第29話 模擬戦 その6



「では、頼みますね。もう奇襲はあり得ませんから、そこは安心してください。」


「わかりました。」



合図をした後、アブレア君の班が戻ってきました。


アブレア君を筆頭とした三人にこの本陣を護って貰う事になっていました。


残り二人は念のために平原で待機し見張りをしてもらう予定です。


私達の班は、敵陣への攻めに向かう為、山を下ります。


なぜこうも私達は動き回っているのか?


それは、私達の班がチームの中で圧倒的に強いからです。


そして、圧倒的勝利を手に入れる為でもあります。


山を下り草原を抜け、平原を通り草原を越えて池のエリアに到着しました。



「どうですか?」


「予想通り、手強いですね。」



今の私達は池から離れた身を隠せる場所に居ますが、ここより先の池の周辺は見晴しがよく、守り易く攻めにくい形になっています。


そして更に敵側の守備隊には水属性の得意なメンバーで構成されています。


池に水がある以上はどうしても水の影響をもろに受けてしまいます。



「で、あれは試してみましたか?」


「はい。」



ニヤリと自信満々な顔を覗かせるデイトナさんは、私の指示通りにテストをしてくれたみたいです。



「それなら、作戦は遂行できそうですね?」


「ええ。お持ちしておりました。」


「では、カタリーナ。ジュネス。グレーテ。デューク。四人はデイトナさんと合流してください。逆にデイトナさんの班員は私の指揮下に。」


「「「「はい!」」」」


「では、デイトナさんよろしく頼みます。」


「かしこまりました。」


「アブレア君。敵の動きは問題ありませんか?」


「はい。大丈夫です。」


「では始めましょう。」



◇◇◇◆◇◇◇



30分後に決着はついた。



『ビー!模擬戦終了!』


「「「「やったぁ!!」」」」



私達は勝利を手に入れました。


完全勝利です。



『お疲れ様でした。ルシファリオ軍の勝利。お見事です。では皆さんは汚れを落とし第一控室にお集まりください。』



私達はこの訓練場に設置されたお風呂場で汗をと汚れを流し制服へと着替えました。



「ルシファリオ様。最後まで上手く行きましたね。」


「そうですね。」


「あそこまで、ルシファリオ様の予定通りに事が進むとは思いませんでした。」


「全てが予定通りでは無かったでしょ?」


「いえ。全て対処出来るレベルで予定通りだったではないですか?」


「そうですよ。これが情報の凄さなのですね?」



皆が私を囲み色々と言ってくれます。


どうやら情報の重要性を実感してくれたみたいです。


私は一呼吸置き、皆の眼を順番に見つめて言いました。



「それは間違いありません。」



◇◇◇◆◇◇◇



私達はあの後、正面から弓や魔法などの絵案距離攻撃をしました。


アリソンさん率いる守備隊は水魔法を利用した反撃を私達に向けて放ってきましたが、遠方からの攻撃はお互いに致命傷にならず決定打に欠けました。


その代わりに派手にやり合いました。


行きつく暇を与えずに攻撃を繰り返した結果、アリソンさん達は自分達に近づく存在に気がつく事は出来ませんでした。



「なっ?!」


「どうやって?」



激しい攻撃を受けている中で後ろから襲撃されるとは思っていなかったのでしょう。


アリソンさん達はなすすべなく、抵抗らしい抵抗も出来ずに襲撃者達によって討伐されてしまいました。


襲撃者のメンバーはデイトナさんを筆頭としたカタリーナとジュネスとグレーテとデュークの五人です。


彼等はデイトナさんの得意とする風魔法を利用して水中を移動し、アリソンさん達の裏に到達し襲撃をしたのです。


私がそのメンバーに入らなかったのは、正面からの攻撃を派手にするのと一緒で目立つ事で注目を集める事とメンバーの不在を感じさせない事を目的としたからです。


こうして襲撃が成功し、ブラームス君達全員を退場に追い込み、敵の陣地を落とす事に成功したという訳です。


私達が指定された第一控室に入いり少ししてからブラームス君達が入ってきました。


ブラームス君達は見るからに肩を落とし、意気消沈しています。



「揃ったようじゃな。」



副担任のベーク先生が室内を見回し私達の前へと進んできました。


隣には担任のクラウディア先生も居ます。



「模擬戦をここに終了とする。勝利チームはルシファリオチーム。よってこのクラスの代表はルシファリオとする。」


「ちょっと、待ってくれ!」


「なんじゃブラームス君?」


「あんな卑怯な手段での勝利なんて俺は認めねぇ!」



キッとした視線を私に向けたブラームス君の言葉にブラームス君の仲間が同意お言葉を漏らす。



「ふむ。卑怯とな?何が卑怯だったのかの?」


「アンタも見ただろう?絡めてばかりでまともに戦ってもいねぇ。俺は自分より強い奴じゃないと認めれねぇ。」


「ほぉ。じゃが負けは負けではなかったかのぉ?それにお主は早い段階で退場になっておったであろう?」


「ぐっ!でも俺は一対一で負けた訳じゃない!足手まといが居なければ負けてない!」


「「「くっ!」」」



う~ん。


集団戦と個人戦の区別がつかないのでしょうか?


あれ?


副担任が悪い顔になっている?


何か企んでいるのでしょうか?


その顔を見て担任のクラウディア先生が顔を青くしているのは気の所為でしょうか?



「たしかに、勇者ともなるとそう言いたくもなるかのぉ。」



ちらりと私の顔を見る副担任のベーク先生。



「お待ちください!学・・・ベーク先生!」



ギロリと副担任のベーク先生は担任のクラウディア先生を睨みます。


気をされそうになりつつも、担任のクラウディア先生は続けました。

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