第46話 共感を抱いて
私は、エルード様から驚くべき事実を告げられていた。
彼が、ラーファン家の正当なる血筋ではないこと。それを理由に、彼がシャルリナを次期当主にしようとしていること。二つとも、とても衝撃的なことだった。
「エルード様が、シャルリナにあれ程厳しいのは、そのためなのですか?」
「ああ、そういうことだ。あいつには、この俺よりも立派な貴族になってもらわなければならない。そうでなければ、俺が困る」
「エルード様が……?」
エルード様の言葉に、私は少しだけ違和感を覚えた。
彼が困るというのは、少しおかしい気がするのだ。
「エルード様は、シャルリナが家を継がなければ、何か不都合があるのですか?」
「……俺にはやるべきことがある。そのためにも、俺は必ずシャルリナに家を継がさなければならない」
「やるべきこと? それは、一体?」
「……そこまでは、お前にも教えるつもりはない」
エルード様には、何か目的があるらしい。
その目的を果たすために、家を継ぎたくないということなのだろう。
それは、私にも教えてくれないようだ。全てを教えてくれるという訳ではないらしい。
「……エルード様は、どうして私にこのことを?」
「む?」
「ラーファン家の人々に知らせていないことまで、私に伝えるなんて、どうしてなのですか?」
しかし、エルード様は多くのことを教えてくれた。
後半の内容は、ラーファン家の人間にも知らせていないことであるようだ。
そこまで教えてくれたのは、どうしてなのだろうか。それは、少しだけ気になることだ。
「それは、俺にもわからん」
「え?」
「よくわからないが、お前には話そうと思った。もしかしたら、お前に共感しているからなのかもしれないな……」
「共感……」
私の質問に、エルード様は自虐的な笑みを浮かべた。
彼の共感というのは、なんとなくわかる。恐らく、ラーファン家に対する疎外感のようなもののことだろう。
私は、ゴガンダ様の娘であるが、そこまでラーファン家に馴染めている訳ではない。なんとなく、他人の家という感覚がまだあるのだ。
エルード様も、そういうものを感じているのだろう。養子であるから、まだ馴染めない。それで、共感を覚えたのではないだろうか。
「さて、これで話は終わりだ。どうする? まだ走る気はあるか?」
「えっと……」
「ふっ……そうだろうな。変な話のせいで、そんな精神状態ではなくなっただろう。すまなかったな、部屋でゆっくりと休んでくれ」
「はい……」
それだけ言って、エルード様は走って行った。
その背中を見ながら、私は色々なことを考えるのだった。
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