第30話 模擬戦 その7



「彼は、ブラームスはまだまだ未熟なのです。お許しを。」


「クラウディア先生。そんな未熟者が代表にですか?何をそんなに焦っておられるのですかな?」


「うっ!」


「まぁ良いでしょう。ところでルシファリオ君。ブラームス君がこう言っています。一対一での勝負をしてみませんか?クラス代表を賭けて。」



それをしたら意味無いのでは?と思いましたが、どうもベーク先生にはお考えがある様に見受けられました。



「ルシファリオ様。受ける必要なんて無いですよ。」


「そうですよ。そもそも模擬戦中にも戦って勝っているんですから。」



カタリーナとジュネスが私に近づき言ってくれる内容は確かにごもっともと思える言葉です。


しかし、納得していない人を放置していては集団戦においてよろしくありません。



「わかりました。良いですよ。」


「うむ。素晴らしい。では早速ルシファリオ君対ブラームス君の一騎打ちを致しましょう。」



あちゃーという顔の私のチームメンバーと起死回生の挽回チャンスと思うブラームス君のチームメンバー。


私は負けるつもりが無いのですが、どうも負ける可能性があると思われたみたいですね。


ブラームス君にいたっては、もう勝ったでいるようです。



「一対一なら俺の方が強い!もらった!!」



ブラームス君のチームの数名が頑張ってと応援しますが、苦々しい顔をする人の方が多い気がします。



「本当に良いんですか?」


「何がです?」


「いえ。勝ちが決まっているのに、それが覆る可能性があるんですよ?」


「あぁ、そうですね。可能性はありますね。」


「だったら!」


「いえ。可能性はありますよね。例えそれが1%でも。」


「えっ?」


「カタリーナ。ルシフェリオ様には見えているのよ。」


「何を・・・本当に?」



私はそれに言葉で返す事はしませんでしたが、笑顔で頷きました。



「では、第一闘技場に行こうかの。皆の者ついて参れ。」



副担任のベーク先生はそう言って歩き出しました。


クラウディア先生は後を追う様について行きます。


どうも、担任のクラウディア先生より副担任のベーク先生の方が権力を持っている様ですね。


私達生徒も先生たちについて移動します。


この訓練場内に併設されている第一闘技場は王都内にある闘技場を模した造りになっています。


中央に四角いリングがあり、それを中心にした円形のひらけた空間があり、その外側に観客席が設けられています。


もちろん訓練が主体の会場なので王都内の闘技場よりも小さくコンパクトにまとまっていますが、リング自体の大きさは同じです。


下見に来た事があるので私達のチームメンバーはさほど驚いていませんが、ブラームス君のチームメンバーはかなり驚きが強いようです。


私とブラームス君は第一闘技場にある更衣室へ入着替えます。


しっかりと荷物は運ばれており、スムーズに着替える事が出来ました。


第一闘技場に戻るとリングサイドにクラスメイト達が立って待っていました。



「では、ルシファリオ君とブラームス君はリングへ。」



副担任のベーク先生の指示に従い、私とブラームス君はリングへと上がります。


リングは1メートルぐらいの高さがあり、石造りの様です。


それにしても真っすぐで綺麗な断面をしている事から、石の切り出し技術が高い事がわかりますね。


私がペタペタとリングを触っていると、不思議なモノを見る様な目が突き刺さります。



「すいません。つい気になってしまって。」


「うむ。では、説明をしよう。この空間も先ほどの訓練場と同じく、怪我は追わない仕組みが取られている。なので、安心して本気で戦ってくれてよい。」



ここも訓練場と同じような仕組みが出来ているそうです。


本当に不思議空間ですね。


ゲームの世界をリアルに再現した様な感じでしょうか?


ただし、失った技術の一つに数えられます。


で、何故ここの訓練施設にあるのか?


昔からある施設を改造しているというのです。


今は魔法石さえ交換をちゃんとすれば使えるモノなのだそうです。


そもそもこれほどの設備をもった学園って・・・と思うのは私だけなのでしょうか?


昔からあるからあって当たり前の施設になっているのでビックリです。


この施設を造れる存在は今のこの世界には居ないのが現状で、出来る事は修理が出来る程度だそうです。



「両者とも準備はよいかな?」


「はい。」

「おう!」



リング中央に向かいます。


ブラームス君はかなり余裕がある様子です。


私が弱いと本気で思っている節がありますね。


私が計測した感じでは、私が負ける要素を感じる事は無かったのですが。


とは言え、相手は勇者の称号を持つ存在ですから油断はできませんね。


後悔はしたくはありませんから。


ブラームス君は両手剣を持っています。


バスタードソードですね。


そして先ほどとは違い、プレートメイルを着込んでいます。


似合いますね。


私は片手剣のロングソードです。


盾はありませんし、先ほどと同じく皮製の鎧です。


個の姿だとどちらが王子か分かりませんね。


彼の方が王子っぽいですね。



「では、始め!」



私はブラームス君との距離を一気に詰めて横薙ぎに一閃しました。


あれ?この感触は・・・。



『ビー!』



音と共にブラームス君の身体が保護膜に包まれていきました。



「・・・。」



この空気、どうしましょう?

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