第9話 1匹目の子ドラゴン
ジュンは風呂から上がると急いで自分の部屋に戻った。湯船に浸かっているうちに今度はニノの事が気になってきたのだ。
部屋に入って電気をつけると、ニノはまだキーホルダーのままリュックにくっついていた。
ジュンは小声で声をかけた
「ニノ、大丈夫?」。
するキーホルダーはパッと発光し、カシャンカシャンと音がしてニノの姿になり、ジュンの横に座った。
「うん、大丈夫だよ。ちょっと退屈だったけどね。うわぁ、これがジュンの部屋かぁ。いい部屋だね。」
ニノは部屋の入り口横にある棚のところまで飛んで行った。棚にはロボットや飛行機、ロケットの模型が並んでいる。
「前からロボットが好きだったんだね。だから描くのが上手なんだね。」
「うん、実は僕、将来ロボットを作る人になりたいんだ。お父さんもロボットを動かすプログラミングを作る仕事をしているんだよ。」
「そうなんだ。じゃあジュンが僕らの世界に飛ばされたのも、ただの偶然じゃなかったのかもしれないね。」
ニノが返事をしたとたん、ピピピピピ・ピピピピピとニノの体から音がした。
「あ、博士からだ」
と言ってニノは浮いたまま目から光を出した。
そしてそれは空中にスクリーンとなって映し出され、そこにフォトン博士が写った。
「あー、私だよ。ジュンくん、見えるかね?」
「見えます!」
「無事に家に帰れたようじゃな。良かった良かった。ご両親は心配してなかったかね?」
「大丈夫です。僕がそちらの世界に行っていたこと、気づいていないみたいです。」
「そうか、余計な心配をさせても申し訳ないし、それは良かったね。」
「せっかく家に帰ってくつろいでいるところ誠に申し訳ないのだが、子ドラゴンの捜査に進展があったので、魔法の鉱石の奪還作戦を一緒に考えてほしくてコンタクトをとったのだ。」
「ええっ、もう居場所がわかったのですか?」
ジュンは驚いた。覚悟はしていたが、あまり展開の速さに気持ちがついていかなかった。
「そちらの1時間がこちらの1日だからかれこれもう4日間たっているんだ。今は鉱石を感知するセンサーとカメラをつけたドローンを沢山こちらから飛ばし、地球全体を捜索している。それで、案外近くに逃げた子ドラゴンのうちの1匹が潜んでいることがわかったのだ。」
「どこですか?」
「うむ。これを見てくれ。捜索用ドローンの映像だ。」
パッと画面が切り替わりました。上空からの映像が写っている。
「あ!富士山だ!日本にいるんですね。」
見慣れた山の形を見て、ジュンは思わず大きな声で言った。
「そうなんだ。この大きな山のふもとにある木が密生している場所に、鉱石探知機が反応を示したんだよ。」
「これは富士の樹海ですね。」
ドローンがそのまま樹海の上を飛んでいくと、前方に不自然に木がこんもりと盛り上がっている場所が出てきた。
ドローンの視界のセンサーが鉱石のエネルギーを感知し、木が盛り上がっている中心部分をロックオンしてそこに向かってためらいなく飛行していき、葉っぱや枝をすり抜けて内部に入った。すると中は空洞になっておりその中心部分に茶色のうろこの大きなドラゴンが尻尾を体に巻きつけて休んでいた。長い首は背中に預け、金色の目は下から上がったまぶたが半分閉じている。ドローンのカメラはぐるりと旋回しながらドラゴンの全身を捉えましたが、その途端、カメラの映像がガクッと傾き、土と岩しか映さなくなったかと思うと真っ暗になりブツッと映像が途切れた。そしてスクリーンはフォトン博士の姿に切り替わった。
「映像はここまでだ。ドローンに気付いた子ドラゴンが大量の土砂を吐いてドローンを押し潰したようだ。」
「・・・思ったよりずっと大きいですね。」ニノが言った。
「前に見かけた時は小型犬くらいだったのに。」
ジュンも驚いてつぶやきました。
「力の強い鉱石を持っていると、子ドラゴンの成長も早いんだよ。こちらの世界から逃げ出した時には人間で言えば5歳くらいだったのが、このドラゴンは力の強い鉱石を得たことで12歳くらいには成長しておる。」
「このドラゴンは何属性なのですか?」
「うむ、土属性のようだ。この世界には10種類程のドラゴンが存在するが、その中でもこのヴェルヴァンデルというドラゴンは、生まれてからは5年程は特別な属性がないんだよ。5歳くらいまでは美しい銀色の鱗をしていて、その後摂取した鉱石の属性や力によって身体や能力が変化していくのだ。」
「そうだったのですか。」
「大地の鉱石、こちらの世界では土豪石という名前なのだが、強い土属性の鉱石を持つ者は大地に関するものを操ることができる。この子ドラゴンは地球に来てから大地の力で樹海の一部の木を急成長させ、そこに巣穴を作ったようじゃ。子供のドラゴンは警戒心が強く、ある程度大きくなるまで、巣に潜んで成長を待つのだ。もっと成長し、力が強くなると気まぐれに大地震や地割れを起こしたり、草木を急激に増殖させて周辺の人々に危害を加えるかもしれん。」
「こんな大きなドラゴン、どうやったら捕まえられるのでしょう。」
「前にジュンくんに母ドラゴンを封印してもらった時、鉱石の力を抑えて弱体化させる装置を使っただろう。あれを使おうと思うんだ。」
「僕、今度はちゃんと装置を置けるかな。」
ジュンの顔が曇った。前回5つある装置を4つしか置けず不完全な封印にしてしまったので、また失敗してしまうのではないかと不安になったのだ。
「すまないね。ドラゴンは見つけ次第、すぐに捕獲して鉱石を取り上げないとさらに成長してしまうかもしれないので、今回は前のと同じ装置を使ってチャレンジしてほしいんだ。封印装置をさらに使いやすく改良しているのだが、まだ未完成なんだ。」
ジュンは思いついて質問した。
「ロボットを何体か出したらダメですか?」
「それは良いアイデアだが・・・たしかに練習の時は何体もクリエイトしたが、それはロボットをあまり動かさないから出来たのだ。捕獲作戦の時に複数のロボットを思うままに操ろうとすると、倍の鉱石パワーと複数のロボットを操る技術も必要になってくる。だから今のところは難しい。将来的には陽光石の力を増幅させて複数出せるようにしようと思っているんだが。本当にすまないね・・・。」
ジュンは意気消沈して肩を落とした。ニノが励ました。
「大丈夫だよ!ジュン。今回はツクロボがあるし、ドラゴンはまだ子供だしね。」。
「う、うん。ありがとうね、ニノ。」
ジュンは少し気を取り直した。
「いつ出発すればいいですか?」
明日は月曜日でお昼まで学校がある。学校は休めないよなと考えながらジュンは聞いた。
「君もそちらの生活があるだろうからね。明日学校は何時に終わるのかね?」
「12時10分に終わります。」
「そうか。では学校から帰ってきて、昼食を食べたら出発だ!」
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