第21話 模擬戦前。


「ふむ。決まったみたいだな。では、クラス内模擬戦の話をしよう。」



約束の月曜日。


クラウディア先生は班構成の決定を知り、模擬戦の詳細を教えてくれました。


今回は一回勝負で、20対20の団体戦で、勝敗決定は敵陣を落とす事だそうです。


学園が所有する市外にある訓練場で、砦の取り合いだそうです。


魔物討伐とは違いますが、集団戦を鍛える為だそうです。


連携という意味では、たしかに有効ですね。


砦にある敵の旗を奪取する事が勝敗を決める事になります。



「集団戦は連携がとても重要になる。クラス代表を決める訳だから、しっかりと指揮できる者であるという証明を見せろ。良いな?」



クラウディア先生は私と、ブラームス君を交互に見ながら確認してきました。


私もブラームス君も頷き、ルールが決まりました。



「よし。では、来週の月曜日に、模擬戦はおこなう。下見などは申請すれば出来る様にしてある。しっかりと作戦を練る様に。」



それだけ言うと、クラウディア先生は教室を出て行きました。



「ルシファリオ様。正々堂々とやりましょう。」



本来はここで、「ああ。もちろんだ!」とか言って、握手を交わす所なのでしょうが、ちょっと引っ掛かりました。



「ブラームスさん。それは違うと思いますよ。精一杯戦う事はあっても正々堂々になるとは限りません。戦いとは勝つ事に意味がありますから。だから、お互い出来る事は全ておこなって全力で戦いましょう。」



鳩が豆鉄砲を喰らった時の顔とはこの事でしょうか?


そして、少しして復活したブラームス君は一度頷き、また手を出してきました。



「わかりました。それでは全力で戦いましょう!」



「ええ。もちろん。」



こんどこそガッチリと握手を交わしました。


本来、貴族なんかは正々堂々と言うのかもしれません。


しかし、勝たなければ意味がありません。


ズルをしようとか考えている訳ではありませんが、一対一ならまだしも団体戦で、個人の名誉だけではなく、全体の名誉に係わる事ですから、やはり非常にならなければいけない時もあるのではないかと思うのです。


まぁ、正論の様なそうでない様な感じですが、全力を出す事が大切であろうと思うのです。


私達の握手によって周りはヒートアップしていきます。


あちこちから、『負けねぇぞ!』とか『やってやる!』とか聞えてきます。



「真面目。」



そんな中で、ジュネスにジーっとした眼で見られました。



「うん?やっぱり違ったかな?」



「うん。だけど、まぁらしいっちゃらしいけど。」



「次から、気をつけるよ。」



「ふふふ。何に気をつけるのですか?」



ジュネスとの会話の中を急にカタリーナが入ってきた。



「何でもない。さぁカタリーナ。行こう。」



ジュネスはカタリーナの手を握って連れて行ってしまいました。


残された私は他のメンバーに囲まれて、色々言われていますが、ジュネスの言葉が頭から離れませんでした。




◇◇◇◆◇◇◇




翌日は、私の方のチーム班長を集めます。


班長会議です。



「なるほど。その様な作戦をお考えでしたか。」



「しかし、そのような作戦を用いずとも、全員で攻めれば良いのでは?」



「それだと、守備に不安がでませんか?」



「たしかに、相手を殺すという様なモノではないので、隙をつかれてしまっては、厳しいかも知れませんね。」



既に、相手をどう攻めるかの話になっています。


ちょっと急ぎすぎですね。



「皆さん。お聞きしたいのですが、訓練場は誰か説明できる方は居ますか?後、相手の情報を持っている人は居ますか?」



私の質問が不思議だったのか、皆キョトンとしています。


【相手を知り、己を知れば百戦危うからず。】


という言葉がありますが、正確な情報はとても大切です。



「いや。訓練場なんて見た事はないですね。」



「どこの訓練場も同じじゃないですか?」



「そもそも相手は平民です。知る必要は無いでしょう。」



「そうそう。初戦は我ら貴族の相手ではありませんわよ。」



おっと、そう来ましたか。


どうも、情報というモノの重要性は理解できていないようです。


貴族社会なんて情報が命のハズなんですが、違うのでしょうか?


そもそも相手をみくびっているからなのでしょうか?



「皆さん。それは違いますよ。」



「「「えっ?」」」



私を除く班長達が驚いています。



「皆さん。良いですか?これを国として考えましょう。私が王として、皆さんがその国の貴族だとします。その時、偽情報を得たとします。その情報はダクトア君が反乱を企てるというモノでした。」



「ちょっと待ってください。僕は反乱なんて考えていません!」



「もちろんです。そうだとしても偽情報がある以上、ダクトア君を問い詰める必要があるでしょうし、問い詰められたら、良い思いはしませんよね?つまり国が混乱する切掛けになってしまう可能性がでるのです。これは戦も同じです。アブレア君が裏切る情報が入ったらどうなるでしょうか?」



「うぅ。疑うでしょうし、命令や指示を躊躇いますね。上手く回らなくなりますね。」



「そうです。それほど情報というのは大切なモノなのですよ。だから、どんな時でも最新の確実な情報は集める必要があります。貴方方も貴族なのですから、情報の価値はよく知っておくべきでしょう。」



「なるほど。」


「わかりました。」


「そうですわね。」



三人は納得してくれました。



「では、先ずは情報収集からですか?」



「ええ。先ずは手分けして情報を集めましょう。」



「わかりました。では私の班は訓練場を隈なく調べておきます。」



「じゃあ、僕の班は敵の情報を集めます。」



「敵の情報は多く必要ですから、アタクシの班も調べますわ。」



ダクトア君の班が戦場となる訓練場の情報を、アブレア君とデイトナさんが敵となる対戦相手の情報を集める事になりました。



「では私の班は、味方の情報を集めましょう。」



「「「えっ?」」」



「味方の情報も大切ですよ。皆さんの得意不得意を知っておくのは大切な事です。自らを知る事で何が出来るかが分かるのですから。では、次の班長会議は二日後。いいですか?」



「「「はい!」」」



こうして私達のチームは情報を集める事からスタートしました。


わくわくしますね。


神※※※※※様に感謝を。

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