第13話

 横になっても眠れない。誰かがいようと、それは変わらなかった。


 思い頭を枕に押し付け、目を瞑った。


 その時、扉を叩く音がした。


「杉山か?」

 隼大が問うと、扉の向こうから「すみません」という、杉山の声が聞こえた。

 隼大は、ベットから体を起こした。

 さっき、リビングに行った時、やっぱり起こしてしまっていたのか。申し訳なさと、どうしたのかと気になった。



 急いで、扉を開けた。

 

 杉山は、眩しいのか、眠いのか、いつもの凛とした目ではなくトロンとした目で隼大を見てきた。


「悪い、さっき起こしてしまった。どうした?」

「いえ、なんか……気になってしまって」


寝ぼけた声と、ふんわりとした雰囲気に思わず、起こしてしまった罪悪感よりも、小さな子どものようで、顔がほころぶ。


「あれだよな」

「なんですか?」

「小さい子がさ」

「はい」

「親戚の家にお泊りして、寝られません、って起きてくる子みたいだな」

 プッと吹き出しながら笑うと、半分眠っていた杉山の目が大きく開いた。


「ちょ、ちょっとひどくないですか、川浪さん」

 心外だという顔で近づく杉山の肩を押し返しながら、笑った。


「すまん。そうだな、俺が悪かった。けど、本当に俺のことよりも寝てくれ」

 笑いを引っ込めて言うと、「それは、こっちのセリフです。寝て下さい」と口をとがらせて言った。隼大は心配をかけたくなくて、安心させるように大きく頷いた。

「いや、もう寝るよ」

「ホントですか?」

「ほんと、ほんと」

 ジトっと見られ、こちらを見透かされているように感じ、居心地が悪くなる。顔を背けると、背けた方へと杉山が移動してきた。


 じりじりと距離を詰めてきた。あと数センチの距離。

「近い。近い、ちょっと離れてくれないか?」

 そう言うと、杉山はスッと離れ「寝るまで、側に居ちゃ駄目ですか?」と、聞いてきた。


「え?」と、思わず問い返した。

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