第15話 聖貴石と光の塔
ジュンとニノはルミナスフィアから降り立った。
「これが光の塔なんだね。」
ジュンは見上げながら言った。
目の前には、薄緑の夕暮れの空の中ほのかに発光している流線形の美しい塔が立っていた。中心部のタワーの周りには白いとがった花びらのような大きな壁が5枚、塔を包み込んでいる。まるで開きかけのつぼみのような形だ。
「この塔は、ずっと昔からあって、ミネア界の神様が創ったと言われているんだよ。」
ジュンとニノは見張りの兵士に挨拶をすると塔につながっている橋を渡り、タワーの入り口についた。
ニノが申し訳なさそうに言った。
「ジュン、僕はここで待っているよ。この塔は鉱石エネルギーを強力に吸い取る力を持っているんだ。だから普通のロボットやドラゴンはこの塔に入った途端動けなくなっちゃうんだ。王様達ほど鉱石の力があれば、上まで登る事ができるんだけれど。ジュンは人間だから大丈夫だと思う。」
「そうなんだ。だからダーククロイツは聖貴石を奪おうとしなかったのか。わかった。僕1人で行ってみるよ。」
ジュンは期待と不安を感じながら塔の中に入った。中には発光しているらせん階段が上へ上へと続いている。ジュンは意を決して1段1段上がっていき、なんとか最上階に上がる事ができた。
そこには台座の上に大きなロボットが横たわっていた。おそるおそる近づいてよくみると、それは何かの金属で作られた彫像のようだった。そして左胸に穴が開いていて、そこにはこぶしほどもある大きなダイヤモンドのような聖貴石が嵌め込まれていた。
ジュンはそうっと両手で石に触れた。
そして目を閉じて真剣に心の中で祈った。
「ミネア界の神様、正しいことに使いますので、どうぞお力をお貸しください!」
そして聖貴石をそっと掴み持ち上げようとした。
すると閉じたまぶたの裏がカッと明るくなったので、驚いて目を開けるとジュンは聖貴石を両手で持ち上げていた。聖貴石はずしりと重く、鉱石の力を感じる能力がないジュンでも、この石が清らかなオーラを強力に発しているのが感じられた。石を外せてよかったという喜びと同時に、さっきのフォトン国王の言葉が蘇った。
「もし外せたとしたら、ミネア界に本当の危機が迫っているということだ。」
ジュンは改めて気持ちが引き締まるのを感じ、聖貴石を大切に抱えてらせん階段を下りた。塔の外ではニノが待っていた。
「ジュン!すごいよ。石をとってこれたんだね。この箱に入れてね。」
美しい細工がされた白い箱を出して、箱のふたを開けた。
「この箱は鉱石力をドラゴン達に感知させない為の装置だよ。」
ジュンはそうっと箱の中に聖貴石を入れた。
「これで大丈夫。さあ、ドラゴンや敵が来ないうちに、急いで研究室に帰ろう。」
ジュンとニノは足早に遺跡を後にした。
「博士!ジュンが聖貴石をとってきてくれました!」
「おお!本当か!ジュンくん、よくやった!」
ジュンは聖貴石を箱から取り出して博士に渡した。
「おお!この強力な力!まごうことなき聖貴石だ!これなら魔法のマテリアライザーを使う事ができる!しかし皆に手伝わせて大急ぎで修理しているが、まだ半分ほどしか進んでいないのだ。明日には使えるようになるので、ジュンくんもニノも今日はゆっくり休んでおくれ。」
翌朝ジュンが研究室に行くと、マテリアライザーが復活していた。上部には聖貴石がはめ込んであり、光が当たってキラキラと輝いている。
「おはよう!ジュンくん、マテリアライザーが復活したよ。」
「もう直ったのですね!すごいです!」
「皆総出で頑張ったからね。ついでに新機能も追加したよ!」
「新機能ってなんですか?」ニノが遅ればせに研究室に入ってきながら言った。
「1度の戦いにつき、ロボットを3体出す事ができるようになったんだよ。」
「それはすごいですね!心強いです。」
「聖貴石が強大なパワーを持っている事と、力を増幅させる装置を開発できたことで可能になったのだ。ただ、新しい課題もできてきた。複数のロボットを操るのは難しいのだ。練習が必要になる。」
「僕、やります!練習したいです!」
「ジュン、がんばれ〜!」
ニノが言い、博士は嬉しそうにうなずいた。
「それと話は変わるが、ダーククロイツについて、今のところ分かっている情報を話しておきたい。」
博士が手をかざすとテーブルの上に地図が映し出された。
「昨日の夜に氷の王国から密使が来て判明したのだが、ダーククロイツと闇の竜は、我が国の北西にある氷の国の、さらに北にある孤島のロシエル神殿に潜伏しているようだ。神殿は今は廃墟になっているはずなんだが、そこに複数の闇のドラゴンと黒ずくめのロボットが出入りしているのを氷の国の民達が目撃したそうだ。今許可をもらって小型ステルスドローンを飛ばし、さらなる情報を調査中だ。」
「ドラゴンは複数いるのですか?」
「そのようだ。少なくとも大小合わせて10匹程は目撃されているらしい。鉱石力抑制装置をたくさん用意した方がよさそうだね。投網は使いづらい面もあるので、改良の余地もある。本当はすぐにでも奪還に向かいたいところだが、こちらには準備の期間が必要だ。その間、ジュンくんは複数のロボットを操る練習を頑張っておくれ。」
「はい!」
その日の午後から研究所の外での特訓が始まったが、1日目の練習は困難を極めるものだった。まず前の練習でもそうだったのだが、緊迫感がないからかロボットがどうしてもあまり強くなさそうなものになってしまうのだ。そして1体目はそれでもまだ気合が入っているが、2体目、3体目と続いていくと疲れが出てきて3体目のロボットはとても弱そうになってしまう。
「あれ〜!?全然うまくいかないなぁ。」
ジュンはハアハアと息を切らせてしゃがみ込んだ。
博士は苦笑して言った。
「まだ2回目だからね。もう少し練習すれば、力の入れ加減がわかってくるだろう。とりあえずロボット3体を構築する事だけを練習しよう。これは、その時と場合によるのだが1体目はスピード重視、2体目は防御力強め、3体目に攻撃力のあるものを持ってくるのが基本と言えるかな。」
ジュンは目を閉じて心の中でつぶやいた。
1体目はスピード重視、2体目は防御力強め、3体目に攻撃力・・・頭の中にぼんやりとイメージがうかんできた。
「よし!」
ジュンは再び空中に絵を走り描き、右手を左手で支え前に構えて叫んだ。
「コンストラクト!」
すると手のひらから立て続けに3体が出てきた。
一体目は剣を持ったアンドロイド、二体目はガッチリした装甲のロボット、三体目は大砲が組み込まれた戦車のロボットだ。
「おお、形は良いものができたね。」
「ジュン、すごーい!」
「次は動かしてみよう。」
博士が言った。
博士に言われた通り走らせたり跳躍させたり動かしてみたが、1体目の剣士ロボットと2体目の装甲ロボットはなんとか同時に動かせたのだが、3体目に意識がいかなくなってしまいやはりうまくいかない。試行錯誤しているうちにあたりはだんだん暗くなってきた。
「よしよし、今日はここまでできれば上出来だ。また明日練習しよう。ジュンくん、私も考えておくので、3体同時に上手く動かすために何が足りないか考えておいておくれ。」
「はい!」
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