第14話 新たなる危機

一ヶ月ほどしてジュンの手首のギプスがとれた頃、また博士から連絡がきた。


「おお、ジュンくん、手首の調子はどうだい?」


「ギプスがとれて完治したとお医者さんに言ってもらえました。」


「それは良かった!」


ニノが不思議そうに博士に聞いた。


「鉱石は全部取り戻しましたよね。博士、何かあったのですか?」


「実はそうなんだ。困ったことが起きてしまってね。」


博士は力なく呟いた。


「どうしたのですか?」


「実は最近闇のドラゴンが大量に増えて各国のロボットを襲いだしたのだ。」


「ええーっ!」


ニノとジュンは同時に叫んだ。


「なぜでしょう。僕が封印した闇のドラゴンと関係あるのでしょうか。」


「闇の科学者ダーククロイツがジュンの封印したドラゴン封印を解き、闇のドラゴンを急激に増やしたと思われる。」


ニノが驚いて言った。

「ダーククロイツ!?まだ生きていたのですか?」


「今は調査中で確かなことは言えないが、闇のドラゴン達が再びロボット達を襲い出したのは確かなのだ。とにかく明後日の夜10時すぎにこちらの世界に来てほしいのだが、大丈夫かね。もちろん2人一緒に。」


「わかりました!」


「はーい!」


2日後、ジュンとニノは異次元転移装置でミネア界にワープした。着いたとたん、大きな歓声に包まれて驚いた。研究所の前には、ボディカラーは黄色と白で統一されているが、様々な形状のロボット達がたくさん集まってきていた。光の国の民が、ジュンの活躍を聞いて一目みたいとやってきたのだ。歓声になってよく聞き取れなかったが、皆ジュンとニノに対して感謝の言葉を口々に言っているようだ。


すぐに兵士3人が慌ててやってきて、ジュンとニノを守りながら研究所に導いてくれた。奥からトトが尻尾をちぎれんばかりに振りながら駆け寄ってきた。

研究室に入るとフォトン博士が両手を広げて歓迎しながら言った。


「ジュンくん、ニノ、よく帰ってきてくれた!また会えて本当に嬉しいよ!」3人と

1匹は再会の喜びをかみしめた。

少し落ち着いた頃にジュンが言った。


「それで、どんな感じですか?闇のドラゴンのことわかりました?」



「おお、そうだった。こちらをみておくれ」


テーブルの画面にホログラムが映し出された。


「もうこの5日で近隣の国々で大人子供合わせて40人もの被害者が出てきておる。」


「ひどい・・・。」


ニノがつぶやいた。


「ダーククロイツとは何者なのですか?」


「ダーククロイツはかなり昔から存在する悪党で、この世界のどの国にも属していないはぐれ者だ。そもそも闇属性の者はこの世界にはあやつ1人だけしか存在しなかったのだ。昔から盗みを働いたり、罪もない者たちをだましたり、この世界の民達に危害を加えていたが、逃げ足が早いのとまだ力が未熟だったので、野放しになっていた。しかしやつは野放しになっている間に着々と力をつけていき、くわしい方法はわからないが、とうとう闇属性の仲間を自分で作り出すようになったのだ。」


「闇属性がダーククロイツ以外存在しなかったって・・・僕が最初に封印したドラゴンは闇属性でしたよね。」


「そうなんだ。あの母ドラゴンは食べる鉱石によって変化していくドラゴン、ヴェルヴァンデルだったのだ。元々闇属性ではなく、ダーククロイツによって後天的に闇属性にされたんじゃと思われる。げんに子ドラゴンたちは皆銀色の美しいうろこで闇属性のドラゴンではなかった。・・・話はまだ続く。ある時ダーククロイツは闇のドラゴンを使って盗みをした後に、逃亡の為に爆薬で我が国の国境にある大切な橋を爆破したのだ。もう野放しにはできないと、我が国の屈強な兵士達に捜索を命じ、攻防の果てに奴を逮捕し、奴はこの国の北にある地下刑務所に収監された。しかし、奴はその後しばらくして脱獄し、そこから長い間消息不明になっていたのだ。」


「だから皆、ダーククロイツはもう死んでしまったのかと思っていたんだよ。でも最近になって闇のドラゴンが現れたので不審に思っていたんですよね。」

ニノが付け加えた。



ふいにどこからから兵士たちの騒いでるような音が聞こえてきた。


「なんだ。城の方が騒がしいな。」


フォトン博士がつぶやきジュンはなんとなく白のある方角の窓を見た。そして驚いて目を見張った。とてつもなく大きな真っ黒なドラゴン達が上空からこの研究所に突進してきていたのだ。


「あぶない!みんな伏せて!」


ジュンは思わず叫んだ。ドラゴンは建物の外にある透明のバリアを突破できないようで、叫び声を上げながら引っ掻いたり体当たりを続けていた。


「あ、あれを見て!」


ニノが鋭い声で叫び指した。後から現れたドラゴンの背には一体のアンドロイドが乗っていた。


「ダーククロイツ!」


フォトン博士が鋭い声で叫んだ。ダーククロイツは銀色の顔に片目だけ緑色のレンズのはまったゴーグルをつけていて、ボディは黒で首や関節は紫のコードがのぞいている。背中には深緑のマントが風にたなびいていた。

彼はこちらを一瞥すると、手に持っている光線銃でバリアを撃った。するとあれだけ強固だったバリアが破れてしまったのだ。バリアを突破したドラゴンは研究室の屋根を一撃で破壊した。そして5つの鉱石がはまっているマテリアライザーの上部を手でもぎ取るとあっという間に飛び去っていってしまった。


「国王!ご無事ですか!!」


大臣と兵士達が大勢研究室に走ってきた。

ガラスやさまざまな機器が散乱する様を見て、兵士たちは慌てて国王を助け起こしにきた。


「ジュンくん、ニノ、トトや、大丈夫かい!?」


「大丈夫です。」


ジュンは幸いケガもしていなかったが、あまりの突然の事に呆然としていた。

ニノがジュンのそばに飛んできた。


「ジュン、大丈夫?」


「大丈夫だけど、大宝鉱石が・・・」


「うーむ、これは非常にまずい事態になったぞ!とりあえず、破壊されていない第二研究室に移動しよう。」





第二研究室に行くと、博士は今までに見たことがないほど動揺しているらしく、腕組みして歩き回っていた。


「さっきの事態により、今はっきりしていることは、1.国宝の鉱石を全て奪われた。 2.マテリアライザーも破壊され、修理の時間が必要。そして3.奪還をしたいが、鉱石がないとツクロボも使えないということだ!」


「博士!落ち着いてください!」


「うむ、すまないね。しかしこれはかなり絶望的な状況なのだ。」


「マテリアライザーの修理はできるんですか?」


「もちろんできる。しかし3日はかかるだろう。そして、あれを動かすには陽光石、または陽光石より強い力の鉱石が必要だ。そんなものがこの世にあるのか・・・。」


しばらく考えた後にニノが言った。


「博士、聖貴石はどうでしょう!?」


「む、そうか。いやしかし、あの石は意志があり、使う相手を選ぶ。そしておいそれとはあの場所から動かせないはずだ。」


「大宝鉱石達の他に、そんな強い力の石があるのですか?」


「うん、あるんだよ!この国の南にある光の塔に安置されているんだ。聖貴石と言ってこの世界を作った神さまの心臓だった聖なる鉱石という言い伝えなんだよ。」


「これ、ニノ、聖貴石を使うなぞ、夢のまた夢だろう。」


博士はガックリとうなだれた様子で言った。


「あの・・・、僕、よくわかってないんですけど、今の時点でその方法しかないなら試してみるべきだと思うんです。もしよければ、僕がその塔に行って聖貴石を借りられないか神様にお願いしてみます。」


「ジュン、聖貴石には心があって、使う人を選ぶんだって。神様の像にはまりこんでいて、そこから鉱石を取り外せたロボットは今まで1人しかいないんだよ。伝説によるとフォトン国王の遠いご先祖の王様だけなんだって。」


「そうなんだ・・・。そんなに難しいんだね。」


皆黙り込んだ。

博士はしばらく腕組みして考えてから、おもむろに言った。


「うん、そうだな・・・。ジュンくんのいう通りだ。どう考えても今はその方法しか思い浮かばない。普通のロボットは無理だが、人間ならばあの塔に入ることもできるだろう。ならばダメ元で試してみようじゃないか。」


「博士!」


ニノが希望を得たように明るい声で言った。


「しかし、ジュンくん。何度も言っているが、聖貴石は聖なる石だ。清らかな心の持ち主が最適な時に正しく使う事が必要とされており、その条件に合ったものにしか使うことを許さない意思を持った鉱石なのだ。私も若い頃にこの光の王国のピンチが訪れた時に外そうと試みたが、まだその時ではなかったのか外すことが出来なかった。だからもし外せなくても、ガッカリしないでおくれ。そして、もし外せたとしたら、ミネア界に本当の危機が迫っているということだ。」


ジュンは真剣な顔をしてうなずいた。


「ではすぐ出発しておくれ!ルミナスフィアで行けば遺跡にすぐ着くだろう。私はその間にマテリアライザーを修理しておくよ。」



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