたスタイルで軍人さんというイメージよりお貴族様というイメージを抱かせるほど品がある中年男性で、少し長めのレッドヘアーにレッドアイが目に付き整った顔立ちで世の女性達から注目を浴びているのが頷ける人です。

この陸軍大将カブス公爵は私の父の弟にあたり末の弟でベルリアン公爵家を立ち上げた人でもあるのです。

私の叔父の一人にあたるわけです。

年齢は36歳だと記憶するが、どう見ても二十代後半にしか見えないですね。

あれで独身であるというのですから、世の中の不思議です。

もしかすると、後継者をつくるまいとお考えなのかもしれませんね。


フリーア王国において公爵家は増える傾向にあります。

王族が代を繰り返し引き継げばそうなります。

なので、公爵家は代の引継ぎには色々と制約があります。

歴代の公爵家は『自身の子孫繁栄では無く、王族の子孫繁栄を求めるべきである。』というのを共通認識としており、中には子孫を作らない方もいらっしゃるほどです。

また、中には公爵家の引継ぎを認められず一貴族として王家筋の貴族では無い一族として

降格する事もあります。

公爵家は他の貴族家よりも厳しい査定をされます。

貴族筆頭であり王家筋である為、求められる水準も王家に次ぐものになっています。

歴史ある王国ではどこも同じかもしれませんが、フリーアはその中でも厳しいかもしれません。


歴代の王族の中には外に国を興した方もいらっしゃいます。

それが現在のジェスター王国の王家やアスワン王国の王家です。

普通であれば公国ところなのでしょうが、国内で厳しいので国外では緩くなるのかもしれませんね。


そんな事を考えている間に会議は終わったようです。

クラウディア先生が私の方をつつきます。



「ルシファリオ。陸軍大将がお呼びだ。私と共に残れ。」


「わかりました。」



クラウディア先生はボンバイエ公爵家出身です。

ボンバイエ家は稀に続く公爵家の一つです。

だから、呼ばれているのかもしれませんね。

御用命はなんでしょうか?

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