第33話 ある日の休日。
「おはよう。」
「おはようございます。」
私は気持ちよく目覚め部屋を出た所で、アデーレさんに会いました。
挨拶をするというのは気持ちが良いモノですね。
そのままお風呂に向かいます。
朝風呂は気持ちよく、贅沢な行為の一つですが、これだけは止められません。
長く入る訳では無く、寝起きにスッキリする為の行為なのです。
お風呂から出ると、着替えが用意されていました。
着せ替え人形の様に服を着せられるのが普通だと思うかもしれませんが、ここではそうでもありません。
もちろん儀礼用の服を着る時などは、アデーレさん達が着させてくれたり身だしなみを整えたりしてくれますが、それ以外の時は小さい子供ではない限り自分で着ます。
アデーレさんが用意してくれている運動しやすい服に着替えると外へ向かいます。
「ルシ、ルシファリオ。おはよう。」
「シーラ姉上。おはようございます。」
今日はシーラ姉上と共に朝の訓練をする事になっていました。
「大丈夫だとは思うが、体調はどうだ?」
「問題ありません。」
「そうか。もし異変を感じたら私に言うのだぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
「うむ。」
シーラ姉上は私の体を気遣ってくれているのでしょう。
昨日、模擬戦と一騎打ちをした事をご存知で、私の部屋で待ってくれていたシーラ姉上は私が元気な姿で戻って来たのを確認すると、ふぅーと息を吐きました。
『先生達も無茶をさせるものだ。けしからん!』
そう言って飛び出そうとするのを一生懸命に私が止めるというエピソードがありましたが、それも私の事を心配してくれたからでしょう。
普通に考えれば、模擬戦後に直ぐに一騎打ちなどあり得ませんよね。
しかも相手は勇者ですからね。
でも、シーラ姉上に気にしてもらえるのは嬉しいですね。
「どうした?ルシファリオ?」
「いえ。なんでもありません。すいません。始めましょう。」
いけません。
思い出して嬉しくてニヤついていたのかもしれません。
シーラ姉上が少しモジモジしています。
頭を切り替えて朝練に集中しなければ。
◇◇◇◆◇◇◇
その後はいつものルーティンになっている走り込みと素振りをした後に、今日はシーラ姉上と実戦形式の一対一をして終了しました。
「シーラ姉上。一緒に朝ご飯は如何ですか?」
「うむ。良いだろう。一緒に食べよう。」
「では、先にお風呂で汗を流しましょう。私の部屋が近いので、お先にどうぞ。」
「う、うむ。お言葉に甘えよう。」
私達は揃って私のルームに戻り、シーラ姉上の部屋へと使いを出しました。
シーラ姉上はお風呂へと入って行きました。
「お疲れ様です。」
「ありがとう。」
おしぼりと冷たい飲み物をアデーレさんが用意してくれます。
私は中央にあるリビングルームのソファに座り、おしぼりで汗を拭きつつ出してもらった飲み物を飲みました。
「ルシファリオ様。今よろしいですか?」
「もちろん。」
「では今日のご予定を。」
エルヴィンからの今日のスケジュールや報告を聞き頭の中に入れていきます。
今日は学園の休みの日です。
いつもは公務があったりするのですが、今日は定期的におこなわれる家族の夕食会以外は特に無いようですね。
報告は公務に関わる事と、貴族社会に関わる事等多岐に渡ります。
そうこうしている内に、シーラ姉上の専属メイドがやってきています。
「ルシファリオ様。おはようございます。」
「リエン。おはよう。いつもありがとう。」
「いえ。滅相もありません。」
それの対応はアデーレさんがしてくれますが、挨拶はちゃんとします。
リエンはシーラ姉上が小さい時からの専属メイドで長い付き合いという事もあり顔を憶えています。
リエンはそのままお風呂場へと消えました。
その後、シーラ姉上が出てくるまでエルヴィンの報告は続きました。
貴族社会は情報が命です。
情報を把握するのも王族の務めです。
確かな情報から眉唾な噂まで多岐に渡る為、結構な量になってしまうのは仕方がない事です。
「ルシフォリオ。ありがとう。」
「はい。直ぐに出てきますね。」
「ゆっくりでいいぞ。」
「はい。アデーレ、よろしく。」
「かしこまりました。」
私は素早く体の汚れと汗を落し、湯を浴び、浴槽につかりホッとしてお風呂をでます。
部屋を出ると既に朝食の準備が進んでいます。
柔らかそうなパンにゆで卵、ベーコンの野菜包みにチーズ、サラダにヨーグルト、そしてアイスに果物の盛り合わせ、ミルクに果物のジュースにと食卓に並んでいます。
「こんなに食べるのですか?」
「ああ、リエンは初めてだったね。ここはルシファリオの発案で皆と一緒に食事をするのだよ。」
「えっ?」
「だから、リエンも座りなさい。」
「しかし、そういう訳には。」
「良いから。ただし、ビエルンには内緒だぞ?」
「は、はい。」
「準備は出来たかな?では皆も席に着いて頂きましょう。」
シーラ姉上の説得が上手くいった事を確認して声をかけます。
全員が着席したのを確認して、食事の前の祈りをします。
「・・・いただきます。」
「「「「「いただきます。」」」」」
リエンさんも嬉しそうな顔で声を出していました。
王族と一緒に食べるとは不敬です!という意見もあります。
ですが、私は一緒に食べたい。
私は王族かもしれませんが、ただの王子の一人でしかありません。
それに皆で食べる方が美味しいですからね。
「で、ルシファリオ。今日は何をするんだい?」
「特に決めて無いですね。ただ次回の実地訓練の準備はしておきたいですね。」
「準備か。」
シーラ姉上は顎に手をやり考え込んでいる様です。
すると横からリエンさんがシーラ姉上に何事かを言っています。
「うむ。そうだな。それが良い。ルシファリオ。一緒に街に出るか?」
「えっと、良いのですか?」
「ああ。い、一緒に武器屋や防具屋を見て回ろう。」
「ありがとうございます。」
こうして、私の今日の予定が決まったのだった。
周りの皆が微笑ましいモノを見る様な笑顔になっている。
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