第4話 決意。


『魔術の深淵を見せてやろう!』


とか。


『俺の右目が疼く時、お前は死を体験する!』


とか。


中二病的な発言は私には出来そうにありません。


私は前世において、小説を書いたり、読んだりするのが好きでした。


特に転生モノと言われるモノは片端から呼んだ気がします。


しかし、今となっては『現実逃避』をする為にしていた気がします。


ゲームも同様につらい現実から逃れる為にしていた気がします。


まぁ、まさか私が転生する事になるなんて思ってもみませんでしたが。




現在、私は勉学や魔術に体術や剣術に作法等、多岐に渡る教育を受けています。


小説で呼んでいた時は王家とか貴族って豪華な暮らしを楽しむんだろうな。


ぐらいの思いしかい抱いていませんでした。


こんなに大変な生活だとは思いませんでした。


そう言えば、日本の皇室は激務であると聞いた事があります。


公務ではありませんが、王族としての責務と義務があまりにも大きく、習わなければいけない事が沢山あります。


これだけ苦しい生活を送らなければいけないのだから、物語に出てくるムカつく王族や貴族の息子なんかが、何故あのような振る舞いをしてしまうのか?が分かった様な気がします。


『王族なのですから・・・。』


この言葉を使われ、小さい時から教育を受け、遊ぶ時間が無かったとするならば、少々選民意識が芽生えても仕方がない事なのかもしれません。


だれもが、子供の時は欲求が強く、欲求に理性が負けるのですから、それを強制的に押さえつけられてしまえば、何処か性格が歪になってしまうモノなのでしょう。


私は人格が形成されているオッサンなので、『厳しいな。』とは思いつつも、知識欲と将来設計のおかげで、精神は保たれています。



「ちょっと。休憩にしましょうよ?」


「何をおっしゃっておられるのです。今が大切な時なのです。今やらないでいつやるんですか?」



母上が少しは休めとおっしゃりますが、僕は頑なに拒否を示します。



「先生。早く、次の内容に進みましょう。」


「う、うむ。そうだな。だが、母君が言う様に休まなくて良いのか?」


「えっ?楽勝です。さっ、次々行きましょう!」



先生迄も僕の事を気遣ってくれようとしますが、一分一秒でも僕は時間が惜しいのです。


それに、より多くのモノを吸収しなければ独り立ちが遅れるばかりです。


えっ?あの苦行から逃げているだけじゃないかって?


そんな事はありません。


ちゃんと一日の終わりに時間を取っています。


それ以上は、私の研鑽に費やすべきだと判断しただけです。


ええ。それ以上でもそれ以下でもありませんよ。


今の僕に休憩なんて不要です。


夜寝る時間だけあれば問題ないのです。はい。




僕は早朝に一人ランニングを始めます。


後宮の外側を走るのです。


とは言え、子供の内から筋肉をつけ過ぎてしまうと、成長が阻害されると聞いた事があったので、基本的には適度におこなう程度です。


ランニングを終えると、木剣を使って素振りや教えて頂いた形を模倣します。


それを終えると、朝の湯浴みをして汗を流し、朝食の時間です。


朝食を終えると直ぐにその日の座学の予習をしてから、先生からの指導を受けます。


基本的に午前中は座学が中心となります。


昼食を挟んで、直ぐにその日の座学の復習をします。


その後、王族としての立ち振る舞い等の習得を目指す作法や魔法の実技や剣術・体術の実技をおこなうと夕方となります。


そこからは毎日、先生に付き合って貰っての自主練が待っています。


夕食後に、本日受けた教育内容を頭の中で思い返したりしてイメージトレーニング?をします。


その後に夜の湯浴みをしてから、母上と姉上達の待ち受ける所へ向かいます。


そこで少しの間姉上達にもみくちゃにされながら、寝るのを待ちます。


姉上達が寝たら、母上にもみくちゃにされながら、そのまま寝ます。


苦行を一日の最後におこないつつ、日々を充実して過ごしています。




初めは、5歳児の体なので、睡魔に負けてしまっていました。


が徐々に体は慣れてきて、尚且つスタミナが着いてきて、この一連の行動を毎日しても問題なくなりました。


もちろん、魔力による補助はあります。


毎日、自己回復を掛けていました。


ある時、自己回復スキルが芽生えた程です。


そこからは、意識しなくても回復してくれるようになったので、魔力を体力に変換しつつ自己研鑽に費やせました。


正直なところ、本来の目的である『自慢の家族に会う』事が無ければ挫けていたかもしれません。


やればやるだけ結果がついてくる事が分かってからは、自分の成長が楽しくて仕方がなかったのもあると思います。


そうして、一日・一ケ月・一年と月日は流れて行きました。


気がつけば、もう10歳となっていました。


あっという間にこの五年間は過ぎて行った感じです。


来る日も来る日も、自己研鑽を続けていましたし、無我夢中となって色々な事を吸収しようと一生懸命にやってきましたから。


今回は前の時の様に、自慢の家族を護る事が出来ないなんて嫌なので、僕は自分が出来る事を一生懸命やって見つけた時に備えるつもりだからです。


そして、今世こそ彼等の幸せを見て、幸せを護って旅立ちたいのです。


ある意味、自己満足の域なのかもしれません。


けれど、僕の望みはそれだけなのです。


それが、今世で果たさなければいけない責務にも感じているのです。


ちょっと重すぎるかもしれませんね。


けど、それでも私はそれを何としても達成するつもりなのです。


記憶を残してくれた神※※※※※様に感謝を。

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