第27話 貴族としては
私は、エルード様とその妹であるシャルリナと話していた。
シャルリナは、かなり怠惰な性格のようだ。貴族としては失格なのかもしれないが、私からしてみると、親しみやすい性格である。
「お前は、もっと貴族としての自覚を持て」
「……別にいいじゃないですか。ここは家で、私の部屋なんですよ?」
「俺とアルシアがいるだろう」
「身内じゃないですか?」
「身内でもあっても、礼儀というものはあるだろう」
シャルリナに対して、エルード様はとても呆れていた。
貴族の彼からすれば、彼女のこの態度はなんとかして改めてもらいたいものなのだろう。
私は、シャルリナの気持ちがわからない訳ではない。身内の前くらい、気を抜きたいという彼女の気持ちがわかるのだ。
だが、それは私が貴族のことを何もわかっていないからなのかもしれない。だから、口は挟まない方がいいだろう。
「私、お兄様に甘えたい年頃なんです」
「何?」
「お兄様の前でくらい、気を抜かせてくださいよ」
シャルリナは、とてもいい笑顔でエルード様にそんなことを言った。
その可愛らしい仕草には、流石の彼も折れるのではないだろうか。
「……」
「え? なんですか? その反応?」
しかし、エルード様はシャルリナを睨みつけていた。
どうやら、彼には媚を売っても無駄なようである。
「い、妹をこんなに蔑んだような目で見られるなんて、やっぱりお兄様には血も涙もないんですか?」
「……お前のそのねじ曲がった根性は叩き直さなければならないようだな」
「は? なんで立ち上がるんですか?」
「他意はない」
「いや、ありますよね?」
エルード様は、ゆっくりと立ち上がった。
よくわからないが、シャルリナの根性を叩き直すつもりのようだ。
その動きは、無関係の私でも少し怖い。当事者であるシャルリナは、もっと怖いだろう。
「失礼します!」
「む?」
「えっ……?」
そんな中、戸を叩く音と大きな声が聞こえてきた。
明らかに、普通ではない焦った声だ。これは、何か大変なことが起きたのではないだろうか。
私は、とても嫌な予感がしていた。今、この家で起こる大変なこと。そう思った時に、ある人の顔が浮かんできたからだ。
「何があった?」
「ゴガンダ様が……」
「わかった。すぐに行く」
「は、はい……」
使用人が答えを出す前に、私達は行動していた。
その声色から、ゴガンダ様がどうなっているかなどすぐにわかった。
わかったからこそ、急がなければならないと思ったのだ。とにかく、彼の元に行かなければならない。その一心で、私は走るのだった。
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