第7話 ロボットクリエイト、成功!
次の朝、2日目の特訓が始まった。
「相手の弱点を考えてそれに相対するロボットをイメージするんだよ。私が敵のドラゴンの情報を言うから、それに対するロボットを考えてくれ。」
「わかりました!」
ジュンは博士に言われた事に対応した3体を創り、ずらっと並べてみた。
「・・・なんだかあんまり強そうじゃないね。」
しばらく眺めていたニノがポツリと言った。
「やっぱり!?」
確かにロボットを創ることはできるが、出来上がったロボットたちはみんなどことなく迫力に欠ける。実際操作して、動かしたり、火炎放射などさせてみるのだが、どうしてなのか威力も弱い。
「一生懸命描いてるんだけどなぁ・・・。」
ジュンはその場にしゃがみこみ、ロボットを見上げた。
「うーん、グローブとゴーグルの機能は完璧なはずだ。しかし何かが足りない・・・。」
博士は腕組みしてしばらく考え込んでいた。
「わかった!わかったぞ!」
「博士、わかったんですか?いったい何が足りないんでしょうか?」
ジュンが話しかけているのにフォトン博士は慌ただしく研究所の中に入っていってしまった。
「行っちゃったね。」
ニノがつぶやいて2人は顔を見合わせた。
それから5分ほどたっただろうか。ニノとジュンはロボットを見上げて、ロボットをもっと強く創るにはどうしたらいいか、自分達なりに考えてああでもない、こうでもないと話していた。そしてロボットの脚の形について話していて、ロボットの足元を見つめていると背後から巨大な影がぬっと出てきた。
「!?」
ジュンとニノが見上げると、上空に大きな怪物が飛んでいた!
「うわぁ!ムビアサだ!」
「なにあれ!」
「ドラゴンだよ!鉱石取られちゃう!」
ニノは胸を押さえて思わずジュンの後ろに隠れた。
「何か弱点はないの?教えてよ!」
ムビアサは緑色の鱗で赤とピンクのグラデーションの翼を持つドラゴンだった。二人と目が合うとムビアサは上空で方向転換してこちらに飛びながら突進してきた。
「うわぁ!」
二人とも叫んで頭を庇いながら身を低くした。
ムビアサは二人の向こう側にいたトトを前足で掴み、上空で羽ばたいている。
「トト!」
「ムビアサの弱点は尻尾の付け根だよ!あそこに神経が集中してるんだ!」
ニノが叫んだ。
「わかった!」ジュンは素早く空中に絵を描き、右手を前に出して叫んだ。
「コンストラクト!」
するとジュンの手のひらから青白い光が吹き出し、新たなロボットが出てきた。ロボットは鎧を身につけた青いボディのアンドロイドで、手には大きな銃をかかえ、頭部には射撃用ゴーグルがついていた。ジュンは即座にロボットに命令した。
「あの尻尾の付け根をねらって!」ロボットの目の青い光が強くなった。
彼は膝をつきドラゴンに照準を合わすと素早く引き金を引いた。ロケット弾が発射され、逃げようとしたムビアサの弱点を見事に撃ち抜いた。
ムビアサはギャァ!と叫び声を上げるとトトを話してあっという間に遠くに飛び去った。
トトはそのまま落下してしまったが、ニノがすかさず魔法の水の網で受け止めた。
「あぶなかったよ〜!ジュン、ムビアサを倒してくれてありがとう!」
「トトが無事でよかったよ!」
ジュンは足元に無邪気に飛びついてきたトトの背中を撫でたが、その手が震えてることに気づいた。
「ああ、本当によかった!どうなることかと思ったよ。」
心底ホッとして、大きな吐息まじりにつぶやいた。
みんなで無事を喜び合っていると、フォトン博士がいそいそと研究所から出てきた。
「博士〜!今大変だったんですよ。ムビアサがいたんです。トトをさらおうとしたけれど、ジュンくんが追い払ってくれたんです。射撃の上手いロボットを作ってくれたんですよ!」
「おお!トトは大丈夫か?良かった!」
「ワン!」
トトは銀色の尻尾を激しくふりながら博士の元に駆け寄りった。
「おお!これは良いロボットができたじゃないか!」
「博士、なにしてたんですか?本当にみんな死んじゃうかと思いました。」
ジュンはのんきに喜んでいる博士の様子にムッとして言った。
「申し訳なかったね。そのグローブに足りない回路を作っていたんだよ。」
フォトン博士は小さな光る回路をジュン右手のグローブの手の甲に置きました。すると不思議なことにあっという間に、光る小さな回路はグローブの中に吸い込まれていった。
「これは君のひらめきの脳波の電気信号を増幅させる回路だ。君の気持ちとひらめきのパワーがロボット構築に反映され、更にパワーに満ちた強いロボットを作る助けになるだろう。」
ジュンとニノはグローブをまじまじと覗き込んだ。指を動かすたびに神経伝達物質の回路がキラキラと光っている。本当にすごいツールだと考えていたらグローブの名前が思い浮かんできた。
「博士、このグローブの名前は『ツクロボグローブ』はどうですか?」
「ほほう。わかりやすくていいね!ではこれからロボットをクリエイトすること自体も『ツクロボ』と呼ぶことにしよう。」
フォトン博士はもう一度、射撃用ロボットに近づいていろんな角度から見たり触ったりして、真剣に見ていた。
「しかし、この新しいロボットは本当によく出来ているね。これはさっき、練習ではなく本物のドラゴンに遭遇してリアルな危機に瀕した時のジュンくんの勢いのある閃きのパワーが発現されたのだろう。」
「確かに、練習の時のロボットに比べて形も武器も威力のあるものができた気がするねぇ」
ニノも射撃用ロボットを見上げながら言った。
「強いロボットを作るには、ひらめきを生み出す集中力と瞬発力が必要ということじゃな。」
「瞬発力と集中力…。」
ジュンは真剣な顔で繰り返した。
「さて、ロボットを作り出す練習はこれくらいでいいと思うんだ。もっと練習してもらいたいのはやまやまなのが、オルガ界に逃げ出した子ドラゴン達のことも気になるのでね。」
「もう練習終わりですか!?大丈夫なんでしょうか。」
ニノが驚いて言った。
「今見たように、ツクロボは瞬発的な真剣勝負の時にしか威力のあるものが創れないようだ。ロボットクリエイトを練習し過ぎれば慣れすぎてしまい、集中力に欠けるようになるだろう。」
「そういわれればそうかもしれない・・・。」
ジュン自身も博士の言っていることには不思議に納得できて、思い当たるフシがあった。
「しかし、このロボットはこの世界に元々いるロボットと同じで鉱石で動いているのではないのですか?ドラゴンに狙われたりしないのですか?」
「このロボットは陽光石の力で動いてはいるが、我々とは違い、心臓の代わりとも言える鉱石は胸に宿っていない。いわゆる君の世界にある電力で動くロボットと同じようなものだ。発する鉱石パワーは微弱だから、ドラゴン達に察知される確率も私達よりもずっと低い。きっと、鉱石を取り戻す時に君の助けになるじゃろう。」
「ありがとうございます。」ジュンはとても心強く思った。
「ロボットが必要なくなったら、手のひらを向けて収納したいと念じれば、グローブに内蔵されている異次元転移装置により、こちらにあるロボットの格納空間に収納される。また呼び出したくなったら呼び出すこともできる。」
「すごいですね!」
ジュンは心底感心して言った。
「先にも話したが、異次元転移装置ができたので、明日ジュンくんをオルガ界に帰す準備が整いそうだ。ジュンくんが行ってしまうのは寂しいことだが、子ドラゴン達の行方も気になるからね。」
ジュンもニノもうなずいた。
ジュンはやっと自分の家に帰れるというホッとした気持ちと、これから1人でドラゴンの子供から鉱石を取り戻さなければいけないというプレッシャーで、複雑な気持ちだった。不安そうにしているのがわかったのか、博士はさらに続けて言った。
「オルガ界にはニノをついていかせようと思っている。陽光石を取り戻すのも一緒に行ったし、少しでも心強いだろう。」
「博士、少しでもは余計ですよ!」
ニノは博士の言葉にすこしムッとしたが、その後ジュンの方を向いて嬉しそうに言った。
「僕もついて行きたいと思っていたんだ!ジュン、僕けっこう役に立つよ!」
「ニノがついてきてくれるなんて、すごく心強いよ!」
ジュンはパッと明るい表情になって言った。その様子を見て博士はうんうんとうなずいた。
「明日、異次元転移装置を使って君たちをオルガ界に送ろうと思っている。地球に戻ったら、子ドラゴン達の動向次第ですぐに動かなければならなくなるかもしれないから、今夜はゆっくり休むんだよ。」
その晩、ベッドの中でジュンはなかなか寝付くことが出来なかった。
博士を信じていないわけではないけれど、本当に地球に、父や母の元に戻れるのだろうか、そしてドラゴン達から鉱石を取り返すことができるのだろうか・・・。考えれば考えるほど先が見えない気がして不安が募っていく。ジュンは寝返りを打ってその考えを打ち消すために深呼吸をするのを何度も繰り返し、最後は考えることに疲れ果てて深い眠りに落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます