開店一ヶ月目~閻魔様悩み相談にやってくる2とレムレム降臨

「いや…気にするな。今度は、弟子たちが来るだろうからな。その時は、よろしく頼む」


「お弟子さんですか?」


「仕事を頼もうと思って考えている。名前は、礼(れい)とちび。」


「礼は分かるが、なんでちびなんだ?」


「背が小さいのもあるんだが、名前がとっっても長いから略してちびだ。」


「名前が長いんですね」


「長い。文章で言うと2,3行くらい長い名前だ。誰がそんな名前を付けたのか知りたいくらいだ。」


「閻魔様でしょ」


「えんちゃんだろ」


「私じゃない。礼とちびは元々、死の狭間にいた。だから拾って弟子にしただけのこと。私が拾う前から名前は長かったと聞いている。一緒にいた礼がちびって名前を付けたらしい。」


「死の狭間ってどういう所なんですか?」


 私は、閻魔様の住んでいる世界が、気になってつい聞いてしまった。


「生きてもいないし、死んでもいない。一度、行ったら戻ってこれない。暗くて寂しい場所…普通ならいけない所なんだけど、あの二人は入ってしまった。」


「生きてもないし、死んでもない場所…。でも普通の人は行けない所なのにどうして入れたんでしょうか?」


「私にも分かっていない。本人が言うには、迷い込んだらしい。目が覚めたら目の前が真っ暗な場所だったと…」


「人間が亡くなった場合、普通は閻魔様の所に着いてそこで天国に行く人、地獄に行くか決まるのです。」


「へぇーそうなんだ」


「けど、2人は狭間にいた。でもさ~よく2人を助けられたよなぁ?」


「運が良かっただけだ。私は、手を伸ばしただけ・・・その手を掴んだのはあの二人・・・死にたかったら手なんて掴まないだろ…誰かに助けを求めて生きたかった。ただ、それだけの事・・・少し語りすぎたな。あまり言うと、礼に怒られるし、遅く帰っても怒られるから。私は、土産を買って帰る。弟子が来た時は、よろしく頼む。」


「わかりました。礼さんとちびさんですね。覚えておきます。閻魔様、また来てくださいね。お待ちしています。」


「機会があれば、また来る。またな・・・二人とも」


「またな。えんちゃん」


「お元気で。閻魔様」


 閻魔様にお土産を渡し、帰って行った。



 翌日、夜遅くまで閻魔様と話をしていたせいで、3人は寝不足になった。


「ふぁぁ・・・眠い…眠いんだよ!朝の6時に起きてカフェの準備かぁテーブル拭いて、看板にきちんと書いてあるのかを確認し・・・すぅ…すぅ…」


「アゼル眠いのは分かるが、準備段階で寝るな。開店したら…って完全に寝てる…少し寝かしてやるか。」


「ラファエル。準備終わった?ってアゼル寝ちゃったのね。夜遅かったからしかたないか。」


「あ! 店長。おはようございます。」


「おはよう!ラファエル!今日もよろしくね。アゼル寝ちゃったのね。少しだけ寝かしてあげてね。」


「分かりました。時間になったら起こします。」


「店長・・・今日もむにゃ・・・むにゃ可愛いな…」


「うふふ・・・何言ってるんだか…じゃ!私は料理の準備してくるから」


「こちらは任せてください。」


 叶奈は、料理の準備をするため厨房に行った。


「こちらは任せてくださいって言ったもののどうしたものか…ん?何だあれは・・・すごいスピードでこっちに向かってくるぞ!アゼル! 危ない!」


「ん?なんだ?」


「ちぃーすっ! アゼル様ぁ~日本一周して、お土産買ってきたよ~ん」


 ラファエルがアゼルを呼んだ時にはもう遅かった。猛スピードでこっちに向かってくる女の子?が、アゼルに向かってぶつかってきた。アゼルは、テーブルに頭をぶつけた。


「いって~な。誰だ俺に突進してきたやつは・・・ってお前レムレムじゃねぇかよ。いててて」


「アゼル様、おでこにたんこぶ出来てますよ」


「誰のせいだよ。誰の・・・で?何しに来たんだよ!」


「今何の音?ものすごい大きな音がしたけど…」


 厨房から店長が出てきた。


「・・・ってお客さん?」


「私、レムレムって言うんだぁ~店長ってかわいいね~モテるでしょう?」


「私なんて・・・モテないよ」


「嘘だぁ~こんなにかわいいのに? でも!」


 レムレムは、勢いよく私の顔を覗き込んできた。


「うわぁ!」


「もし~ラファエルとアゼル様に告白されたら、どっちを選ぶの? 二人だってここで働いていたら店長に恋ぐらいするだろうし!」


「おい! 変なこと聞くな。」


「痛~い。アゼル様~頭グリグリしないで~分かったから! もう聞かないから! 許して~」


「もう! み・・・みんな変なこと言ってないで開店準備進めないと・・・レムレムちゃん! 罰としてお店手伝ってね!」


「え~私も手伝うのぉ?」


「お前も手伝うんだよ。レムレムのせいで開店準備が遅くなってるんだから。当たり前だろ!」


「ガーン。私も手伝うのね…分かったわよ! 手伝うよぉ!」


 レムレムはしぶしぶ手伝うことになった。テーブルをきれいに拭いたり、実際アゼルよりも優秀で仕事を覚えるのも早かった。


 そして開店時間となった。レムレムの担当は、料理をお客様に運ぶことになった。


「いらっしゃいませ! こちらの席にどうぞ!ご注文はお決まりですか?」


「オムライス1つ頼む」


「店長! オムライス1つお願いします。」


「なぁアゼル・・・なんであんなにレムレムは接客が上手なんだ? 俺達は、あんなに厳しく特訓しなのに、あんな簡単に接客してすごいな!」


「あ…前に渋谷で接客のアルバイトをしてたらしい。顔も見た目も自由に変えられるからな。あいつは・・。」


「アゼル様!余計なこと言ってないでちゃんと仕事してください。仕事してなかったらルシファー様に言いつけますよ」

「レムレム!オムライスで来たわよ!」


「はーい! 今行きます。店長ありがとうございます。お待たせしました。オムライスでございます。ごゆっくりどうぞ!」


「注文お願いします!」


「今行きます!少々お待ちください。」


「おい!店長を出せ!こんなくそまずいオムライス食べられるかよ!」


 先ほどオムライス頼んだ男性のお客さんが立ち上がり、料理に文句を言い始めた。


「私が店長ですが…申し訳ありませんでした。オムライスの代金は・・・」


「ちょっと待った~! お客様~今日は私に免じて許してもらえませんか?」


「なんで俺が・・・!?」


 男性がレムレムの目を見た瞬間、態度が変わり、レムレムの目の色が青に変わった。


「先ほどは・・・すみませんでした。オムライスは、とても美味しかったです。店の中で大声を出して申し訳ありませんでした。会計をお願いします。」


「あ・・・はい。会計ですね。お待ちください。」


 その男は、態度を変えてお店の中でお辞儀をしたり、周りに対して謝りながら帰って行った。


「え? レムレムちゃん何をしたの?」


「手品かなぁ~ってい・・・痛~い! なにするんですか?アゼル様~?」


「適当なこと言ってるんじゃねぇよ。」


「てへ!」


「さっきのはレムレムの能力で、迷惑なお客さんがいた時レムレムの目を見れば、そのお客さんはレムレムの言うことを聞くってわけ。」


「迷惑なお客さんを返してくれたのは良いけど、人間界で使わない方がいいかもね。能力を利用しようとする人もいるだろうし、気をつけた方がいい。」


「大丈夫だよ~ダメそうだったらルシファー様を呼んで地球ごと壊してもらうから~」


「おい! それだと人間全員死ぬぞ。」


「アゼル様~引っかかった~冗談ですよ~」


「レムレム!!」


「おい! そこのバカ二人騒ぐな! うるさい仕事をしろ!」


「「はーい」」


 二人は返事をしても店の中で走り回っていた。幸いお店にはお客さんが居なくて良かったが、ラファエルに二人は怒られていた。




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