第32話 模擬戦の終了。
私は・・・諦めました。
カチャリという音を立て鞘にロングソードをしまいます。
「「「「「「おぉぉぉおぉぉぉ!」」」」」」
重たい空気から一遍、大歓声が第一闘技場に響き渡ります。
私はホッと胸をなで下ろして先生たちの方へ顔を向けます。
「すげぇ!」
「今の見えたか?」
「いや。見えなかった!」
「やべぇ。これは勝てないわぁ~。」
「ないわぁ~。」
「ちょっと本当に同い年なの?」
「王族ってみなこうなの?」
第一闘技場は驚きや感想が飛び交います。
そんな中で担任のクラウディア先生と副担当のベーク先生は私に歩み寄ってきました。
「一瞬でしたね。まさしくこれが瞬殺というやつですね。」
「そうですね。これほどとは思いませんでした。」
「・・・はい。」
私も予想外の展開に諦めたのですが、人に言われると動揺しますね。
「ルシファリオ。私が間違っていたよ。」
「はい?」
「君は本物だ。うむ。私も本気で君と向き合おう。」
「えっと・・・。」
「ほほほ。儂も間違っておったみたいじゃ。すまぬ。」
担任のクラウディア先生と副担任のベーク先生が頭を下げました。
「先生方。おやめください。」
そんなやり取りを見たクラスメイト達も驚きの顔になり見守っています。
こういう事で視線を集めたくはありませんね。
私が戸惑ってしまいます。
そこへ防護膜が解かれたブラームス君が飛んできました。
「すまねぇ!暴言の数々許してくれ・・いや許してください!皆も本当にごめん!調子に乗ってた!!」
「いや、土下座する事のものではありませんよ。模擬戦とういう戦いだったのですから。」
「いいや。関係ない!俺が王族であるルシファリオを・・・いやルシフェリオ様に妬みを持っていたのは間違いないんだ。本当にすまねぇ。」
「「「「すいませんでした!」」」」
三人の謝罪につられる様に、ブラームス君の仲間達も頭を下げてきます。
どういう事でしょうか?
「ふむ。お主らは悪くはない。全ては儂の所為じゃ。」
「いや、しかし。」
「どういう事でしょうか?」
「実はの、ルシファリオ君の点数があまりにも異常な点数だったので儂らが怪しんだのじゃ。それでクラウディア先生やブラームス君達を焚きつけて敵対する様に仕向けたのじゃよ。謝るならこの格好のままでは駄目じゃな。」
副担任のベーク先生は説明を終えると、顔に手をあて顔を引っ張りました。
これは、もしかしてあのル○ン○世の・・・。
ベリベリという音と共に剥がれました。
「学園長?!」
「いかにもそうじゃ。儂はこのシード学園の学園長じゃ。本当にすまなかった。」
何という事でしょう。
副担任のベーク先生はベルタ学園長でした。
どうやら、私の入学試験を受け持った教官が満点どころか、それを越える点数を付けて提出した上に、私を取り合う様な事までしたというのです。
それに疑問をもったベルタ学園長が策を講じて調べる事にしたというのです。
「じゃが、まさか担任のクラウディア先生があそこまでブラームス君達に肩入れした指導をするとは考えておらんかったがの。」
「申し訳ありません。」
高身長で体格のいいクラウディア先生が今は蟻のように小さくなっています。
予想外の肩入れ指導とは、戦争で使われる様な罠の数々。
厳しい訓練をブラームス君達にのみ課したと言います。
「どうりで、殺すつもりの罠だった訳ですね。」
「本当にすまない。」
それもこの訓練施設ありきの策ではありますから、命の危険は無かったのですが、入学したての学生の罠というレベルを遥かに超えた代物だったのも頷けます。
更に、私が王子という王族であった事が色眼鏡をつけてしまう疑いを持たれた様です。
「なんかすいません。私が入学したばかりに。」
「いやいや。お主が悪いわけでは無い。儂が部下を信じれず疑った所為なのじゃ。こちらが悪くともルシファリオ君に一切の問題は無い。ただ、ルシファリオ君が特別なだけじゃ。どうじゃろうか?儂に免じて赦してはくれまいか?」
「いや。そもそも何も思っていませんよ。赦すとか赦さないとかではありません。これは戦いだったのです。だから気にしないでください。」
「ふむ。そうか。ルシファリオ君がそう言うのなら良いじゃろう。皆も良いな?」
これはどうも今回の模擬戦でクラス内の分裂を避ける為の手段として考えているのではないでしょうか?
貴族・王族と平民ではやはり色々と問題がありますからね。
貴族の数名が面白くないという顔をしていましたが、私の返答と学園長の言葉で仕方ないという顔になっていましたからそういう事でしょう。
ちょっと驚きが多い模擬戦の最後になってしまいましたね。
しかし、あの学園長の変身はいったいどうなっているのでしょうか?
背丈も違うし格好も違います。
まさか、ル○ン○世の技術をこの異世界に来て目にする事になるとは思いませんでした。
「これで、益々我が学園も発展できそうじゃ。クラウディア先生、実地訓練の成果を楽しみにしておるぞ。では儂は一足先に戻る。」
「はい!ありがとうございました!!」
クラウディア先生の綺麗な45度の礼にひらひらと手を振りさっていくベルタ学園長。
そうです。
クラス対抗となる実地訓練です。
デリーハ大森林とよばれる場所に入り、魔物狩りをするというモノです。
今回の模擬戦は戦争形式でしたが、集団での魔物狩りが合宿のテーマになります。
「クラス代表はルシファリオ君で問題ないな?」
「「「「「おう!」」」」」
「やったるぞ!」
「俺達のクラスが一番になるぞ!!」
あちらこちらから、やる気満々の声があがります。
「では情報集めから徹底してやりましょう。」
「「「「げぇ!」」」」
「どういう事?」
私のチームだった人達はとても嫌そうな顔になります。
ブラームス君達のチームの人達は疑問符を浮かべています。
私はその様子をみて笑い声をあげました。
楽しい時間をありがとうございます。
神※※※※※様に感謝を。
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