　私は、エルード様から重要な話をされることになった。

　それは、彼がシャルリナに対してとても厳しいことに関係していることのようだ。

「まず、俺はこのラーファン家の正当なる血筋ではない」

「え？」

「要するに、養子ということだ。無論、無関係の人間という訳ではない。遠い親戚だ」

　エルード様の言葉に、私はとても驚いていた。

　彼が、このラーファン家の正当な血筋ではない。衝撃的な事実に、私はかなり動揺している。

　その一方で、今まで感じていた違和感のようなものは、その事実により解決することになった。年の離れた兄妹。どこか家族と距離を感じるエルード様。それは、彼が養子だというなら、納得できるのだ。

「俺の両親は、馬車の事故で亡くなった。孤立した俺は、このラーファン家の養子になったのだ。当時のラーファン家は、子宝に恵まれていなかったため、俺を引き取ることにしたらしい」

「なるほど……」

　エルード様とシャルリナは、年が離れている。

　それには、そういう事情があったのだ。

　家を継ぐ子供が生まれない。その問題を解決するために、エルード様を養子にした。とても、自然な流れである。

「数年後、シャルリナが生まれた。このラーファン家の正当なる血統だ。だが、それでも両親は俺を後継ぎにしようとしている。それはある種、義理のようなものなのかもしれないな……」

「義理？」

「正当な血統が生まれたからと俺を下げるのは申し訳ないとでも思っているのだろう。あの二人は、善良なる人間だからな……」

「それは……」

　エルード様の言葉に、私は少し疑問を感じた。

　それは、少しうがった見方なのではないかと思ったのだ。

　きっと、グルラド様もサリーハ様も、そのようなことを思っていないはずである。

　あの二人なら、もっと単純な気持ちなのではないだろうか。エルード様は、自分達の息子。そう思っているからこそ、順当にエルード様を次期当主にしようとしているのではないのだろうか。

「だが、俺の考えは違う。正当なる血筋の人間がいるなら、その者が家を継ぐべきだ」

「まさか……」

「俺は、シャルリナを次期当主にするべきだと思っている。このラーファン家の血統を引き継がせるためにも、そうするべきだ」

　エルード様は、とても冷静な表情でそのようなことを言ってきた。

　シャルリナを次期当主にしたい。そういう思いがあるから、彼は彼女に厳しかったのだ。

　それは、とても悲しい選択である。自分ではなく妹を。そんな選択は、早々できることではない。

　それでも、そういう選択をしようとしているのは、彼がラーファン家のことを思っているからなのだろうか。

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