第20話 勧誘と勘違い。


二人の心強い仲間を持つ私は、あと二人スカウトする必要があります。


同じクラスの中から集めるのですが、さて、どうしたら良いのでしょうか?



「わくわくするね。」



「でも、どうやって集めたら良いのでしょうか?」



休憩中の動きは慌ただしくなっています。


班長達が、仲の良い者と固まって班を構成し、スカウトに勤しんでいるからです。



「他の班構成を待つのはどうでしょう?」



「それだと、成績優秀な人を仲間に出来なくなるんじゃないですか?」



「たしかにそうですね。」



「それで良いじゃないですか。人の価値は成績だけでは測れませんよ。」



「そういうものですか?」



小首を傾げるカタリーナは理解できないみたいです。


私は学校の成績が全てだとは思いません。


一つの評価基準である事は間違いないと思いますが、それで全てが決まる訳ではないと思うのです。


それに私と同じ班ではやりにくいでしょうから、誘っても入ってくれないのでは無いかとも思うのです。


その証拠に皆さんの私を見る目がギラギラしている様な気がするのです。


あれは、何とか関わるまいとする思いの表れだと思うのですよ。


だから、カタリーナとジュネスが班に入ってくれたのはとても幸運でした。


もし彼女達が一緒のクラスではなかったらと思うと恐ろしいです。


二人には感謝しかありません。



「ルシファリオが言うならそれで構わないけど。」



「まぁ、良いじゃない。」



そんな感じで賛同してくれたので、様子見とする事にしました。



◇◇◇◆◇◇◇



ボチボチと班の構成が完了している所が出てきて、あと私達を入れて三組が出来ていないという状況になりました。



「そろそろ、良いんじゃない?」



「そうですよ。」



カタリーナとジュネスが不安げな様子で私に話を振ってきました。


残された人達は5人です。


様子見をしていた私達は、まだ行動を起こしていません。



「いえ。まだ二人になっていません。今日ぐらいには決まるでしょうから、もう少し待ちましょう。」



「「わかりました。」」



明確に答えたからなのか、この時も反対はされませんでした。


そしてついに残された二人が決定しました。


一人は、大柄で活発そうな男子。


一人は、元気が余っていそうな女子。


これで、嫌でも私の班に入るしか無いのですから、断られる事は無いでしょう。



「私の班に来てもらえませんか?」



私が残された大柄の男子の前に立ち、勧誘しました。


すると、その男子は目をクワっと広げて体を震わせました。



「ルシファリオ様。その声掛けをずっと待っていましたよ!このデューク。一生ついて行きます!」



あれ?


オカシイですね?


そんなに嬉しいですか?


一生ついて行くと言われても、ただの学年行事での班決めなのですが、そうですか。



「ルシファリオ様。俺もアンタが誘ってくれるのをずっと待っていたぜ!!」



同じ様な反応を見せる元気が有り余っている少女グレーテ。


一人称は『俺』なんですね。


ちょっとビックリです。


しかし何故そんなに喜んでくれるんでしょうか?


たしか二人とも、他から声を掛けられていたハズでは?


誰からも声を掛けられなかった訳では無かったハズなんですが。



「ルシファリオ。分かってないみたい。」



「う~ん。何か大きな勘違いをしていたのかしら?」



ボソボソとカタリーナとジュネスが話している姿を横目に、デュークとグレーテの予想外の反応に困りながら、私は興奮気味の二人の相手をしました。


その後、カタリーナとジュネス、興奮から少し落ち着いたデュークとグレーテと私を含む五人での打ち合わせをする事になりました。


お互いの挨拶からスタートした話し合いは、コミュニケーションを図るモノだけに留めました。


クラス内の模擬戦の詳細情報がまだわかっていない事と、その模擬戦は団体戦であり、班対抗の模擬戦では無いので、他の班との連携も考える必要があるからです。



「ルシファリオ様。何で勧誘を積極的にしなかったんだ?」



「なぜ?」



「ルシファリオ様が声を掛けたら、皆すぐに縦に首を振った筈だぜ。」



「えっ?!」



「「「「えっ?」」」」



四人は驚きの顔で私を見ます。


私も驚いているのですが。



「皆は私と一緒の班では、やりにくくて嫌だろうと思って。」



「「「「はぁ?!」」」」



私が正直に答えると、四人は驚きの顔のまま固まりました。


そして、お互いの顔を見あい、大声を上げて笑いました。



「そういう事かぁ!」


「オカシイと思った。」


「やっぱ、勘違い。」


「面白過ぎ!」



前世の記憶のある私は王族である私と一緒に居る事が、迷惑になると考えていたのですが、そんな事はあり得ないそうです。



「王族と一緒というのは名誉だよ。」



「そうそう。それにルシファリオ様は前代未聞の結果を出したと言われる天才なんですよ?一緒の班ってだけでも、浮かれもんですよ!」



「そういうものですか?」



「はい。そういうものです。」



「面白過ぎ!」



更に、大笑いをする四人。



「だって、皆があんなにギラギラした目を向けてくるので、止めてオーラかと思ってました。」



「それ、逆っすよ。」



私が何か話せば、より笑いに繋がる感じです。


私は恥ずかしさがこみ上げましたが、段々おかしく思い出しました。


そして私も四人と同じ様に笑っていたのでした。


神※※※※※様に感謝を。

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