第26話 模擬戦 その3
私は罠や伏兵が居る事を承知しながらも森へと入りました。
私の役割は【○○の勇者】の称号を持つブラームス君を拠点に戻さない為です。
あのスペシャルギフトはとても厄介な代物です。
泉には水魔法や水精霊魔法を得意とするメンバーが揃っているハズです。
島の中央に陣取っているハズなので、彼等に合流されるのはあまり良い状況とは言えません。
その為、私がこうしてブラームス君を煽りながら表に立つ作戦なのです。
彼の性格からして直ぐに姿を現す事でしょう。
罠のおよその位置に検討を付けてゆっくりとですがしっかりと進んでいきます。
罠にはまっていないとは言え、罠が巧妙でありかなりのダメージを負わす事の出来るモノであるのは間違いなさそうです。
先ほども解除する為に発動させた罠は魔法罠でしたし、その前は串刺しにするような罠が仕掛けられていました。
担任のクラウディア先生のアドバイスなのでしょうか?
入学したての学生が作れるようなシロモノではない気がします。
たしかに罠作成スキルを持つ存在はいましたが、狩りなどに使用する罠ではなく戦争で使用するようなモノばかりでした。
罠解除のスキルや能力を持っている訳ではありませんし、特別な第六感がある訳では無いので、罠を設置するというならと予測で動いているだけですから更に注意が必要かもしれませんね。
「あっ。」
そう思っている所で引っ掛かるとは注意力が足りませんね。
ピンと張られた透明な紐の様な物に掛かってしまいました。
ヒュンという音と共に複数の矢が私を目掛けて飛んできました。
私はそれらを躱して横に木に隠れる様に飛びのくと何かを踏み抜きました。
「やば。」
私がそう呟くと、私の下から大きな爆発が起こりました。
私の事ながら・・・駄目ですね。
これが戦場なら命を落とす場面ですね。
「やったか?」
「王子が一人で過信して飛び出てくるからだぜ。」
そんな会話が聞えます。
私は息を潜めていると私の元にブラームス君達が向かってきました。
これはチャンスですね。
私はブラームス君達の背後から強襲しました。
一人を切り伏せて倒すとブラームス君達は驚きの声を上げます。
「なっ?」
「無傷かよ?!」
私は爆発の威力を利用し咄嗟に上に飛び上がり木の枝に乗り倒れる間に近くの木に飛びのき、難を逃れていたのです。
『ビー!ミチェル君、ドリアナ君、カリトロ君が戦闘不能判定!退場!』
「ちっ!」
流石に三人を倒す間にブラームス君は体勢を整えました。
残るは五名です。
ここにはブラームス君の班ともう一班がいました。
多対一という状況で正面から戦うという状況は基本的に回避しますよね。
「ミチェルがやられた。ミチェル班は俺の班に合流。王子を撃退するぞ!」
「「「おう!!」」」
よし。
私は魔法上空に打ち上げると共にその場からの退避を開始します。
「逃げるつもりか?逃がすかよ!!追撃するぞ!!」
「「「おう!」」」
ブラームス君の宣言にブラームス君の仲間が反応して追いかけてきます。
彼等に追いつかれそうになりながら、逃亡を続けます。
森を抜け草原に突っ込み、平原を抜け、また草原に突っ込み森へと向かいます。
その間に剣先が何度か私に斬りつけられましたが、それらは剣を使って避けたり、身を交わしたりしてやり過ごしながら森の中へと足を踏み入れました。
森の中央部まで来ると少しの距離をとる様に飛びのきました。
「?」
ブラームス君は気がついた様ですが、もう遅いです。
私の後方や周辺から魔法や矢が次々に放たれて彼等を襲います。
「くそおぉぉぉ!」
ブラームス君は悪態をつきながら魔法や矢を避けますが、周りの仲間は次々放たれた魔法と矢にダメージを受けています。
「殲滅!」
私はそう言って掉尾出します。
もちろんブラームス君に向かっての突撃です。
「くそ!卑怯な!!」
そんな事を言うブラームス君に対して何も言わず剣を振り抜きます。
ブラームス君は私の剣を自分の剣で受け止めましたが、勢いに負けて片膝をつきます。
私は辺りから『ビー!』という音が聞こえてくるのを耳にしながら力を込めました。
それまで受け止めていたブラームス君でしたが、更に体制を崩しました。
そこにすかさず、武技を叩き込みます。
『ビー!ブラームス君は戦闘不能判定!退場!』
その音が会場に響くと、周りの決着がついた様でした。
「殲滅完了!」
無事に仲間をやられる事もなく、ブラームス君を倒す事が出来ました。
正面からの突破ではありませんが、これは戦いです。
負ける事はもちろんの事、こちらお被害が圧倒的に少ない事を目指しているのでこれで良いのです。
これで二班分の敵を倒した事になります。
残るは二班です。
「こちらに被害は出ていませんよね?」
「はい。今のところ出ていません。」
小さい怪我等はあるようですが、退場者は出ていない事がカタリーナの返事とダクトア君の頷きで確認出来ました。
「では、見張りを残して一度、陣地へ帰還しましょう。」
私の言葉を合図に魔法が上空へ打たれます。
私達は自身の陣地へと足を向けました。
「順調ですね。」
「ええ。ですが、まだまだ油断は出来ませんよ。」
「ルシファリオ様は完璧主義者なのですか?」
「いいえ。完全勝利以外は認められないだけですよ。」
「それを完璧主義者と呼ぶのでは?」
「えっ?」
そうなのでしょうか?
私はそう思っていませんでしたが、周りから見ると完璧主義者に見えるのですかね?
少しの驚きを持ちながら、急いで山を登りました。
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