第17話 闇の科学者

ジュンとニノは警戒しながら神殿の入り口に歩いて行った。入り口までもう少しという時に、グルァァァァとドラゴンの鳴き声が聞こえ、あっという間にドラゴン達が飛び出してきた。闇のドラゴン達は上空を飛び回って攻撃の機会を狙っている。

ジュンは構えて叫んだ。


「コンストラクト!」


ジュンの手のひらからまばゆい光と共に、次々と3体のロボットが飛び出てきた。


1体目はライオン型、2体目はガッチリした装甲の剣士型、3体目はスナイパー型ロボットだった。


ライオンのロボットは輝く白い装甲に黄色の鋼のたてがみを逆だてて一吠えすると、攻撃しようと降下してきたドラゴンの一匹に飛びかかった。黒い炎を吐かれたが、素早く何度も身をかわしてドラゴンの腹に噛み付いた。するとドラゴンが苦しそうに吠えたかと思うと、力が抜けたように落下した。ライオンの牙から鉱石力抑制剤がドラゴンの体内に注入されるようになっているのだ。


「いいぞ!レオ!」


ジュンがレオに向かって叫ぶともう一匹の闇のドラゴンがジュンめがけて降下してきた。


「あぶなーい!」


ニノがジュンの前に大きな水の塊を出してドラゴンの顔を包み込みこんだ。顔を包まれてもがく闇のドラゴンに剣士型のホーリーソードが肩についているガトリングガンで鉱石力抑制剤の入った弾を打ち込んだ。


「ドラゴンは後6匹!レオ、ドラゴン達の注意を引いてくれ!シリウスは後衛で狙撃を!」


レオは空に向かって咆哮を上げ威嚇して走りまわった。ドラゴン達は猛り狂ってレオに襲い掛かろうとした。ホーリーソードは追い詰められたレオを白い大きな盾でかばって剣を振り上げた。すると剣から白銀に輝く植物のつるがあっという間に伸びてきてドラゴン2匹を縛り上げた。上空に逃げたドラゴン達の腹にスナイパーシリウスが次々弾を打ちこみ3匹を落下させ、レオは最後の1匹に飛び掛かり見事にしとめた。


「よし、神殿に入るよ!」


レオを先頭に、全員で神殿の中に入っていった。廊下の両壁は不気味な彫刻が施され、ところどころ氷付き、その氷がぼんやりとした青白い光を放っていた。途中で4匹の闇のドラゴンに遭遇したが、廊下が狭くて飛べないので闇のドラゴン達には不利らしくロボット3体でやすやすと撃退できた。


まっすぐ長い廊下を歩いていくと、天井の高い広間に出た。礼拝堂のようだ。部屋の正面には大きな祭壇があり、両脇に闇のドラゴンのが1匹ずつ座っている。祭壇の向こうにはダーククロイツが立っていた。祭壇の上には様々な機器や実験道具と思われるものが並んでいた。


「あなたがダーククロイツか!?」ジュンは恐れを押し込めて大声で言った。


祭壇の向こう側にいるアンドロイドは、両脇にいるドラゴン達が警戒してジュン達に飛びかかろうとするのを手で制して答えた。


「いかにも。私がダーククロイツ博士だ。君は何者だ?」


「ぼ、僕はオルガ界から来たジュンだ!あなたが盗んだ5つの大宝鉱石を取り返しに来たんだ!」


「ほお、面白い。取り返せるものなら取り返してみればいい。」


「聞きたいことがある!どうやって闇の鉱石を手に入れたんだ!」


「フッフッフ。私は科学者だ。もちろん開発したのだ。風火水土光の属性の鉱石を合成して闇の鉱石を作ることに成功したのさ。原料の鉱石はドラゴン達自ら各国のロボット共から奪って私に献上してくるのだ。闇の鉱石はドラゴン達にとっては麻薬のように美味なので一度その味を知ったらそれしか食べたくなくなるようだ。」


得意げに語っていたダーククロイツの声が突然苦々しく苛立ちを含んだものに変わった。


「だが!この普通のロボットから奪った鉱石達は効果が1週間しか続かない!ただの石ころになってしまう。だから私は永遠に強い力を出し続ける強い鉱石を合成して最強の闇の鉱石を作りたいのだ!」


「だから大宝鉱石を盗んだのか!北の火山に住んでいた闇のドラゴンの封印を解いたのもあなたなのか?」


「あんな半端な封印、解くのはわけなかったよ。元はと言えば私がヴェルヴァンデルのドラゴンに強力な闇黒石を大量に食べさせ、大宝鉱石を盗めと命じたのさ。しかし腹に子供がいたからか、盗んだ後に私の元に戻って来ず、逃げ出してあの火山に隠れていたんだ。今はほら、また私の従順な手下になっている。」


ダーククロイツは自分の左にいる闇のドラゴンのほうをチラリと見た。


ダーククロイツは祭壇の上から五角形の金属板を持ち上げた。手元から鉱石を持ち上げ、その板にカシャンカシャンとはめ込んでいった。


「ジュン!あれ、大宝鉱石を合成しようとしてるんじゃない!?」


ニノが鋭い声で言った。


「やめるんだ!ダーククロイツ!」


ダーククロイツは狂った笑い声をあげながら金属板を差し上げ、ジュン達に見せつけるようにしながら五つ目の火炎石をはめ込んだ。


すると5つの鉱石から5色の光が発し、金属板に刻まれた溝を伝って中心のくぼみの中で光が混じりあった。まじりあった光がいっそう強く光った後に、紫の煙が渦を巻いて発生した。そしてくぼみから紫の光が出て、大きくて真っ黒な闇黒石が現れた。ダーククロイツは狂喜して叫んだ。「ハハハ!成功だ!」

しかし、金属板から発生した紫の煙の渦巻きは収まることなくどんどん大きくなってきた。


危険を感じたジュンは叫んだ。


「みんな後ろに下がって!柱の陰に隠れるんだ!」


ニノもロボット達も急いで後ろにあった2本の大きな柱の後ろに隠れた。渦巻きはゴゴゴゴゴと地響きのような邪悪な音をたてながら次第に大きくなり、祭壇の上の実験道具も祭壇も吸い込み、両脇に控えていたドラゴン達も、抵抗むなしく叫びながら闇黒石に吸い込まれていった。


地響きのような音が収まったのでジュンは恐る恐る柱の影から祭壇があった方をのぞいた。すると、そこには恐ろしい化け物と化したダーククロイツの姿があったのだ。


頭や上半身には恐ろしいツノがたくさん生え、背中には闇のドラゴンの翼が4枚、そして下半身は2匹の闇のドラゴンが合体しており、ドラゴンの顔はダーククロイツの腹に融合して、金色の四つの目を光らせる飛び出た口は鋭い牙を剥き出していた。


「わぁぁぁぁぁ!なんだこれは!」


ダーククロイツは地響きのような恐ろしい声で叫んだ。


「私は最強の闇黒石を作りたかっただけなのに!なんだこの醜い姿は!」


ジュンとニノはあまりの恐ろしさに息を呑んだ。

ダーククロイツはぶるぶる震えながら自分の手で顔や体を触っていたが、やがて狂ったように身をそらして自嘲的に笑い出した。


「私はドラゴン達よりも強い力を得た訳だ。では、お前達も私の一部になるがいい!!」



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