第24話 模擬戦 その1


「では、これよりクラス内模擬戦を始める。両陣営とも最善を尽くすように。では始め!」



副担当のベーク先生の宣言でクラス内模擬戦はスタートしました。


訓練場はかなり広く、相手の陣地は見えません。


声だけが訓練場に響き渡ります。


ちなみに、先生たちからは私達の様子を見る事が出来るそうです。


かなり進んだ技術が使われているのですが、自国で開発したモノでは無いそうです。


外国の技術を使っているとか。


世界と言う規模で見ると、私達が住むフリーア王国も決して最大規模では無いそうです。


上には上が居り、下には下が居るのでしょうか?



さて、この訓練場ですが、かなり形状が面白い感じになっています。


砂場や泉に川、そして丘や谷に山場も用意されています。


流石に海はありませんが、船上での戦いも想定された訓練場もあると聞きますので、我がフリーア王国は訓練に力を入れている国の一つなのではないでしょうか?


ちなみに、ここは学園所有の訓練場ですから、色々と魔力的構造が構築されています。


命を落とさない為の工夫が幾つも用意されているそうです。


また、教員たちが私達の見えない所に沢山配備されており、不正等が出来ない様に監視体制もバッチリなようです。



今回は中央を中心に対になる様な地形がセットされている場所が模擬戦の戦場に選ばれています。


山の麓にあり、かなり広域の場所です。


私達から相手を見て右側が山の麓であり斜面のある地形となっており、その手前には川が流れています。


そしてその逆側は砂漠地帯が広がっていますが、その奥には泉があります。


そして中央部分は草原が広がっており、その手前と奥には背の高めの草がありお互いの姿は小さい森で隠されています。


陣地は好きな所に置ける事になっていますが、森の中に隠すのが常套手段となります。


何せ、陣地を置くのも時間と労力が必要なので、相手に見えにくい所に設置するのが楽だからです。


そして山の丘の部分に上がれば、訓練場の全体が見渡せます。


ただし、森の奥は見えません。


森の木々が高い為、目隠しになるからです。


この丘に陣地を張るのも悪くはないかもしれません。


後は泉の中央にある小さい島のような場所も面白いかも知れませんが、陣地を構築している間に見つかると遠距離攻撃の的になるのは間違いありません。



さて、そこで私達の陣地を何処に設営するのか?


という所から戦略になる訳です。


そして、攻めるのか?守るのか?という基本的な戦略によっても設営場所は変わります。



「では、予定通りに。」



「「「「はい!」」」」



一斉に散会する私達の各班は目的地へ向かいます。


私の居る班が1班。


ダクトア君の班が2班。


アブレア君の班が3班。


デイトナさんの班が4班。


数字で呼ぶ事で迅速な対応を心がけます。



私の班は訓練場の中央部に向けて進みます。


森を突っ切り進んでいく道を選んでいます。



「整備された森は動きやすいですね。」



事前の情報通り森は人の手で整備されており、上手く視界を隠しつつも動きやすいスペースが確保されています。


枯れ葉や枝等は敢えて放置している様子が有り、ガサガサという音やパキッという音が鳴りますが、今は音よりもスピード重視なので問題はありません。



「では僕達はここら辺で準備します。」



「ええ。お願いします。」



私達の後に続いていた二班のダクトア君達が立ち止まり準備を始めました。


私達はそのままのスピードで先に進みます。


背の高い草が生えた場所をかき分けて進むとその先には、開けた草原が顔をだしました。



「ここですね。では予定通りに。」



「「「「はい!」」」」



私は一人開けた草原に進みます。


ここは訓練場の中心部であり、敵との境界線です。


相手からの見渡しも良い場所であり、私がここで相手を待つ場所でもあります。



私は敵が来ると思える方向をじっと見て待ちました。


およそ20分ぐらいでしょうか?


前方から人の気配がしました。


そのまま背の高い草をかき分けてブラームス君が姿を見せました。


ブラームス君に続いて四名程出てきましたがたしかブラームス君の班員だったと思います。



「大将自らが中央に陣取るとはね。」



「変だろうか?」



先制攻撃を掛けてこなかった以上、会話を楽しむつもりでしょうか?


予想通りですね。


数的有利であるからこその登場でしょうね。



「別に変じゃないさ。ただ、一人で居るというのがね。」



くくく。と笑うブラームス君につられて嘲笑を見せる班員達。



「どうせ。後ろに隠れているんでしょ?」



「そうだよ。王族なんて結局そんなもんさ。」



班員達が侮蔑のこもった言葉を並べてきます。


挑発されているのでしょうか?


それとも本心ですかね?


判断に迷います。


とりあえず乗っかってみますか?



「なんで・・・だと?!」



芝居くさかったですかね。


噛んでしまいましたし。



「あら?強がっている?怖いんじゃない?」



「嘆かわしい。我が王国の王子が怖がるだなんて!」



これは挑発を兼ねたうっぷん晴らしですかね。


私は問題ありませんが・・・。



「いい加減にせよ!」


「そうよ。あんまりだわ!!」



やっぱり我慢できませんでしたか。


カタリーナとグレーテが言葉を発し出てきてしまいました。


何も言わずにもう一人デュークも居ますね。


嬉しい事ではありますが、これは模擬戦とはいえ戦いです。


普通はこういう挑発はスルーするものでしょう?


カタリーナは私の横に来ると私の手を握りました。



「もう許せない!」



そう言うとカタリーナは剣を抜きました。


それに合わせて敵であるブラームス君達も思い思いの武器を手にしました。


さぁ、ここからです。

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