第25話 模擬戦 その2


私の前に立ちカタリーナ達三人が抜刀しています。


ブラームス君達も戦闘準備は出来ている様です。


私は黙って少し後ろに動きました。



「あれ?王子は戦わないのかな?」



さらに挑発をしようというのでしょうか?



「ふん。アンタ達なんて私達だけで十分よ。」



カタリーナはそう答えると、ブラームス君達に向かって斬りかかります。


それに続いてグレーテとデュークも同じ様に飛び掛かっていきます。


カタリーナ達の剣戟に対してブラームス君達も三人が対抗しています。


カタリーナ達に敵わないまでもそれなりに防いで見せる敵の三人の動きは洗礼されたモノはありませんが、ステータスで補っている様でしっかりとカタリーナ達に食らいついていますね。


なかなか手強い相手ですね。


やはり情報から予測できていた通りこれはブラームス君の【○○の勇者】の称号の影響ですかね。


彼のその称号は一般的なギフトと違いスペシャルギフトと呼ばれる類のモノです。


ギフトとは神様からの贈り物と呼ばれていますが、その中でも際立って効果が高いモノをスペシャルギフトと呼びます。


中でも勇者系のスペシャルギフトは抜群に凄いモノです。


仲間のステータスを2倍にする効果があると言われています。


【○○の勇者】はどんな名前が付いているのか、残念ながら情報にありませんでしたが、勇者の称号を持っているのは知っていました。


ちなみに、勇者系スペシャルギフトは王族から出たという話は聞いた事がありません。


平民の方が数は圧倒的に多いのでそうなるのでしょうが、不思議な話ではありますね。


そんな事よりもブラームス君が動かない方が私は不思議です。


仲間を信じているのでしょうか?


それとも何か考えがあるのでしょうか?


ここは制圧を急ぐ事は無いという事でしょうか?


では、プラン変更をしましょう。


私は上空に向かって火属性魔法を放ちました。


上空30メートルぐらいで破裂したファイアーボールは花火の様に大きな音を立て破裂しました。


それに気がついたカタリーナ達は相手をそれぞれ中心地から外へと押しやります。


一つの空間が中心に出来ました。


私はそこを突っ切りブラームス君ともう一人に向かって斬撃をお見舞しました。



「ぐっ!」



予想外だったのか、ブラームス君の横に立っていた子はぶっ飛びHPゲージが無くなり戦闘不能になりました。


もちろん切り傷はありません。


この訓練場では、各人に魔法の防護幕が張られており、その不可視の防護幕に攻撃が入ると、HPが消費されます。


そのHPは各人の本来のHPに比例しており、HPがゼロになると防護幕が固まり戦闘不能状態になります。



『ビー!ゼブラ君は戦闘不能判定!退場!』



自動音声の様な感じの声が訓練場中に響き渡りました。


そのままの勢いでブラームス君にも攻撃を繰り出したのですが、しっかりと受け止められました。



「ちっ!一旦引くぞ!」



「「「はい!」」」



ブラームス君が苦い顔になると指示を出し、班員が返事をしましたが、そう簡単に行くと思いますか?


私をチラッとみたカタリーナ達が頷くとそれぞれ動くスピードが上がりました。



「なっ!」



「早い!!」



三人の内、二人はそれに反応できたようですが、一人は反応できずにグレーテの相手をしていた子が防護幕にくるまれました。



『ビー。ドルパン君は戦闘不能判定!退場!』



「なっ!くそ!」



それを見てブラームス君が舌打ちした後にブラームス君から剣技の発動を感じました。



「退避!」



私の言葉を聞いてカタリーナとデュークが下がってくれましたが飛びのいた場所には大きな抉られた穴が出来ていました。



「さぁ。引くぞ!」



「「はい!」」



ブラームス君達は二人の退場者を出し引きました。



「なんとか、先ずは先手を取れましたね。」



「ええ。上々でしょう。」



私はカタリーナに返事をして次の行動に移りました。



「さぁ、追いますよ。」



私達四人はそのままブラームス君達を追いかける様に目の前の背の高い草をかき分けて進んでいきます。


少し開けた場所の先に森が見えます。

その森から人の気配を感じます。



「ルシファリオ様。罠と待ち伏せがありますよ。」



「偵察ありがとう。」



ジュネスが報告をしてくれる。


ジュネスはあの戦闘で先回りをしてもらって偵察をしてもらった。


ブラームス君達が逃げ帰った様子を伺ってもらい罠の有無や待ち伏せの有無を調べて貰っていた。


すると山の方から火の魔法が上空に打たれた。


火の魔法は爆発する事なくぷすっと消えた。



「丸形ですね?」



「どうやら、予想通りに相手は泉に陣を張っているみたいだね。」



色々な取り決めをしていて、火の魔法を打ち上げる事で連絡手段としています。


形で判断するモノで、その形によって色々と分かります。


もちろん敵側にも情報が渡りますが、特に今回の事では気にしていません。



「私はこのままブラームス君が他と合流しない様に追っていく。ジュネスは他の班に連絡をして欲しい。泉攻略戦だね。カタリーナとグレーテとデュークは他の班が敵に邪魔されない様に見張りと誘導を頼むね。その後は予定通りに。」



「はい。」

「わかりました。」

「了解。」

「うん。」



私達は予定通りの役割をこなす為、散開しました。


私は楽しくて笑顔になるのを抑えられませんでした。

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