第47話 温かい言葉
私は、屋敷の前まで戻って来ていた。
エルード様に衝撃的な真実を知らされて、走るどころではなくなったからだ。
「あれ? 叔母様? どうかしたのですか?」
「あ、えっと……」
「なんだか、顔色が悪いですよ? お兄様に何か嫌なことでも言われたんですか?」
意外なことに、シャルリナは家の前で待っていた。
彼女なら、既に部屋に戻っていると思ったのだが、私達を待っていてくれたらしい。
外が嫌いな彼女が、そのように待ってくれていることは嬉しかった。だが、今の私はそれを心から喜ぶことができない精神状態なのである。
当然、それは彼女にも見抜かれていた。あまり隠し事は得意ではないので、これは仕方ないだろう。
「嫌なことは言われていないよ。でも、少し衝撃的なことを言われて……」
「衝撃的なこと? まさか……」
私の言葉に、シャルリナはすぐに感づいたような反応をした。
エルード様からの衝撃的なこと。それだけで、彼女は血筋のことを話したと気づいたようである。
それだけで気づけるのは、とても勘がいい。そういう所は、貴族としての素質があるといえるのではないだろうか。
「うん、エルード様が正当な血統ではないと聞いたんだ」
「そうですか……それは確かに、走るどころではありませんね」
シャルリナは、私の言葉にゆっくりとうつむいた。
その表情は、少し暗い。やはり、そのことはあまり触れられたくないことなのだろう。
「隣、いいかな?」
「ええ、もちろんです」
とりあえず、私はシャルリナの隣に座る。
色々と話すべきことがあると思ったからだ。
「まあ、お兄様が話したということなので、私から特に何か言うべきことがあるという訳でもないのですが……」
「うん……」
「あまり、気にしないでください。私にとって、お兄様はお兄様ですし、他の家族にとっても、それは変わりませんから」
「……そうだよね」
シャルリナの温かい言葉に、私は少しだけ悲しくなった。
エルード様には、彼女達の思いは届いていない。自分でどこか距離があると決めつけて、本当の家族ではないと思っているのだ。
だが、それを咎めることはできない。私も、同じような思いを抱いているからだ。
私は、ラーファン家の一員で、家族である。きっと、優しい公爵家の人々はそう思ってくれているだろう。
しかし、私自身はそうは思えない。未だ、少しだけ距離を感じてしまうのだ。
エルード様も、同じ思いなのだろう。だから、これはきっとどうしようもないことなのである。
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