開店2ヶ月目 天使 音楽家イスラフィエル
レムレムが来て1ヶ月が過ぎ、アゼルとラファエルも仕事にも慣れてきた。悩み相談の解決する時間も早くなり行列がなくなり、余裕も出てきた。
暇なときは、ラファエルかアゼルがお店を手伝ってくれるようになってくれたおかげでカフェも開店当時よりはお客さんも落ち着いた。そして何より、レムレムという助っ人が一人増えて賑やかになった。
「ねぇ店長!この店赤字なんでしょ?潰れそうなんでしょ?」
「レムレムちゃん聞き方直球すぎない?」
「でもこの1ヶ月で黒字になったのかなぁってレムレムもが頑張ったし!あの二人はサボってばっかりだけどさ…」
「あの二人サボってないと思うよ。頑張って悩み相談やってるよ」
「店長は二人に甘すぎる! イケメンだからって! 甘くちゃダメ! 天狗になっちゃうから! いった!」
「アゼル兄殴るなって言ってるでしょ! 女の子を叩いちゃダメだって教えてもらわなかったの?」
「いつからアゼル様からアゼル兄に変わったんだよ。前から言いたかったんだけどレムレム、女の子って歳じゃねぇだ・・・んんんんん」
「アゼル様、ここでレムレムを女の子じゃないって言ったらどうなるか分かってますよね? 私は、永遠にピチピチの女の子なんですよ!」
「(女性って怒ると怖いんだなぁ~怒らせない様に気をつけた方がいいな)」
ラファエルは、アゼルとレムレムの会話を見ていて心の中で思った。
「ううっ・・・ううっ・・・ううっ・・・うわぁぁぁ」
店の外から人の大きな泣き声が聞こえた。
「な! なんだ?大きな泣き声がするぞ!」
外へ出てみると店の前で男性が泣きしていた。しかも、その涙の量がすごかった。店の前の道路が冠水するくらいの涙の量だった。
「道路が冠水している・・・この短時間でこんなに涙を流すなんて相当嫌なことがあったのね。」
「嫌なことあったくらいで道路冠水しないだろ!」
「・・・イスラフィエルか?」
「ううっ・・・まさか! ラファエル様ですか? な・・・なんでこんなところに・・・い・・・るんですか?」
「ラファエルの知り合いなのね。」
その男性の姿は、背が少し低くて気弱そうな男性だった。
「ちょっと・・・頼まれて日本に来ている。イスラフィエルは、なんでこんなところにいるんだ?」
「聞いてくれますか?」
「聞いてやるから泣くのは止めてくれよ」
「分かりました。なるべく泣かずに話をしたいと思います。私は、地獄の監視をしていたのですが、かわいそうな罪人が居まして、その人の話を聞いているうちに涙が・・・止まらなくなり・・・ううっ・・・ううっ」
「おい!泣くなよ!」
「そうやって周りの人も泣くなって言って私は邪魔扱いされ、気晴らしに日本に来て店の向かいにある公園で大好きなラッパを吹いていたら、うるさいって言われて・・・ううっ・・・私には、居場所がないのでしょうか?教えてください!私は・・・私は・・・どうしたらいいのですか・・・ううっ・・・うわぁぁぁ」
「泣くのは良いが・・・道路が冠水になるほどの涙はちょっと困るんだよな」
「店長は、イスラフィエルに初めて会うので簡単に紹介しますね。」
「紹介するのはいいけど・・・泣くの止めなくていいの?」
「いいんです。止めても止まらないので放っておきましょう。」
「いいならいいけど・・・」
「では、説明します。イスラフィエルは、先ほども言っていましたが、地獄の監視をしています。罪人の話し相手もします。ものすごい涙もろいです。一度流した涙は冠水するレベル。止める方法は、ラッパを吹かせればなんとかなります。ただ悲しい話、感動する話は禁句です。止まらないほど泣いてしまいます。」
「おい! ラファエル説明してないで止めろよ!」
「なんでラッパを吹かせるとなんとかなるの?」
「彼は、最高の音楽家でラッパが大好きなんです。彼にラッパを吹かせれば周りが明るくなり元気をもらえるんです。」
「簡単にまとめるとイスラフィエルにラッパを吹かせろってことだよね!」
「レムレムちゃん! 聞いてたの?」
「もちろん聞いてたよ! 解決方法が分かったから善は急げ・・・だね」
「??」
「もう!店長聞いてなかったの?イスラフィエルに、ここで演奏してもらえばいいんだよ。早くしないとこのお店も冠水しちゃうし、お客さんが入れないよ~」
「そうだね。レムレムの言う通り早く止めないとだね。」
「やっと話し合いが終わったか! なら早く止めてくれ! 泣き声がうるさい!」
「・・・イスラフィエルさん、ここでラッパを吹いて演奏してもらえますか? 私、イスラフィエルの演奏聞きたいです。最高の音楽聞かせてください!」
「いいんですか? 私で・・・こ・・・こんな泣いているだけでみんなに迷惑かけているのに・・・ラッパを吹いても・・・」
「店長が良いよって言ってるんだからお言葉に甘えて思いっきり演奏しなよ!最高の演奏をしてお客さんたくさん入れてよね。じゃないと怒るから!」
「み・・・皆さんなんでそんなお優しい方ばかりなんですか? 私は・・・私は感動しました。うわぁぁぁ!」
「泣かせてどうするんだよ!って・・・なんか俺・・・ツッコミするのも疲れてきた」
「あの・・・準備するのに1週間時間をください。ちゃんと準備してきますので・・・」
「分かった。1週間後に演奏お願いするわ。」
イスラフィエルは、眼を輝かしてお店からものすごいスピードで立ち去った。
「今日は、お店の中掃除しないといけないからこれからじゃ営業できないか・・・」
時計を見たら15時になっていた。
「看板には一応営業お休みとは書いたのはいいけど・・・はぁ・・・」
「店長そんなに落ち込んでどうしたの?」
「ううん・・・なんでもない」
「何でもないわけないじゃん。営業が出来なくて落ち込んでるんでしょ。責任感じるのは良いけど・・・まだまだこれからが大変だよ。あと3ヶ月もあるんだし・・・こんな日もあるって思わないとずっと落ち込んでることになるよ。それとお客さん来なくなっちゃうよ。毎日いろんなトラブルがあった方が退屈しないじゃん・・・でしょ?協力してくれる人もいるから店長が元気がないとみんな気分が下がっちゃう・・・笑顔で気軽に行こうよ。何かあれば協力するからさ(ウィンク)」
レムレムちゃんは、私が落ち込んでるとすぐに励ましてくれる。とてもいい子だ。何回励まされたんだろう・・・しっかりしないとダメだよね。店長だもん・・・
「ありがとう!レムレムちゃん元気出たよ!」
「店長!その意気だよ!」
「女子二人で何喋ってるんだよ!」
「ひ・み・つ~アゼル様には一生わからないよ~」
みんなでこの日は、初めてわーわー言いながらお店の中で楽しんだ。そのおかげで疲れもなくなった。
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