第34話 ファフナー商会(本店)。
「ルシファリオ。武器屋・防具屋・道具屋以外に行きたい所はあるか?」
「いえ。特にはありませんよ。」
「そうか。」
「そうだ。シーラ姉上。お昼は何処かで食べましょう。」
「うむ。良いな。時間を見ながら考えよう。」
「はい。」
シーラ姉上は考え事をする様に外に顔を向けました。
王族ともなると、本来はお店に行くのもお忍びで行くか、大々的に先触れを出して行く。
そのどちらかの手段を取ります。
気軽に行けないというのが普通です。
今回はお忍びでの行動となります。
・・・まぁ、ほとんど忍べてないのですが。
だいたいバレますよね。
シーラ姉上は有名人ですし、綺麗ですから男なら目が行きます。
隠しようがないというモノでしょう。
フードを深くかぶれば良いのかも知れませんけど、悪い事をする訳では無いですし、護衛が隠れてついて来ているので問題はないです。
迷惑が掛かるという意味では、申し訳ないと思いますけど。
そして着いたのは王都フリーダムでも一・二を争う大店であるファフナー商会でした。
ファフナー商会は隣国のジェスター王国やアスワン王国にも広げている商会です。
フリーア王国の王族と同じ血筋が治めるジェスター王国とアスワン王国は三国同盟を成しており、このロードスト大陸でも大きな力を持った有数の王家であり国となっています。
この三国に店を持つファフナー商会は我らフリーア王家と密接な関係を築いている商会であるのです。
ある意味でフリーア王家ご用達の大店であり、フリーア王家と同じく歴史のある商会なのです。
「立派な建物ですね。」
「うむ。歴史ある商会だから権威もあるのだろう。」
私とシーア姉上はアデーレさんとリエンさんを従えて商会へと入ります。
明治・大正時代に建てられた銀行の様な感じで重厚感のある五階建てのブロックで造られた建物です。
それにガラス面があり、ショーウインドまでありますね。
「こんな感じでは防犯面に問題は無いのでしょうか?」
「うむ。そこはやはり力のある商会だから抑止力もあるであろうし、魔法の防壁も働いているようだぞ。」
シーラ姉上がガラスをコンコンつつくと波紋が広がりました。
コンコンという音がするのに、水が広がる波紋の様な物が浮かぶ様は神秘的な感じがします。
「いらっしゃいませ。」
店の中に入ると店員さんの声が聞えました。
教育が行き届いている証拠ですね。
店の中はガラスをすり抜ける陽射しによって明るく保たれています。
背の高い棚は置かれておらず低い棚が沢山並んでいます。
そのおかげもあり空間が明るくなっているのでしょう。
魔法の効果もあるのかもしれません。
「ルシファリオ。あっちが武器だ。見に行こう。」
「はい。」
シーラ姉上の案内に従って商会の中をウロウロと見て回りました。
武器や防具などは父上から下賜された品々があるので必要は無いのですが、シーラ姉上が武器や防具が好きな事を知っているので見て回る事にしたのです。
シーラ姉上はあれやこれやと武器や防具の説明をしてくれました。
その時のシーラ姉上の顔は輝いていました。
人は好きなモノの事になると、変わりますね。
シーラ姉上にとってはそれが武器や防具であるという事です。
武器や防具を一通り見て終わった所で、店員さんが話しかけてきました。
「ようこそお越しくださいました。」
「うむ。邪魔している。すまんな店長。」
「いえいえ。いつもお世話になっております。ごゆっくりとお楽しみください。」
「うむ。感謝する。」
店員さんはここ本店の店長であるミンス・ファフナーさんで、ファフナー家の人です。
ミンスさんは城に近い本店の店長という事もあり、よくお城へと顔を出されます。
なので、私達の事も良く知っています。
「流石ですね。」
「うむ。名前を出さない辺り慣れているな。」
「そうですね。王家ご用達の商会の本店の店長ですから、気が利くのでしょうね。」
「うむ。ルシファリオも良く分かっているではないか。ああいう気遣いが出来る者が優秀な者であろうよ。」
シーラ姉上の評価も高いですね。
それに顔をイケメンです。
25歳ぐらいでしょうか?
私の前世の常識をあてはめるなら、かなりのエリートですね。
将来有望な若手ですね。
その後、道具や薬品を見て回りいくつかの野営に必要だと思える品々を購入しました。
「こんなモノかな?」
「うむ。それ位で良いだろう。」
「はい。ではお昼は何処にしますか?」
「そ、それは考えてある。ルシファリオが良いのであればだが。」
「シーラ姉上が決めてくれた所であれば、私は構いません。」
「ほ、本当か?」
「はい。」
「ふむふむ。では早速、行こうではないか。リエン。行き場所は分かっておるな?」
「もちろんでございます。御者には既に伝えております。」
「うむ。ではルシファリオ。行こう。」
「はい。」
ニコニコなシーラ姉上に手を引っ張られながら、店を後にします。
アデーレさんが後ろでお店の人と軽く打合せをしているのが見えました。
「シーラ姉上。どうしたのですか?」
「?すまない。少し、浮かれてしまった様だ。」
顔を真っ赤にして告白するシーラ姉上はとても眩しく見えました。
シーラ姉上でも、浮かれてしまう時もあるのですね。
それほど人気のお店なのでしょうか?
「そうでしたか。シーラ姉上が我を忘れる程であるのなら、さぞかし人気のお店なのでしょうね。」
「うむ。人気店ではあるな。あははは。」
少し、困った顔になったシーラ姉上はポリポリと頭を掻きました。
「お待たせしました。」
「いや。問題ない。」
「アデーレ。ありがとう。」
アデーレさんが店から出てきて馬車に乗り込んで直ぐに、私達の乗った馬車は発進しました。
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