第15話 最愛の弟。


ルシファちゃんは、昔から自分の事を理解していない。


もしかすると、自己評価がとても低いのかもしれない。


あんなに凄いのに、自己評価の低さにはいつも驚かされる。


ルシファちゃんが、小さい時より頑張っている姿を見て来ている私にとっては、プレッシャーであり、頑張る為の理由なのだ。


私が主席合格できたのも、ルシファちゃんとの朝練のおかげだし、現在もルシファちゃんの頑張る姿を見る事で、私も頑張れるのだ。


毎日、自分自身を甘やかさない様に律するのはとても大変だ。


いくら王族だとは言え、私も子供であるから、意識を高く持ち、継続して訓練や勉強に励むのは、正直つらい。


でも、弟であるルシファちゃんがあんなに頑張っているのだから、私も頑張れるハズと自分を鼓舞しここまでやって来たのだ。


そんなルシファちゃんが、入学試験において過去に例を見ない程の結果を見せたと先生から聞いた時は嬉しかった。


ようやく、ルシファちゃんが評価される。


自慢の弟が、世界にようやく認められたのだと思い、嬉しくてつい飛び上がって喜びを表してしまい、教えてくれた先生を驚かせてしまったのは、ちょっと、いや、かなり恥ずかしい事だったが。


私は直ぐに、ルシファちゃんに『おめでとう』と言いたくて、新しくルシファちゃんの部屋となった場所へと向かった。


向かったのだが、どの様な顔をしてルシファちゃんに会えば良いのかを迷ってしまった。


カッコよい姉が良いのだろうか?


それとも優しい姉が良いのだろうか?


気がつくと、私は自分の部屋とルシファちゃんの部屋の前を何度も往復してしまっていた。


結局は定まらないまま、ルシファちゃんの部屋から双子の妹達が出てきて声を掛けられてしまった。



「あら、シーラ姉上。」



「本当だ。こんな所で何をしてるの?」



「う、うむ。ちょっと、ルシファリオに用事があってな。」



「そうなの?」



「じゃあ、丁度良かったですね。ルシファちゃんがどうやら首席で合格したみたいですよ。」



「なに?!」



もう、既にその事実を知っているとは!



「凄いよね~ルシファちゃんは。」



「本当だよ。だから、シーラ姉上も褒めてやってくださいな。」



「う、うむ。そうだな。そ、そうしよう。」



私はどうやら一番乗りを逃してしまったみたいだ。


双子の妹達は、母上に報告に行くと言い去っていった。


残された私は、愕然としていたのだが、そこにルシファちゃんの従者の一人であるレオナに見つかってしまった。



「シーラ王女殿下。どうかなさいましたか?」



「う、うむ。ルシファ、ルシファリオに用事があってな。」



「そうでしたか。ではどうぞ。」



私はレオナに従い、ルシファちゃんの部屋に入り、執務室のドアをノックした。



「ちょっと良いか?」



「どうぞ。シーラ姉上。」



声を聴いただけで、私だとわかってくれるルシファちゃんはやっぱり可愛い。


そして、わかってくれる事が嬉しい。



「やぁ、久しぶり。」



「はい。ご無沙汰しています。」



私は少し舞い上がってしまい、変な挨拶をしてしまったが、ルシファちゃんは動じる事も無く返事を返してくれた。


うん。良い子だ。



「うむ。ルシファリオ。そのなんだ。しゅ、主席合格、おめでとう。」



うっ、どもってしまった。


恥ずかしい。



「はい。ありがとうございます。姉上達を見習って、入学してからもしっかりとやっていきたいと思います。」



これ以上に頑張る?


流石に、体に悪いだろう?


だが、実際ルシファちゃんなら出来てしまうか?



「あ、ああ。だが、無理はするなよ。」



「はい。お気遣いありがとうございます。シーラ姉上。お茶でも飲みますか?」



お茶?


迷惑では無いか?


私としては是非、最愛の弟との時間を楽しみたいが・・・うむ。甘えよう。



「う、うむ。良いのか?頂こう。」



可愛い笑顔だ。


それに少しずつだが、男前に成長しているな。


そんな事を考えていると、ルシファちゃんは手際よく、私をエスコートしソファを進めてくれて、メイドに茶の用意を指示していた。


うむ。



「それにしても、流石だな。」



「えっと、何が流石なのでしょうか?」



心底、何が流石なのか分かっていない様子だ。


これは姉としてしっかりと伝えなくては。



「そうだな。ルシファリオは知らないのであろうな。実は・・・。」



私は、先生から聞いた事をそのまま伝えた。


学園の有史以来初の、満点越えという結果を出した事。


学園を上げて、ルシファちゃんを迎える事。


学園の生徒でありながら、学園の先生という立場で入学をして欲しいという提案まである事を伝えた。


更には、学園長が特別処置を考えており、世界でも有数の先生を揃える事も考えているという事も伝えた。


どうやら、ルシファちゃんはこの事は知らなかった様だ。



「まさか・・・。」



「まさかでは無いよ。ルシファリオなら、当然の結果だと私は思っている。」



そう、私の最愛の弟であるルシファちゃんであれば、当然の事なのだ。


その辺の学園の先生よりも知識があり、技量がある。


ある意味で学園に入る必要すらない程に高いスペックを持っているルシファちゃん。


ルシファちゃんの学園ライフは楽しく意義のあるモノでなくてはならない。


だから、校長先生の判断は妥当なモノだ。


なにせ、知識でも、魔術でも、武術でも、全て試験官を圧倒したらしいのだ。


そして試験官達はプライドを越えて、ルシファちゃんを羨望しているらしいのだ。


その評価は、ようやくルシファちゃんを世間が認めてくれたという事だ。


私は自分の事以上に嬉しいのだ。


さぁ、世界よ。


目を大きく開き、耳をすまし、五感をフル活用して、ルシファちゃんを感じるが良い!


私の最愛の弟ルシファちゃんを刮目せよ!!

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