歌3

 すべて、シキミの計画どおりに、物事が運んだ。ジャカランダは気に入らなかった。一泡ふかすと決意。静かな時間に浸るのを妨げた分。



 林の中にできた道。通り抜けて、透明な壁に突き当たる。緑色の大地が見渡せるのに。方角は違えど、出入り口の作りは同じだ。望めば、スウッ、と、通り抜けられる。


 独特な香りが届く。シキミの居場所を知らせる。残り香は教えた。立ち寄った先を。実験と称して、皆をまどわすことに匂いを使う。


 誰もが、一度は騙される。ジャカランダも。言伝てを頼まれて捜していた時に。貴重な時間をつぶされた。あまりにも腹が立ったため、シキミから音楽の楽しみを奪った。手土産持参の謝罪に、返してやった。本人いわく、意外に辛かった。


 白い肌に掛かる、明るい黄色の髪。緑の草が生えた大地を這う。重ね着した服の裾と共に。シキミが立っていた。表情は、無。付き合いが長いジャカランダは読み取った。ワクワクして、報告を待ちわびている。


「申し訳ありません。池に落としました」


 まなざしだけで、シキミは問い掛ける。率直に、キャラが謝った。ツカツカ、と、歩み寄って来る。顔を近付けて、覗き込む。美しい顔が睨むと、怖い。顎の下から、懐中電灯を照らした迫力がある。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


「すまぬ。叱らないでやってくれ。あたくしが、『音が苦痛だ』と、こぼしたせいだ」


「……」


 謝りながら、キャラは逃げる。シキミが追いかけた。見計らって、ジャカランダがなだめる。自分の責任を強調する。キャラの罪の意識を軽くしてやった。キャラとシキミが揃って固まった。


 風が吹き抜ける。何事があったのか、問い掛ける。上の方々が、報告を求めていた。ジャカランダもシキミも、キャラも感知していた。


「コホン。落としてしまったのだから、仕方がない。……わたしの方から、上に報告しておこう」


「あたくしの責任でもあるから、回収班に加えてくれ」


 咳払いして、シキミは衝撃を受けたことを隠そうとした。指摘はせず、面白そうな回収を希望する。気が晴れると、考えた。シキミは承諾。


「キャラも回収班に加わってくれるよな」


「は、はい」


 不安そうなキャラの栗梅色の短い髪を、ポンポンとシキミは触れる。我に返って、彼女は頷いた。

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