第23話 模擬戦前日。



「貴方は何故立っていられるのですか?」



私が皆の前で立っているとそんな言葉を掛けられました。



「何故?足があるから?」



「いや。そういう事じゃなくて。」



肩で息をして地面にしゃがみ込んでいて、話すのもつらそうなのに班長の一人であるダクトア君に聞かれましたが、足があるからでは無かったら・・・。



「慣れているからですかね?いつもはこの二倍のスピードで三倍は走るからですかね?」



「なるほど。って。えぇ?!二倍に三倍?!」



驚きすぎて立ち上り、そのまま後ろへ倒れてしまいました。


そんなに驚く事でしょうか?


私も初めからそんな事が出来た訳ではありません。


日々積み重ねる事で、今の私があります。



「日々積み重ねただけですよ。皆さんにも出来ますよ。」



「いや。流石に無理じゃない?」



「いえ。やる気があれば出来ますよ。たまにシーラ姉上もご一緒してくれますよ?」



「「「あ~なるほど。」」」



シーラ姉上はやはり有名人なのでしょう。


何せ、常に学年一位の存在ですからね。


学年一位も伊達ではありませんよ。


全ての科目において一位を取っているそうなのです。


剣術でもその他の武術や魔術でも一位だそうです。


本当に『どんだけ?!』とツッコミを入れたくなるほどに凄いのです。



「なので、皆さんも出来ますよ。」



「いやいや。それは特別な二人だからよ。」



「そうそう。特別な存在だからですね。」



「特別ですか?」



「はい。特別です。」



断言されてしまいましたが、特別だとは思った事はありません。


ですが、たしかに王族という特別ではあるかもしれません。


しかし、本当にそれだけの所為なのでしょうか?



「わかりました。ですが、皆さんにも出来るのは間違いありませんよ。日々の積み重ねによって出来る様になりますよ。」



私はこれ以上の事は言えませんでした。


王族である私が特別であるのもまた間違いでは無いからです。


王族は特別であるからこそ尊く、王族は特別であるからこそ統治出来るのですから。


王族は特別であろうとする為に大変です。


それは、王族にならないと分かりませんね。



「いやいや。ちょっと待とうよ。たしかにルシファリオ様は王族だから特別だよ。だけど特別だからって出来る訳じゃないよ?一生懸命やらないと、何事も身に付かないよ。」



「そうよ。ジュネスの言う通りですわ。たしかに身分は特別だけれども、努力無にスタミナはつかないでしょ?現に他の王子達は至って普通よ?これほどまでに凄くは無いでしょ?」



「うん。前代未聞の点数で合格されたルシファリオ様はたしかに特別だけれど、ルシファリオ様がおっしゃる通り、やれば、やり続ければ同じ様になれるわよ。」



カタリーナとジュネスが一生懸命に説き伏せてくれています。


その必要性があるか分かりませんけど、少なくとも僕だけが特別だから出来るという様な風潮にならずに済みそうです。



「たしかにそうかもしれない。ルシファリオ様。申し訳ありません。」


「そうだね。自分を甘やかす為に『特別』を使っていたのかも?」



どうやら、皆さんのやる気をそぐ結果にならなくて済んだようです。


カタリーナとジュネスには感謝しないといけませんね。



「では早速、続けますか?」



「いや、ルシファリオ様。少し休まないと難しいですよ。」



「そうです。急にはルシファリオ様みたいになれないよ。」



「あっ。すいません。」



「「「「あはははは。」」」」



皆に笑われてしましました。


おっちょこちょい?ではありませんよね?ね?


誰か否定してくれませんかね?



◇◇◇◆◇◇◇



「さぁ。これで終わりにしましょう。」


流石に疲れました。


今日は仕上げにと、実践形式での訓練をしたので張り詰めた緊張感の元、充実した訓練がおこなえたのではないでしょうか?



「お疲れ様でした。残り半日はしっかりと体を休めてくださいね。」



「「「「はい。」」」」



明日が模擬戦の日です。


今日は仕上げを目的として、魔法も剣術も解禁しました。


もちろん担任の許可は貰っています。


この一週間は、本当に模擬戦の為だけに時間を利用しました。


授業も今週は無く、全て自習という形を取って貰えたのでこれだけ色々と出来ました。


相手も同じ様に時間を与えられているので、どの様な事を考えているのか気になる所です。


それも、顔を合わすという事もこの一週間は無かったのです。


しかも、担任がアドバイザーについている様子があるのです。



『ハンデだ。まぁ王族と平民の戦いだからあっても良いだろ?』



クラウディア先生はその様に私に言っていました。


どうやらひたすら訓練を重ねているというのです。


なので、私達は副担任を通して話を聞くだけでした。


ですが、私達の情報を手に入れている様子はありませんでした。


情報も無く、訓練だけでどうにかなるものなのでしょうか?


それとも秘密の特訓でもあるのでしょうか?


どんな策もどんな罠も圧倒的武力の前では無力であると聞きます。


それを狙っているのでしょうか?



「いよいよ明日ですね?ルシファリオ君、準備は良いですか?」



「ベーク先生?」



副担任のベーク先生が私に聞いてきました。


今迄、話しかけられた事は無かったので驚きました。



「はい。準備は出来ました。」



「ふふふ。そうですか。では明日を楽しみにしていますね?」



そう言って、ベルーク先生は何処かへ行かれてしまいました。


あのベーク先生は何処かで見かけたはずなのですが・・・分かりません。


とにかくやるべき事はやれた気がします。


八分まで出来たのかは分かりませんけど。



「では、帰りましょう。」



「「はい。」」



今日はカタリーナとジュネスと一緒に帰る約束をしています。


なんでも流行のデザート屋があるとか?


ちょっとワクワクしますね。


そうそう、ちゃんとお土産も買わないといけませんね。




神※※※※※様に感謝を。

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